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映画「THE TRUE COST」を観て

ウナギネマさんのオンライン配信で映画「THE TRUE COST」を鑑賞しました。約4年前、スタイリストを始めた頃に、近くのカフェで上映された時に観に行ってから、2回目の鑑賞です。ファッション業界の裏側に迫ったドキュメンタリー映画です。ゴミ廃棄場のリアルな現状や皮革工場からの汚染水で皮膚にダメージを受けた女性など悲惨な現実を突きつけられる映画です。

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初めて観た時は「これが現実!?」と受け入れられない自分もいましたが、今回は以前よりもスッと内容が入ってきて、自分も社会も変化したのを感じました。

今回特に印象に残ったのは、“小さい子供を預けて都市に出て働くバングラデシュの女性”と“安くてかわいいお洋服を動画で紹介するおしゃれな若い女性たち”との対比でした。年は同じ20代くらいなのに、こうも違うのか、と。

バングラデシュの女性からは“貧困”について考えさせられました。貧しい村に住んでいた彼女は「子供を育てるためにお金が必要で、稼ぐためには都市に出ないといけない。けれど、都市に出たら、子供を預ける場所がなく、子供を家に一人置いたままにしなくてはいけない。朝早くから夜遅くまで働きづめの毎日。子供を職場に連れていくわけにはいかず、一日中家でTVを見せるしかない。だから(両親や親戚などの)家族がいる村に、子供を残していくしかない」という内容のことを話していました。ほかの縫製工場では、ほこりが舞う中、一日中ミシンで仕事をしている女性の足元に赤ちゃんが寝転がっている様子が映っていました。

自分の子供と一緒に暮らすだけでこんなにも難しいことなのか。家族と一緒にご飯を食べたり、眠ったりする当たり前の日常が奇跡のように感じました。

インタビューを受けていたバングラデシュの女性を始め、縫製工場で働いている女性たちは、カラフルで、キラキラとした刺繍が施されたキレイなお洋服を着ていました。イスラム教やヒンドゥー教の服装だと思います。人間みんな“服”を着ます。同じ“服”でもそれぞれ意味が違います。毎日大切に着ている、自分が信じる宗教の服と、明日捨てられるかもしれない安い服…。

『THE TRUE COST』は自分への戒めでもあります。わたしは、10代20代の頃、安いお洋服を留めどなく買っていました。買った時は幸福感がありますが、数日経てば、また虚無感に襲われ、着ない服で溢れたクローゼットにため息をついていた時期がありました。映画の中にもありましたが、“物質主義”で、その製品を買うと幸せになれると思い込んでいたのです。つまり、自分に自信がなかったんです。

自分に自信がなかったわたしですが、娘を妊娠した時に、ふと自分がどんな母親になりたいのかを考えました。そこで一番に浮かんだのが「自分自身を大切にする母親」でした。わたしは物質的には恵まれた子供時代を過ごしましたが、自分のことを犠牲にして仕事や家事をしている母親を見て、ただただ悲しい気持ちになりました。「母親の本当の笑顔が見たい」と願っている子供でした。

娘ができてから、簡単ではありませんでしたが、「自分自身を大切にする」ことにエネルギーを注ぎました。そうすると不思議なことに無駄な買い物も減っていきました。広告にもだんだん踊らされなくなってきました。そして、‘’自分を大切にする‘’ことを娘にも伝え続けた結果、娘は物欲のあまりない子に育ちました。必要なものがあれば、「欲しい」と言いますが、必要ないものなら、わたしが勧めても「要らない」とはっきり断ります。“心”と“消費”にはとても根深い関係があるのです。そういう経験から、企業側だけでなく、受け取る側の問題も大きいな、と気付きました。

消費者も、広告に踊らされないマインドを身につけ、お金の使い方を学ぶことが大切です。今、アパレル業界は努力を重ね、エシカルなブランドが増えてきました。エシカルなものはどうしても価格が高くなります。何をどう選ぶかは自分次第なのです。

では、実際にどう行動したらいいのでしょう。完璧は求めなくていいです。いきなり100%エシカルなものだけに変えるのは難しいですよね。ここでもマインドの問題が出てきます。最近のわたしは、次世代に、エシカルな世界を紡いでいけるイメージを持って買い物をしています。

わたしの場合4年くらい前から、少しずつエシカルなものを取り入れてきました。けれど、やはりファストファッションで買ったものもタンスの中にあります。そういう物を今全部捨ててしまうこともゴミ問題につながってしまいますよね。なので、ファストファッションのものも大切に長く使うようにしています。

新しく買うものは、“エシカル”なものを選ぶ。今持っているファストファッションの服は、大切に長く使う。捨てるときは、古着の行き先がはっきりわかる場所に寄付する、または人にあげる。

これを繰り返すと、1年後のクローゼットはどうなっているでしょうか。エシカルなものと大切に使っているものが詰まっているクローゼットになります。それって素敵ですよね^ ^

お洋服は自分を表現するものでもあり、人と人とを繋いでくれるものでもあります。芸術性もあり、守っていきたいものでもあります。だから、ただ「服を買わない」「今ある服だけで着回したらいい」で終わる問題ではありません。アパレル業界を含む、経済を動かすためにも新しい服は取り入れた方がいいです。

まずは、「自分自身を大切に」「家族など周りの人たちを大切に」そうすることで、必要なものが見えてきます。日常のお買い物を少しずつ変えていくことが大切です。自分を大切にしている人しか、地球も大切にできないんです。映画『THE TRUE COST』が何か行動を変えるきっかけになりますように。

スタイリストあられプロフィール⭐︎手持ち服を最大限に活用してコーデするオンラインサロン&イベント『アポルテコーデ マルシェ🇫🇷』主催。人にも地球にもやさしい「エシカルファッション」について具体的にアドバイスが受けられる場です。バンタンデザイン研究所スタイリストコース卒業。政治家、編集会社社長、ミュージシャンから主婦まで幅広くスタイリング。https://reserva.be/arale0521




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