なぜそこまで生成AIを憎むのか……?
ナウル共和国のX公式アカウントが、反生成AI派の輩によって燃やされた、という話題を聞く。どういう理屈なんだ?
ナウルの公式ポストを追いかけていくと、数日前に、Xの新機能として搭載された「Grok」というAIアシスタントを使って画像を生成したらしい。それを反生成AI派が気に入らないと攻撃してきた、と。
XのAI機能追加は知ってたが、プレミアム会員向けのサービスだったので詳細は知らなかった。noteに紹介する記事があったので貼っておく。
なお上記記事も、各種生成AIを使いつつ書いたという。言われてみれば、AIチャットの回答みたいな言葉遣いになってるが、注釈がなければ分からない。もうこんなレベルなのかと感心させられる。
それはさておき、ポイントは上記記事の『(3)プライバシーと注意点』の箇所だろう。Grokはネット上の公開データを使って学習するが、もし自分の自情報を使われたくないのならアカウント設定にも出来るし、何よりまだ開発途上のモノなので、完全に信頼できる情報を基にして作られたか、を十分精査する必要があるだろう……
自分が思うに、反生成AI派はこの「ネット上の公開データ」部分を拡大解釈している。それを「勝手に他所様のデータを盗んでモノを描くな作るな、お前らのやっていることは犯罪行為だ」とことさら強調してひたすら攻撃しまくっているのだ。
正直なところ、こんな状況で「生成AIはどうあるべきか?」とネット上で議論をするのは難しい。慎重派な方々の意見も、聞く耳を持たない過激な炎上行為のせいで存在が霞んでしまっている。活発な議論をしようにもまるで話が通らないため「もう反生成AI側の意見は聞かない」とまで明言した著名な漫画家さんまでいる。余程のことを言われたのだと想像出来る。
以前に自分は「生成AIを最初からお利口さんにさせるな」と書いた。AIへの学習を最初から選別するでなく、あらゆることをさせてから「これはいい、これはダメ」「いや、これだって別に問題ないだろ」と人間側が考えるべきだと。
もしもAIの思考が偏ったなら、それは情報を与え続けた人間様のせいである。フィルターを掛けてしまうのは、自分が望んだ情報しか学んではいけない、とAIに強要しているようでどうにも好かないのだ。生成AIを誰にとっても「お利口さん」にしたいのなら、すべての情報はオープンにすべきじゃなかろうか? もっとも、個人でAIを所有し、その人にとって一番理想のAIを作り上げたいのなら話は別だが。
それに「他所様のデータを盗んでモノを描くな、作るな」てのも変な話で、人間だって絵を描く時は「何かしら」を参考にして描いてますよね? いや、しないはずがない。
30年以上前、自分はこんな漫画を読んだ。
『コロコロコミック』で長く連載されていた『まんがチャレンジ/しのだひでお』。漫画家志望の青年がプロの漫画家・しのだ先生と出会い、先生のアドバイスを通じて「漫画の作り方・描き方」を学ぶという内容だった。そこで先生が語っていたのは
「必ず元となるものを見て描くことだ」
と。劇中で何か「モノ」を出す際は、その「モノ」の資料を参考にしつつきちんと描きなさい、と。
学研の『学習』『科学』でおなじみだった山口太一氏による『まんがで学習 まんが家になるコツ21』ではこうあった。
「まずは『さるまね描き』から始めろ。ひたすら真似して描くのだ。描いているうちに、自分の描く絵のどこがおかしいのかが分かってくるのだ」
……そして、使ってみて始めて分かったが、生成AIの絵の描き方も、それと全く同じなのである。参考用の画像を取り込ませても、どこでどう学習したのか分からないが、そこにAI独自の解釈が入るのか完コピにはならないのである。つまりAIも画像やプロンプトを踏まえつつ「こういう感じ(形状)のものを描こう」と考えながら絵を生成しているのだ。
それがなぜ、人が画くことなら問題ナシで、生成AIなら盗んだ、犯罪だと言えるのか? そもそもお前のやっていることは犯罪だ、と繰り返し訴えて罪の意識を植え付けようするのは、ぶっちゃけ表現規制推進派がやっていることと同じ手法なのだ。
無論、ある絵師の画風を学習させて、その絵師(の作品)だと偽って公開するようなのはイカン。間違いなく著作権侵害に該当するし、絵師さんが出るトコに出れば裁かれるだろう。だから反生成AIという考えも産まれた。
しかし、だからといって生成AIを全て否定するのはおかしい。交通事故が起きるから車を無くせ、という極論と同じである。自由すぎてもいけないが、かといってそんな極論で否定するのも違う。その両方をどう擦り合わせていくか、ルールを作っていくか? を今まさに(政府内でも)議論している真っ最中なのに、なぜ反生成AI派は自らの印象を悪くするような、私人警察と同等のことをやっているのかが、全くもって理解出来ない。
その考えで、本当にクリエイターを護ってる気でいるのが恐ろしい。
実に恐ろしい。
……なお、その後のナウル共和国アカウントでは「あまりにも差別的な発言が見られた」として法的措置も検討、とある。裁かれるのはそちら側の皆さんのようですな。
さて、こんな話で終わるもの何なので、いくつか描いたものをば。
ここで紹介した方法を元に、ウチの娘を描いてみました。
Control Netを使った着せ替え、めちゃくちゃ楽しいです。
「……にしても、秋冬モノは結構シックな色合いのを選ぶんだね」
「誰かさんの好み。好きでしょ?」
「うん、好き。
……あっちが憤ってる間に、こっちはユキと一緒に楽しませてもらうさ」
「だよねぇ」
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