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先の見えない不安のなかでも、人は感謝し、喜び、生きていける



駐車場のおじさんの話



以前、株式会社アントレプレナーセンター、代表福島正伸氏の講演を聞いたことがあります。


それが、こちらの話です。


~駐車場のおじさんの話~


東京都内の駐車場のおじさんの話です。

ある駐車場の管理人は、六十を過ぎたくらいのおじさんでした。


「おはようございます! 今日も天気でいい一日ですね」

おじさんはいつも明るい笑顔。


なんだか、その人に会うと、憂鬱な一日も少し元気をもらえる、そんなおじさんでした。

毎日、年齢に似合わずシャキシャキと前向きに仕事をこなしていました。


ある日、駐車場についたら、外はひどい土砂降り。

困ったなあ、と車から降りられずにいると、おじさんが走ってきました。


「傘忘れたんじゃない?これ持っていきなよ」

「でもそれって、おじさんの傘でしょ?」

「私のことは気にしなくていいんですよ」


おじさんはいつもこんな調子で、お客さんのことばかり考えてくれる人でした。

駐車場は満車になることも多く、おじさんはいつも看板の前であやまっていました。


「満車です。申し訳ありません」

「やっと見つけたのに、困るんだよ!」


中には文句をいう人までいます

「本当に申し訳ありません」


おじさんはいつも車が見えなくなるまで、少し薄くなった白髪頭を下げ続けていました。

常に一生懸命な姿が非常に印象的でした。


ある日、いつもと同じように車を止めようとしたとき、おじさんの笑顔がないことに気づきました。


「実は今週いっぱいで、この仕事をやめることになったんです」

「え!?どうしてですか?」


「妻が肺を患っているんです。空気のきれいな田舎で二人でのんびりと暮らすことにしました。これまで本当にいろいろとお世話になりました」


そういっておじさんは、深々と頭を下げました。

「お世話になったのは、こっちのほうですよ」


何ともいえない寂しさをおぼえ、今日が最後というその日、おじさんへのちょっとした感謝の気持ちで、手みやげを持っていきました。


そして駐車場についたとき、信じられない光景を目にしたのです!

小さなプレハブの管理人室の窓からは、中がまったく見えません。


色とりどりの花束がつみ上げられていたからです。


ドアの横には1メートル以上の高さになるほど、おみやげがつみ重ねられています。

たくさんの花束とプレゼントに彩られて、管理人室はまるでおとぎの国の家のように見えます。


駐車場の中は、たくさんの人でごった返し、あちこちから声が聞こえてきます。


「おじさん、いつも傘を貸してくれてありがとう!」

「あのとき荷物を運んでくれて、とても助かりました!」

「おじさんに、あいさつの大切さを教えてもらいました!」


人ごみの中には、笑顔のおじさんがいました。

みんなが次々と、おじさんと写真を撮っています。


おじさんと握手をして、ハンカチで目を覆っている人もいます。

おじさんは一人ひとり目を合わせ、何度も何度もうなずいていました。


列の最後にならんで、おじさんと話す機会を待ちました。


「おじさんにはいつも感謝しています。毎朝とても気持ちよく仕事に取りかかることが出来ました、ありがとうございます!」


「いえいえ、私は何もしていませんよ。私にできることはあいさつをすることと、あやまることぐらいです。でも私はいつも、自分が今やっている仕事を楽しみたい、そう思っていただけなんです」


いかがでしょうか。

素敵ですね。


どんな仕事でも、自分の心がけ次第で、意味が大きく変わってくるものではないでしょうか。



あるレジ打ち女性の話


そしてもう一つ、素敵な話がこちら。


『涙の数だけ大きくなれる』(フォレスト出版)木下晴弘著書(株式会社アビリティトレーニング代表)にある、「レジ打ち女性の話」です。



~あるレジ打ち女性の話~


何をしても続かない、ある女性がいました。

仕事も続きません。


初めて勤めた会社も3ヶ月しないうちにやめてしまい、次に選んだ就職先も、やはり半年ほどでやめてしまいました。

その次に入った会社も同じ。


彼女は派遣社員に登録しますが、派遣先も次々変わっていきます。

彼女の履歴書には、いつしかやめた派遣先のリストが長々と追加されていました。


そのような中、スーパーでレジを打つ仕事の紹介が届きました。

しかし、今までと同じように、勤めて1週間もすると、彼女はレジ打ちに飽きてきました。


今までさんざん転々としてきながら我慢の続かない自分が、彼女自身も嫌いになっていました。

『田舎に帰ろうか』そう考えるようになりました。


田舎に戻るつもりで部屋を片付け始めます。

あれこれ段ボールに詰めていると、机の引き出しの奥から日記帳が出てきました。


小さい頃に書き綴った自分の日記でした。

そして日記をパラパラとめくっているうち、彼女は、『私はピアニストになりたい』と書かれているページを発見。


そう、彼女の小学校時代の夢です。

『そうだ。あの頃私は、ピアニストになりたくて練習を頑張っていたっけ』と、彼女はあの時を思い出しました。


彼女は夢を追い掛けていた自分を思い出し、日記を見つめたまま、本当に情けなくなりました。


『あんなに希望に燃えていた自分が今はどうだろうか。なんて情けないんだろう。そして、また今の仕事から逃げようとしている…』


彼女は用意していた辞表を破り、翌日もあの単調なレジ打ちの仕事をするために、スーパーへ出勤していきました。

『2~3日でもいいから』と頑張っていた彼女に、ふとある考えが浮かびます。


『私は昔、ピアノの練習中に何度も何度も弾き間違えたけど、繰り返しているうち、鍵盤を見ずに、楽譜を見るだけで弾けるようになった』


彼女は昔を思い出し、『そうだ、私は私流にレジ打ちを極めてみよう』と考えました。

そして数日間、レジ打ち技術に集中し、一心不乱に仕事にのめり込んでみました。


気持ちを新たに、前向きにレジ打ちした結果、技術は上達し、ものすごいスピードでレジが打てるようになったのです。


すると不思議なことに、それまでレジのボタンだけしか見えていなかったものが、今まで見もしなかったところへ目が行くようになりました。


最初に目に映ったのはお客さんの様子でした。

『あぁ、あのお客さん、昨日も来ていたな』『ちょうどこの時間になったら子ども連れで来るんだ』とか、いろいろなことが見えるようになったのです。


そんなある日、いつも期限切れ間近の安いものばかり買うおばあちゃんが、5,000円もする尾頭付きの立派な鯛をカゴに入れてレジへ持ってきたのです。


彼女はビックリして、思わずおばあちゃんに話しかけました。

「今日は何かいいことがあったんですか?」


おばあちゃんは彼女に、にっこりと顔を向けて言いました。

「孫がね、水泳の賞を取ったんだよ。今日はそのお祝いなんだよ。いいだろう、この鯛」


「いいですね。おめでとうございます」

うれしくなった彼女の口から、自然な言葉が飛び出しました。


お客さんとコミュニケーションをとることが楽しくなったのは、これがきっかけでした。


いつしか彼女は、レジに来るお客さんの顔をすっかり覚えてしまい、名前まで一致するようになりました。


「〇〇さん、今日はこのチョコレートですか。でも今日はあちらにもっと安いチョコレートがでてますよ」

「今日はマグロよりカツオのほうがいいわよ」などと言ってあげるようになりました。


レジに並んでいたお客さんも応えます。

「いいこと言ってくれたわ。今から替えてくるわ」


そう言ってコミュニケーションをとり始めたのです。

彼女はだんだんその仕事が楽しくなってきました。


そんなある日のことです。

その日はとても忙しい日でした。


彼女はいつものようにお客さんとの会話を楽しみつつレジを打っていました。

すると店内放送が響きました。


「本日は大変に混みあいまして申し訳ございません。どうぞ空いてるレジにおまわりください」

ところがわずかな間をおいて、また放送が入ります。


「本日は混みあいまして大変申し訳ありません。重ねて申し上げておりますが、どうぞ空いているレジのほうへお回りください」


そして3回目、同じ放送が聞こえてきた時に、はじめて彼女はおかしいと気づきました。

そして、ふと周りを見渡して驚きました。


どうしたことか5つのレジが全部空いているのに、お客さんは自分のレジにしか並んでいなかったのです。


店長があわてて駆け寄ってきます。

そしてお客さんに「どうぞ空いているあちらのレジへお回りください」と言ったその時です。


お客さんは店長に、こう言いました。

「私はここへ買い物に来てるんじゃない。あの人としゃべりに来てるんだ。だからこのレジじゃないとイヤなんだ」


別のお客さんが店長に言いました。

「私もこの人と話をするのが楽しみで来てるんだよ。だからこのレジに並ぶよ」


この時、彼女は、初めて、仕事というのはこれほど素晴らしいものなのだと気づいたのです。

すでに彼女は昔の自分ではなくなっていました。



いかがでしょうか。

新しい環境で再出発する方もいらっしゃるかもしれません。

新しいことに挑戦する方も多いことでしょう。


今、「本当に、これでいいのか?」「何の意味があるのだろう?」と、悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。


でも。

大丈夫。


どんな仕事であっても、どんなことであっても、つまらないものはない。


心がけ次第で「変えること」は必ずできるはずです。


しっかりと「自分の道」を歩むことで、必ず見えてくるものがあるのではないでしょうか。



最後に


名言を贈ります。



若い人たちが転職することに私は反対しません。ただ、いまいる職場で可能な限り努力するのが先決です。そうすればおのずと“天職”も発見できるでしょう

草野仁



今皆さんに与えられている職務が、全部が全部適性であるかどうかはわからない。けれどもある程度社員としての適性があるとして、採用されたのだと思う。だから、皆さんは今の適性に生きる、その適性に誠心誠意働くということによって、皆さんが望む、望まないにかかわらず、皆さんの天分がそこから開けていくものだと思う

松下幸之助



尊敬すべき幸福な人は、逆境にいても、つまらぬことはくよくよせず、心配しても始まらないことは心配せず、自分の力のないことは天に任せて、自分の心がけをよくし、根本から再生の努力をする人である

武者小路 実篤



どんなにつらくても苦しくても、どんなに不確実で何が起こるかわからない、そんな先の見えない不安のなかでも、人は感謝し、喜び、生きていける

大野寿子(メイク・ア・ウィッシュ・オブ・ジャパン事務局長)



いくらのろくてもかまいませんよ たいせつなことは いつでも前をむいて 自分の道を歩くことですよ

相田みつを



すべての人が「個性」という種を持っている。そこに毎日「努力」という水をかければ「感動」という花が咲く

福島正伸



つみかさねの上に 咲く花 つみかさねの果てに 熟する実 それは美しく尊く 真の光を放つ

坂村真民

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