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『サクラ大戦』の名台詞、「花見の準備」の元ネタは?

アドベンチャーゲームシリーズ『サクラ大戦』には、シリーズを通じて繰り返し登場する、「定番の選択肢」がある。一番有名なのは、ヒロインの風呂を覗く「体が勝手に……」だろう。二番目が「花見の準備」である。

各作品の第一話で、隊長が一番最初の出撃命令を下すシーン。「○○、出撃せよ!」とかっこよく叫べばいい。だが決まって、しょうもない選択肢が紛れ込んでくる。それが「花見の準備をせよ!」。

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(画像は『サクラ大戦3』第一話より)

弊サークル「夜話.zip」が出した幻のC98新刊、『〈サクラ大戦の遊び方〉がわかる本』の中で、私はこの「花見の準備をせよ!」を名台詞として紹介する記事を担当した(企画ページ「このLIPSがすごい!」)。そこで次のように(めっちゃドヤ顔で)書いた。

たぶんこれ、元ネタは『攻殻機動隊』に出てくる「桜の24時間監視」だろう。素子の粋なセリフに比べると、こっちは正直、つまらない。だからこそ、熱いシーンを寒いオヤジギャグで台無しにしたい、という欲求に訴えてくる。

念頭においていたのは次のシーンだ。桜を見ながら酒を飲んでいた素子たちに、荒巻から出動命令が下る。部下に指示する素子の一言。

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(マンガ版『攻殻機動隊』第一話より)

「いやぁまた知られざるサブカル史の糸を発掘してしまったぜ〜」などとへらへらしてたら、先日、サークルの相方であるひかけんくんから晴天の霹靂が。「マンガ版パトレイバー読んでたら、「花見の準備」、出てきたんだけど……」

え……

ひかけんくんが見つけたのは『機動警察パトレイバー』第一巻の第一話。後藤隊長が特車二課第二小隊を出動させるシーンだ。

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(マンガ版『機動警察パトレイバー』第一話より)

これは……

第一話の初出撃シーンであることはもちろん、ロボットものであることも『サクラ大戦』と共通する。また後藤のセリフは敵を上野公園に誘導することを念頭においたものだが、初代『サクラ大戦』第一話も戦闘の舞台は上野公園だ。終わった後にお花見があるのも同じ。単行本のデータによると昭和63年(1988年)の号に雑誌掲載されたらしいので、初代『サクラ』発売よりだいぶ早い。さらに『サクラムービーロマンチカ』(2001)のインタビューによると、広井王子は『サクラ大戦』の企画を『はいからさんが通る』+『パトレイバー』として考えていたという。

うん……

訂正ですね……

もちろん裏を取ったわけじゃないので、もしかしたら『攻殻』の方が元ネタかもしれないし、元ネタなんてないかもしれないし、全く違う第三の元ネタがある可能性もある(他に元ネタらしきシーンなどありましたらコメント等いただけるとありがたいです)。だが少なくとも『攻殻』よりも『パトレイバー』の方が元ネタとして遥かに蓋然性が高い。すいません、訂正します。「花見の準備」の元ネタはたぶん『パトレイバー』でしょう。

元ネタ探しというものは一般的に、インタビュー等で確認しない限りは確実なことが言えない(インタビューで裏を取ってすら、記憶違いということがある)。だから元の記述でもいちおう推測として書いてはいる。いるのだが、やっぱ猛烈に恥ずかしい。うう……精進します……。

(注)ちなみにアニメ版『パトレイバー』で同じセリフがあるかどうかだが、マンガ版第一話を元にしたと思しきOVA版第一話では登場していなかった。他の話数で見つけたらまた追記します。



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