見出し12月号です

最新戦法の事情【豪華版】(2019年12月号・居飛車編)

どうも、あらきっぺです。

タイトルに記載している通り、プロ棋界の将棋から居飛車の最新戦法の事情を分析したいと思います。

なお、前回の内容はこちらからどうぞ。

当記事の注意事項については、こちらをご覧くださいませ。


最新戦法の事情 居飛車編
(2019.11/1~11/30)



調査対象局は93局。それでは、戦型ごとに見て行きましょう。


______________________________________

◆角換わり◆


26局出現。やはり基本形から△5二玉→△4二玉と玉を往復する将棋が多く指されており、(7局出現)現環境の角換わりにおいて重要なテーマとなっていることが読み取れます。


000解説往復

先手には三つのプラン(攻撃志向型・無理攻め誘発型・駒組み移行型)を選ぶ権利があり、それぞれを比較検討している段階にありました。ただ、「駒組み移行型」に関しては、後手に有力な指し方が登場したことで廃れつつあります。例えば、こちらの将棋は後手の成功例と言えますね。


そこで、先手は「攻撃志向型」か「無理攻め誘発型」のどちらかを選ぶようになりました。今回は、攻撃志向型の将棋を掘り下げて行きましょう。


00攻撃志向型

攻撃志向型とは、ご覧のように▲4五桂と跳ねて果敢に攻めて行く将棋のことを指します。

後手は早い桂跳ねを咎めたいので、△2二銀と引いて桂を取りに行く姿勢を見せます。以下、▲7五歩△同歩▲5三桂成△同玉▲7四歩と進めるのがこの形の定跡ですね。(第1図)


画像4

ここからは、△4四歩▲4五歩△5五歩▲7三歩成△同金▲4六桂△5六歩▲5四桂△同玉▲4四歩が定跡化された手順です。長手数ではありますが、ここまでは以前の記事でも触れているので、ざっと進めます。(第2図)


画像5

さて。この局面が分岐点です。バラバラの陣形をどのように収拾するかが後手のテーマですね。そのための手段の一つに、△7四桂という手が挙げられます。(第3図)


画像6

2019.11.1 第69期大阪王将杯王将戦挑戦者決定リーグ戦 ▲広瀬章人竜王VS△羽生善治九段戦から抜粋。

これは、▲7四歩と叩かれる攻め筋を防ぎつつ、△8六歩からの攻めを見据えた意味があります。基本的には、斬り合いで勝つことを想定した一着ですね。

ここで先手は▲4三銀と放り込む手が目に映りますが、結論から述べると、それは性急な攻めになります。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。


画像7

そういった背景があるので、本譜は▲5六歩△5三玉▲5五歩で力を溜めました。(第4図)


画像8

5筋の歩を伸ばすのが本筋の攻めです。これは▲5四角の両取りがメインの狙いですが、▲5九飛→▲5四歩という狙いも含みにしています。攻め筋が多彩になったことにより、後手は受け切りが現実的ではなくなりました。


ゆえに、実戦は△8六歩▲同歩△7六歩▲同銀△8六桂で先手陣に迫りましたが、▲8二歩が用意のカウンターです。これで後手の攻めに歯止めを掛けることに成功しました。(第5図)


画像9

△同飛は▲7一角が王手飛車ですね。かと言って、飛車が横へ逃げるようでは攻めが頓挫してしまいます。

ここから先は

7,793字 / 35画像

¥ 300

今後ともよろしくです!