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ロス・ガトス・ロコス最後の男・犬塚弘さん逝去

 94歳……本当にお疲れ様でした。
 ちなみに「ロス・ガトス・ロコス」とは『クレージーメキシコ大作戦(1968)』の劇中で、図らずもクレイジー・キャッツの面々7名が目的がバラバラながらもメキシコで出会い、図らずも音楽ユニットを作ることになった際に名乗ったグループ名。直訳すると「気◯い猫」、すなわちクレイジー・キャッツ。

 自分がクレイジー・キャッツを知ったのは、植木等の『スーダラ伝説』でリバイバルブームが起きた90年代初頭。バラエティ特番が組まれるほどの人気になり、それに合わせてクレイジーの面々も再集結。番組内では回顧トークだけでなく新作コントも披露されたりと大変盛り上がった記憶があります。そして植木等を始め、クレイジー主演の映画がテレビや衛星放送でオンエア。元々はこういう人達だったのか、と知識を刷り込まれたのも懐かしい。自分は当時10代でしたが。
 しかし、まだまだこれからという時期に安田伸や石橋エータロー、そしてリーダーのハナ肇が60代で早逝。石橋さんは芸能界から身を引いていたとはいえ、立て続けにメンバーの訃報が続いたのは本当にショックでした。数年前まで楽しそうに音楽コントをしていた方々が突然この世を去ってしまった。また何か全員で集結して面白いことをやってくれるのかな、と期待していた矢先だったので、なおさらです。
 21世紀に入ると、植木等、谷啓、桜井センリ……と旅立たれ、ついに犬塚さんは「最後の男」に。本当に長生きされました。

 犬塚さんを振り返ってみますと、グループ内ではベース担当となってますが、ベースはベースでもダブルベース、すなわちコントラバスなんですね。先に紹介した特番での新作コントですと、弦楽三重奏を題材にしたネタにしたのが良かった。とりわけ谷啓との掛け合いが面白く、お互い隣同士にいて、演奏しようとしたら弦がぶつかり合い、その勢いで何故かフェンシングが始まるとか。実際にプライベートでも谷啓とは特に仲が良く(メンバー内で下戸同士だったため気が合った)、一緒にネタを考えたりした間柄。息が合うのも必然だったのですね。
 俳優としての活動だと、クレイジー映画では真面目な刑事役をやったかと思えば、ちょっと頭の足りない男を演じたりして脇を固めたり、『怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス』では発明おじさん役で怪獣に負けない大奮戦ぶりを披露。ただこの映画に関していうと、おじさんのドジっぷりが徹頭徹尾すぎて作品としては少々空回りな感もあるのです。クライマックスにそこまでやったのに失敗、ってそれは無いでしょうよ。いつもドジなおじさんがここぞという時に大成功したけど、ことが終わったらまた元のドジに戻っちゃった、てな話でも良かったはず。子供向けのギャグコメディ怪獣映画、としての地位を築けたとは言い難く、その点が惜しまれます。こんなキャラを器用に演じられる犬塚弘という方を据えたのに、何か勿体ないなぁ、と思えてならなかったですね。

 そんな犬塚弘さんを最後にメディアで触れたのはいつだったか。数年前にラジオへゲスト出演されたのを聴いてた記憶はあります。いろいろと話が進む内に、そうか、もうクレイジー・キャッツはお一人だけになってたのかと改めて気付かされ、寂しくもありましたが、せめてお元気でいてほしいと願わずにはいられなかったです。


「おう、ひろむ! やっと来たか!」
「いきなりそれですか」
「まあまあ、あれからまたコントのネタを作ったんだ。早速やろうよ」
「……そうだな、じゃあやろう!」

 犬塚弘さんのご冥福をお祈りします。

 

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