ずっと大好きな、赤の他人へ

わたしの頭の中には常にたくさんの言葉たちがぐるぐると円を描いて回っている。
それでも文章を書くのは難しく、いつも書きたいことがなかなか浮かばない。

なので好きなものについて書こう。
自分の好きなものについてなら、スラスラと言葉が飛び出してきそうだ。

わたしの好きなもの、一番はじめに飛び出してくるのは恋人のことだ。
(好きなもの、と言うのは違和感があるので、好きという言葉から連想できたものにする。)

7年一緒に過ごしているが、好きの気持ちは年々増しているような気がする。そしてそれは向こうも同じなのではないかと感じている。

逆に言えば、始まりの時はあまり好きではなかったのかもしれない。大学でごくありふれた出会いを経て、3回目のデートで告白された。ドラマや漫画の設定通りのような始まり方だった。

告白された瞬間は、たしかにドキドキして、付き合うこともその場で了承した。高鳴る胸を抑えながら、帰りの電車に乗った。反対方向だったので帰りは一人になったが、一人になった途端あら不思議、さっきまでは夢の世界にでも行っていたのかしらと思わんばかりの冷静っぷり。

さっき告白されたな、そしてわたしはオッケーした。てことは付き合うってことか。えーと記念日は今日だから…。なるほどなるほど。あ、何かラインした方がいいのかな。今日のお礼は言った方がいいか…。

勇気を振り絞って伝えてくれたであろう彼には大変失礼だが、付き合った当初は恋人になったという自覚が全くなく、好きという気持ちも薄っすら感じていたかどうかくらいだ。

そんな状態からスタートしていても、やはり年月とは凄いもので、積み重ねれば重ねるほど、気持ちは分厚く暖かく、そして確かなものになっていった。

何度も訪れた海辺の観光地。
初めて乗せてもらった助手席。
暗いからと繋がれた手。
寒い空の下で触れ合った唇。
背中に手を回した時に感じる体温。
眠気の中で触れる少し硬い髪の毛。

重ねてきた思い出たちが、今の好きを作っていると言っても過言ではない。
わたしはもちろん彼自身が好きだが、彼とともに過ごしてきたたくさんの思い出にも、彼と同様に愛しさを感じている。

全くの他人だった2人が、近づいて寄り添って触れ合って、無くてはならない他人になる。
血縁関係はないが、家族と同じくらい大切で、安心できて、絶対に無くしたくない、他人。

恋人とは不思議な関係性だ。

ここまで大切に思う人を他人のままには出来ないから、みんな結婚するのだろう。

わたしたちが大切な他人同士をやめるのは、一体いつのことだろうか。
今はまだ分からないけど、きっとやってくるその日まで、居心地の良い他人でいよう。

#ゆるnote #恋愛 #日記 #恋人


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