第6話 田町スタジオのマネジャーになり、呼ばれた次の先は。
2011年11月
上京から1ヶ月が経過し、
アシスタントマネジャーとして田町スタジオを中心に勤務し、
北参道や、秋葉原スタジオへも、時たま出入りしていた。
覚えることが多く、目まぐるしい日々を過ごしながらも、
様々な会員様との出会いお話しさせてもらい、日に日に仲良くなっていくことの楽しさを感じながら、充実感に満ちた日々を送っていた。
この日、勉強カフェ秋葉原スタジオが、2周年を迎え、<2周年交流会>が開催され、初めての勉強カフェ交流会に参加した。
秋葉原スタジオの熱気は、普段からすごかった。
(これが勉強カフェのコミュニティか)
と思った。
「新スタッフですか!?」
など、勤務時には会員様の方から、積極的に話しかけてくれるのである。
コミュニティの雰囲気は、毎日その場にいなくても、
新参者が入った時に、受け入れ、積極的でオープンな雰囲気があるかどうか、で判断できる。
紛れもなく、この時の秋葉原スタジオは関り合おう、
という姿勢がすごく、僕もそれに答える形で必死でコミュニケーションをとった。
交流会の二次会、にも初めて参加した。
< エルセロドス >というシャレオツなスペインバルが近くにあり、
秋葉原スタジオの人にとっては、馴染みの店らしく、
僕にとっては会員様と初めて、お酒を飲みながら語りあう機会だった。
勉強カフェのことや、勉強のことだけでなく、将来のこと、仕事のこと、人間関係のこと…
話題は尽きず気づいた時には、もう終電はなくなり、0時をまわっても語り合いは続くのだった。
次の日も秋葉原スタジオで朝から勤務だったため、僕はカプセルホテルを探し、宿泊した。
・・・勉強カフェのコミュニケーションは、新鮮だった。
あらゆる立場、世代、職業の人が、学びという軸を持って、そこに集っている。
スタッフとして関わらせてもらう中で、
様々に人生模様を教えてもらうことができる。
会社員の人が中心だが、職種も多種多様で
商社の人もいれば、SEの人、銀行員の人もいれば法律家や医療従事者もいる。
ベンチャー企業の社長もいれば、作家や議員の人もいたし、大学生もいれば定年退職を迎えた人もいる。
これだけの人たちが集まっているのだから、
勉強カフェに集う人が相互にコミュニケートできる仕組みや、
取り組みが進化し、確立すれば世の中に大きなインパクトを残せるに違いない。
狭いカプセル部屋の中で、一人。
(ポテンシャルはものすごいが、まだまだ全然、完成されていない。もっと思いついたことを、やってみよう。)
この日の衝撃が、これから始まる田町スタジオのマネジャーの日々に、還元されることになった。
2012年4月・・・早朝6:30
うぉおおおおおおおおお!!!!
チョーサミーゾコノヤローーォォォォォッッ!!!
ホンダの原付バイク「Lead50」にまたがり、田町スタジオを目指し、
アクセル全開・ぶっ飛ばしながらフルフェイスヘルメットの中で叫んでいたのだった。
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その日の早朝・6時15分ごろ、
秋葉原スタジオの朝シフト担当の子から、メールで連絡が来た。
< T田さんから起床連絡がありません!出動をお願いします >
勉強カフェ秋葉原スタジオ、田町スタジオは両店舗ともに
7:00オープンであり、その時間の多くはアルバイトの子が入ってくれていた。
しかし、人間なので稀に寝坊などの遅刻が発生し、
オープンできないことが過去に何度かあったため、
「起床連絡システム」
・・・両スタジオの朝シフトの人は、起床後に必ず連絡を入れ相互に起床したことを確認する。6時すぎまでに連絡がない場合、寝坊などの何らかの理由でオープン遅延の可能性が高まるため、社員に連絡し、出勤を要請する
を採用していた。
僕は飛び起きて、一瞬で着替え、髭を剃り、オープン遅延防止に向けて出動したのであった。
(当たり前のことなので自慢にはならないが、この7年間で運営店舗を遅延させたことは一度もない)
自宅は恵比寿ガーデンプレイスからすぐの場所にあり、立地は最高だが、
築50年近いため、付近の家賃相場からは半額程度で住めていたボロアパート。
田町までは原付なら15分もあれば、到着した。
しかし、急ぎすぎて手袋を忘れてしまっていた。
春先のまだ寒さの抜け切れていない中での
バイクスピードが生み出す朝の冷気は、手が凍るんじゃないかと思われるほど凍てついた。
この4月から、田町スタジオのマネジャーとして正式にポジションを与えられていたのだった。
勉強カフェとしては初となる4店舗目・「勉強カフェ池袋スタジオ」のFC加盟が決定し、4月中にオープンが決定、
さらに6月には、5店舗目として直営店舗としての新たな試み・レストランの居抜きを改装した本格的なキッチン付きのスタジオ「勉強カフェ青山ソーシャルキッチンスペース(当時名称)」のオープンも立て続けに決定していた。
※青山店は定期借家契約による期間限定のオープンであり、現在は閉店
田町スタジオ前任のS井さんはFC準備と、青山ソーシャルキッチンスペースのオープニングマネジャーに就任するため、
田町スタジオを僕に引き継いでいた。
この時期の勉強カフェは、店舗展開に伴い採用活動も積極的に行い、
京都からN沢さん(ニックネームは組長)の入社が決まったり、元会員でウイスキー部の部長を担当していた
大川さん(ニックネームはそのまま部長・現在はFC事業部統括マネジャー、システム部門責任者)の入社が決まっており、
戦力を拡大していく最中であった。
その中で、自分はこの任された田町スタジオを、アシスタントマネジャー(副店長)をしながら想定していたことを実行し、店舗として成立・発展させることで、この大きく動きつつあった拡大の波に乗せて行こう、と考えていた。
もともと、自分でカフェコミュニティをずっと、運営してみたくて、
この場所に来たのだ。
だから、コミュニティを盛り上げるために行いたい、変えてみたいことは山ほどあった。
その中で、「店舗運営」という意味でも、必要だと思い実行した主な項目が二つあった。
1【コミュニティの活性化】
2【スタッフの成長】
である。
これらは、僕が初めて店舗として必要だと思い実行したものであり、
当時を振り返ることは何かの参考にもなるかもしれないので、ここに記してみる。
【コミュニティの活性化】
勉強カフェのコミュニティ要素のポテンシャルが、まだまだ発揮されていない状態にあった。
・会員様から発せられる勉強会の数が少ない
・メンバー一人ひとりをつなぐ回数が少ない
・コミュニティ形成が特定層に固まってしまっている
これらの課題を解決するために、以下の取り組みを行った。
「BOOK MORNING CAFE」・・・僕と当時の秋葉原スタジオのマネジャーK田さんとともに秋葉原で行っていた、7時30分から行う早朝読書会。
毎回、本を持ち寄ってそれぞれ気づきなどを発表しあう。出勤前の会社員の方が参加してくれていた。
これを、田町にも輸入した。早朝のコミュニティづくり、またスタッフもそこに参加することで、相互のコミュニケーションに寄与した。あと、さまざまな本を知ることで単純に自分の成長にも繋がった。
「異業種のことを知ろう会」・・・会員様にどのような勉強会があれば面白いか、複数の候補を出し、アンケートを取り、一番リクエストが多かった会。それぞれ、普段は話すことのできない、リアルな職場の現状を共有しあった。
「ディクジット会」・・・当時、著作を何冊を出されているプロ・栗原先生(青山コミュニケーションセミナー代表)が田町スタジオで開催してくださっていた話し方教室<トークラボ>の中で好評だった、コミュニケーションゲーム<ディクジット>を使い、会員の方同士でコミュニケーションを図る会。
「スイーツ会」・・・秋葉原スタジオで好評だったアイスの会、からインスパイアされ、誰でも参加出来る緩めの企画として、スイーツを持ち寄りプレゼンし合う、という会を開催した。自分のプレゼンしたスイーツが酷評されたことを覚えている笑
また、会員様にも積極的に勉強会の開催を提案させてもらい、
「応用情報処理勉強会(名前通り資格の勉強会)」「体のことを知ろう会(アスリートのコーチをしていた方の体幹トレーニング会)」「LIGHTNING TALK(5分間プレゼン練習)」など、新たな勉強会を発足していただいた。
今思えば、会の進行の仕方も適切でなかったり、ノリと勢いで行った部分が大きくクオリティは低かったが、賛同してくださる会員様も少なからずいらっしゃり、
これらを行うことで、またその姿勢が、会員様同士のコミュニティを活性化することにつながる、ということがわかった。
【スタッフの成長】
勉強カフェは、スタッフに始まり、スタッフに終わる。
ここで働く人次第で、いかようにも変わる。
それぞれのスタッフの適正に仮説を立て、タスク配分を行った。
T田さん・・・コミュニケーションスキル、事務能力も高くシフト回数も多い為、コミュニティの中心になってくれた。
想いの共鳴が強かった為、クレドルーティン(ビジョン共有)を頻繁に行い、田町スタジオの持って行く方向性を何度も話し合い、
目指す雰囲気のど真ん中を作ることを果たしてくれた。
K長さん・・・コミュニケーションの中でも、特に人と人をつなげる能力が高かったため、その能力を発揮してもらった。会話途中にその近くにいる会員様をうまく会話に巻き込むタイミングが天性のものだった。コミュニティ活性化に必要なグッドミキサーとしての役割を果たしてくれた。また、マクロビの会などを行い、自ら中心となるコミュニティも作り上げてくれた。
S馬さん・・・のちに社員となり勉強カフェ発展に大きく貢献することになってくれたS馬さんは、決められたオペレーションを遂行する能力が極めて高く、また様々にワードやエクセルを行使して業務効率化を果たしてくれた。それ以外にもコミュニケーションや共有事項の正確性など、もともとの基礎能力値が高く、ロングシフトもこなせる体力もあり、信頼感が抜群であった。
タスクの適正化のためには、それ以前にコミュニケーションをしっかり確保することが大切となる。
店舗コミュニティマネージャーの最大の仕事の一つは、この部分だろうと、確信した。
・・・・たくさんの「やってみたかったこと」を実行し、
コミュニティも活性化し始め、
マネジャーとしても3ヶ月が経過し、運営に慣れてきた頃に、
勉強カフェの店舗拡大のスピードは減速することなく、そのまま大きなご縁を呼び込み、新たな展開が訪れる。
ーーーーーーーーーーーーー2012年7月
横浜、という言葉を、また聞くことになった。
本当に、びっくりした。
2005年〜2009年まで、
高校までを過ごした群馬県を出て、大学生活のため、4年間ずっと横浜市緑区の「長津田駅」から徒歩7分のアパートに住んでいた。
当時、仲の良かったアルバイト先< とんかつ和幸 >の社員・K島さんと
電車で40分ほどの横浜の繁華街である「関内」、その隣にある中華街が有名な「石川町」や「元町」に繰り出しては、街を探索したり飲み歩いたりした。
要するにとても親しみあるところであり、
遊びには行っていたけど、働くための場所として捉えたことはなかった。
そんな中
< 勉強カフェ横浜関内スタジオ >が、大手不動産会社と協力し、
その会社が所有する物件の中で
2012年8月にオープンすることが決定した。
横浜市営地下鉄、ブルーライン関内駅、直結。
DeNAベイスターズの本拠地である横浜スタジアムもすぐそばにあり、
みなとみらい線「馬車道駅」や、
京急線「日ノ出町駅」からも歩いて15分あれば行けた。
立地は抜群だ。
田町スタジオのカウンターの中で、
代表の山村さんからSkypeコールがあった。
「関内スタジオのオープニングマネジャーをやってみないか?」
二つ返事で即答。
「やります」
やらない理由がないし、やりたすぎた。
横浜が、また、日常に、なる。
ワクワクした。
しかも、貴重な店舗オープンを経験できる。
こんな楽しそうすぎて、魅力的な機会はなかった。
・・・そして、何よりびっくりしたこととは。
山口県から上京してブックマークスの面接を受ける際、僕はまさにこの関内駅のカプセルホテルに宿泊していたのだが、
Yシャツにシワが目立ったため、これじゃあいかん、と思い、
駅近くの< 紳士服のコナカ・関内尾上町店 >に立ち寄って新シャツを購入したということがあった。
そのYシャツのおかげかは、知らないが、こうやって勉強カフェのメンバーとして携わらせてもらうことになった。
なんと、勉強カフェ横浜関内スタジオは、この<紳士服のコナカ関内尾上町店>の同一ビル内・地下1階にオープンすることになっていたのだった。
(1年前の上の店舗で、Yシャツを買った結果、その1年後に下の店舗でマネジャーをする。
なんとも不思議なことが起きるものだ)
と、お天道様のいたずらな意思を感じざるをえなかった。
・・・・それから、妄想をした。
それはそれは、妄想をした。
(一番初めに来店する人は、どんな人だろう。
そこに集う人が仲良くなって新たなコミュニティができて、秋葉原や田町みたいに、
語り合う日々が、来るのだろうか。
一緒に働くスタッフは、どんな人になるだろうか。
誰かが合格したり、目標達成をしたことを、一緒に喜べる日が、この場所でも訪れるだろうか。
勉強カフェは、東京から出ても、受け入れられるだろうか。)
8月が放つ真夏の暑さに覆われた、昼下がりの午後。
恵比寿ビールのメロディが、電車の到着とともに毎回流れる
JR湘南新宿ライン途中の、恵比寿駅、
大船行きのホーム。
サラリーマンが汗を拭きながら、
スーツを上下に着てバッグを持ちながら疲れとともに立っている。
その人たちの行き先は知らない。
ただ一つわかっていたこと。
僕は関内駅に行くためだけに、その車両に乗るのだった。
第7話に続く。
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作者 : 荒井浩介 株式会社ARIA代表取締役
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勉強カフェ大阪本町/大阪うめだ official WEB : http://benkyo-cafe-osaka.com/
※勉強カフェ®は株式会社ブックマークスの登録商標です。 勉強カフェ大阪本町/大阪うめだは、勉強カフェアライアンスのメンバーです。
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