見出し画像

プロレス英文解釈教室:二段式ドラゴン和訳スープレックス

さて、2021年の6月も終わりそう。ワクチン接種がどんどん進んでいるみたいですね。実際に発表されている数字よりたくさんの人が接種できているなんて噂も聞こえてきます。僕も早く打ちたい。北海道ちょっと遅れてるんですけどね。

来月、札幌に新日本プロレスがやってきます。すごく見に行きたいけど、ちょっと都合が合わないんで僕は行けないんですけど、でも札幌に来てくれるのが嬉しいです。そして女子プロレス団体スターダムも来札します。数年ぶりですよね、多分。こっちもものすごく行きたいんですけど、平日だし夏期講習始まってるしで行けないんですよねー。

ということで、今日はそのスターダムの選手についての英文を読んでみましょう。

女子プロレス団体、スターダム

スターダムは、新日本プロレス同様、ブシロード社が所有している団体です。今年の1月4日の新日の東京ドーム大会の第0試合に、スターダムの選手が四人出場していますね。

僕がスターダムを見るようになったのは、2019年ですから最近です。この年の4月6日、新日本プロレスが、アメリカのROHという団体と合同でニューヨークのマディソンスクウェアガーデン(MSG)で興行を行ったのですが、そのうちの1試合にスターダムのアイコンこと岩谷麻優選手が出場していました。

その試合にやられちゃいましたね、本当に良い試合だった。対戦相手のケリー・クレイン選手のゴツさと、当時は今ほど筋肉質ではなかった岩谷選手の細さが対照的だったのですが、その細い岩谷選手がバンバンデカイ技をくらっていくわけです。後々、岩谷選手のニックネームが「ゾンビ」であることを知って納得するものの、その時は心の底からびっくりしました。そしてあの、コーナーポストから場外への美しいプランチャー。会場のお客さんも絶叫してましたね。あの日のMSGの新日の試合はどれもすごいんですけど、この岩谷選手vsクレイン選手の試合が一番印象に残っています。(MSGを一人で満員にした男ことジェイ・ホワイト選手にはもうしわけないですが。)

岩谷選手の自伝はおすすめです

それと、昨年出版された岩谷選手の自伝『引きこもりでポンコツだった私が女子プロレスのアイコンになるまで』は本当に面白かった。レスラーの本はちょいちょい読むんですけど、岩谷選手の本はどストレートに面白かったです。中学生の課題図書にしてもいいレベル。今でこそスターダムのアイコンであり、同時に女子プロレスを代表する選手でもあり、カリスマ性さえ感じさせる岩谷選手ですが、一直線にここまで上り詰めたわけではありません。その紆余曲折っぷりは、これぞプロレスラー!と言いたくなるものです。若者の抱える不安と爽やかさ、ギリギリのところで踏ん張る根性、そして仲間の支え、もうね、少年ジャンプかよ。さらに引退した花月選手との対談はじーんとさせるものがありました。トップ選手同士の緊張感ある信頼関係を垣間見せてくれています。

で、その試合以降、「ワールドオブスターダム」という配信サービスに入って、試合を追っかけ続けています。本当に話題に事欠かない団体で、新日本プロレスと同様に色々な楽しみ方を提供しているところが、なんというか、頼もしいな、と思います。

ということで今日のプロレス英文読解教室は、英語版Wikipediaの岩谷麻優選手のページから英文を見つけてきた文を使います。今回も、直訳でサクッと読んでしまいましょう。

今日の英文

Despite her popularity, Iwatani was the last of the class one trainees to obtain a win in a professional wrestling ring.
Mayu Iwatani(Wikipedia)

同じスターダム一期生の星輝ありさ選手と岩谷選手が組んだAMAというユニットが大人気だった、という文脈です。短く簡単な文です。その上で絶対に疎かにしてはいけないことについて改めて考えてみたいと思います。

まず文頭の3語、Despite her popularityから。「despiteは前置詞だ! 接続詞じゃない!」と英語を教えている人なら何百回も言っているでしょうね。前置詞の後ろは名詞(目的語)です。ということで、「彼女の人気にもかかわらず」と訳せますね。

続いて、Iwatani was the last of the class one traineesです。the class one traineesは「第一期の練習生」ですね。こういう言い方はたくさんの英文に触れているうちにわかってくるものでしょう。あまり理屈で考えない方がいいと思います。訳は「岩谷は第一期の練習生の一番最後だった」となりますね。

では何をするのが一番最後だったのか。to obtain a win、つまり「勝利を獲得する」のが一番最後だったわけです。どこで? in a professional wrestling ring、「プロレスのリングにおいて」となります。まとめると「彼女の人気にもかかわらず、岩谷はプロレスのリングにおいて勝利を獲得する一番最後の一期生だった。」といったところになるでしょう。

英語の基本の基本はVOの関係

今回すごく簡単な文なのですが、とても大事な点を強調したかったのでこの文を選んでいます。なんてことない点ですが絶対にわすれちゃいけないところです。

それは、to obtain a winが不定詞の形容詞用法である、ということではなくて、obtainとa winが動詞とその目的語の関係になっている、という点です。

日々受験生と読解をしているとよく出くわす光景なのですが、ある程度単語力がついてくると、わからない単語が減ってきて、単語の意味からなんとなく文の意味を作ってしまう生徒さんが珍しくないのです。しかしその読み方では正確な読解はできないですし、何よりめちゃくちゃ疲れます。「獲得する」「勝利」「中で」「プロの」「レスリング」「リング」と頭の中で思い浮かべて、そこから意味が通るように言葉を足したり引いたり順番を入れ替えたりしなくてはなりません。時間制限のある受験の本番ではとても使えたものではありません。

英語は語順で意味を作っていくので、語と語の並びがとても重要です。なので、英単語を日本語に置き換える段階で、英語の語順をある程度反映させた訳にしていくことが読解の秘訣です。

to obtain a winの場合、不定詞の用法を考える前に、obtainとa winがVO、つまり動詞と目的語の並びになっていることを意識しましょう。だから、a winを単に「勝利、一勝」と訳すのではなく、「勝利を、一勝を」と訳すのです。この「を」は日本語で直接目的語を表す格助詞です。

目的語とはとても大雑把に言うと「動詞の動作をされる存在」です。実際には様々な目的語があるのですが、まずは「される存在」くらいでいいと思います。そして主語は、これも様々な主語があるけれども、とりあえず「動詞の動作をする存在」くらいでよいと思います。

当たり前のことを毎回やる

語と語の並びを意識するなんて当たり前のことと思うかもしれませんが、その当たり前を常に行うことが難しいのです。僕たちは日本語では当たり前のように目的語を使っています。「昨日カレー食べたよ。」と言ったら、目的語は「カレー」です。「を」が付いていないにもかかわらず、日本語の母語話者で「カレーが誰かを食べたのか!?」と疑う人はいないでしょう。でも、日本語の「カレー」がなんなのか知らない人であれば、「カレー」が主語で「食べた」が動詞だ、と判断してしまうかもしれません。日本語話者は「カレー」が食べ物であることを絶対に知っていますから、「カレー」が主語ではなく目的語だと瞬時にわかるわけです。だから「を」を省いても大丈夫なわけですね。反対に「昨日とーちゃん食べたよ。」だったら、「とーちゃん」は主語ですね。母語であれば全く意識することなく主語か目的語かの判断を行っているのです。

外国語を学ぶときは、単語の意味がわからないことが多いので、その語が持つ機能(主語なのか目的語なのか)の推測が難しくなります。しかし幸い、英語は語順で語の機能を示してくれます。だから動詞や動詞的な要素(不定詞や動名分詞)が来たら必ず、目的語が来る!と思うようにしましょう。そして、先程のa winは「勝利」と訳すのではなく「勝利を」と訳しましょう。読解をするときは、日本語が多少不自然になっても目的語に「を」をつけていくべきだと思います(少なくとも最初のうちは)。

基本があれば基本じゃないものもある

もちろん、動詞の後ろに目的語が来ないこともあります。その時はその時です。動詞を自動詞として解釈するってことですね。自動詞と他動詞を横並びに考えるのではなく、他動詞こそが基本の動詞なんだ、と考えておくとよいでしょう。動詞の後には目的語が来るのが基本。来ない方が特殊。僕が毎度毎度5文型の悪口を言うのは、第一文型、第二文型というナンバリングになんの哲学もないからです。なぜその順番にしているのかまったく分からない。第一文型のSVは自動詞の文のことです。特殊な文が一番目に来てしまっているのは誤解しか生みません。第三文型のSVOこそが基本の形なのですから、これを第一文型とすべきでしょう。というか、一から五まで並べると、なんとなく三角形っぽく見えるからそうしたんじゃないの? と疑っています。

スクリーンショット 2021-06-28 16.34.08

だとしたら、かなりいい加減な話ですよね。まあそんなことないと思いますけど。

いずれにしても、何が主語で何が目的語なのかわかるように直訳することで、読解の精度もスピードも上がります。ただ、これは練習が必要なのです。普段意識しないことを意識し続けるのですから、いきなりできたりしないのです。毎日英文を読んで文法的な読解を少しづつ身につけていけると良いですね。

裏切りと正規軍

それにしてもスターダムの正規軍、スターズは災厄続きですねえ。裏切りは正規軍の宿命でもありますが、誰か新しい選手が参戦する予兆でもあるかもしれません。現にコグマ選手が復活しましたしね。次は誰だろう。こういう予想がプロレスの楽しみの一つですね。

ではまた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?