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かなた
2021年11月19日 16:07
海が見える。山も見える。果てしなく続くこの景色が、あと数日のうちに消え去ってしまうなんて、誰が想像しただろう。「やっぱりここにいる」聞き慣れた声に振り向くと、微笑む女の姿があった。俺がここにいると、いつも決まって現れる。「ここばっかりだね、最近」「落ち着くんだ、ここが」「もう今日が終わっちゃうよ」「いいよ、また明日も来るから」「そういう意味じゃなくて…」「分かっ
2019年11月23日 17:18
「なんなのよ急に」そう言って僕の顔を睨みつける彼女を前に、何も言葉が出なかった。日曜日、昼下がりの午後、穏やかなクラシック音楽が流れるカフェ店内で、僕と彼女は向き合っている。窓の外は、少し寒くなってきたこの頃に合わせて、ストールを巻いてみたり分厚めのコートを着てみたり、冬支度を始めた人々がわらわらと行き交っている。みんな楽しそうだな、と目の前の彼女から目を逸らしながら思う。「どういう
2019年6月25日 02:05
「今日はどこ行く?」スタスタと歩く彼の後ろ姿に声をかけた。が、何も返事がない。今日は少し不機嫌みたいだ。今日は、というか彼はここ最近ずっと不機嫌みたいに見える。私のことを徹底的に無視するし、隣を歩こうとしてもどんどん先に行ってしまう。悲しくない、といったらウソになるが、彼が不機嫌なのは私にも原因があることを知っているので、何も言うまい。子供たちのにぎやかな声で満ちている公園を横目に、日