千曲市「ドライブインふるさと」こめかみの定食
店名 ドライブインふるさと
場所 長野県千曲市寂蒔955-1
電話026-272-0087
ジャンル 食堂
バリアフリー ◯
「山藤章二のブラック・アングル25年 全体重」
という本を読んでいる。かつて週刊朝日に連載されていた「ブラック・アングル」のベスト100といった内容だから眺めている、といった方が正解か。それにしても現代の戯作者 山藤章二の真骨頂といった作がならんでいる。当時の世相を扱ったものが多いから、今観ると??というものもないわけではないが、武者小路実篤風に描かれた田中角栄、小佐野賢治、児玉誉士夫の「仲よきことは美しき哉」や、岸田劉生「麗子像」に模して描かれた大平首相なんて大名作だと思う。
山藤章二といえばもう一つの代表作が夕刊フジの百回連載シリーズだ。70年代前半から80年代末にかけて15人の作家、エッセイストと繰り広げられた競作シリーズだ。もっとも有名なのが筒井康隆「狂気の沙汰も金次第」であろう。ほぼ同世代、ほぼ同時期にブレイクした2人のノリノリ丁々発止が面白くてならない。他にも山口瞳や井上ひさし、つかこうへいなどがいた。影山民夫「食わせろ!!」なんて笑い転げ回ったものだ。どこかの出版社で全集的に通しで出してもらえないものか。
吉行淳之介もそのメンバーだった。
「闇の中の祝祭」の凄まじい重量感に辟易として以降近より難く、他にはこの「贋食物誌」以外読んでいないのから余計と印象に残っている。
山藤の吉行は神経質にイライラしていて、こめかみにいつも「 # 」が描かれている。ある回で吉行が「おれはそんなに怒らない」と書くと山藤が木口小平を模して「ヤマフジハ死ンデモヨシユキノコメカミに#ヲ描キツヅケマシタ」とやり返す。こういうところが面白くてたまらない。そして、そんな事を思い出していると、なぜかこめかみとで会うのだから、気絶するほど悩ましい。
「ドライブインふるさと」
18号線千曲市 打沢から戸倉方面へ少し行った左側にある店だ。ブルーカラー専門店然とした大盛り・デカ盛りで有名だ。以前、ソース焼きそばの大盛りを注文したらとんでもない目に合ったのを記憶する。今回は目当てなく訪れたのだが、一点とてもそそられるものを発見した。それは
「豚こめかみ定食」810円
こめかみ、とは文字通り豚のこめかみ部位を指す。ホホ肉と合わせて『カシラ肉』と称されることもあるのだとか。顔の筋肉は大きな動きから細かな動きまで、常に動いている箇所なので筋肉が発達している。したがって脂肪量が少なく旨味が多く、締まったサクサクとした食感である。と、ものの本にはある。
そのこめかみ肉をたっぷりと、塩胡椒だけで炒めたじつにシンプルかつ贅沢な定食だ。そもそも蓋つきの丼メシからして凄みがあるではないか。熱い味噌汁と黄色いたくあん漬けという王道のコンビネーションの向こう側にこめかみの山。サクサクぷりぷりの歯ごたえが素晴らしい。
Kindleをなんとなく探っていたら「闇の中の祝祭」を見つけた。440円、気にする額でもないので購入。少し読み始めたのだが、以前のように文体はあまり気にならないが、やはり重量感たっぷり。名作にうかつに近寄ってはならない。
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