続・イヤモニはロックシンガーを救うか 【葛藤編】
前回「イヤモニはロックシンガーを救うか」では
イヤモニのおかげで私がいかに長年の悩みから解き放たれたかという話を書きました。
「ちょっと聞いて~!」な感じでバババババーと書きましたが
シンガーの方々からは共感をお伝え頂いたり
実際にイヤモニ導入の背中を押したり押さなかったり
楽器演奏者の方々からも
「ボーカルの人ってそんなこと考えてるんだね」
という感想を頂いたりして、
嬉しかったです。
今回は続編
導入から半年以上経って見えてきた
「イヤモニには確かに救われたけど……」
というお話
長く暑苦しく語ります!
異変
2022年は6月までライブの予定が無く
週に一度、個人練の為にスタジオインを続けていました。
前年から導入したイヤモニに少しでも慣れる為、
オケをバックに練習する時もイヤモニを装着していたわけですが
5月頃になって
歌っていて妙に疲れやすいことに気づきました。
気づいたというか
前年からうすうす感じていたことを認めざるを得なくなってきたというか。
以前なら
歌えば歌うほど調子が上がってきて
最後は延長しようかと思えるくらいでした。
ところが
1時間ほど歌っていると、喉に力が入らなくなる。
喉が痛くなったり、
声が枯れてきたというわけではなく。
ただただ
ぬかるみの中でアクセルを踏むような。
喉がバカになる感じというか。
翌6月には
APHRODITEと
Legend of TERRA ROSA
のライブが2週連続で控えているというタイミングで
なんだかいやだなあ〜
怖いな〜
と思っていました。
もしかしてやばいやつ?
原因として考えられるのは
まず慣れないイヤモニのせいであろうと。
私のイヤモニ歴はまだライブ10回未満というもので
ベストな音量や声と演奏のバランスが確定していません。
かの二井原実先生でさえ「慣れるのに1年かかった」とおっしゃっています。
「二井原実 イヤモニ」で検索すると勉強になる記事がいろいろ出てきます。
https://www.barks.jpnews/?id=1000107178
私などは月に何度もライブがあるわけではなく
イヤモニ実戦データの蓄積も間遠で
慣れるのに何年かかるやら?
とにかく
大音量の中で歌うことが格段に楽になったとはいえ、
急に自分の声がよく聞こえるようになったことで
これまで当てずっぽうにオリャー!と歌っていた箇所が冷静に
「あんた無茶苦茶やで…」
と現実を突きつけてくる。
「お、おう」
対処しようとするのですが
長年の感覚と違ってきてしまうので
「あの、ワタシどうやって歌ってましたっけ……?」
となる瞬間が出てきました。
そこで思い出したのはこの記事。
「歌唱時機能性発声障害」
まさに
「どうやって歌っていたかわからなくなる」
ものであるらしく
イヤモニを使うシンガーがその症状を訴えるケースが増えているとのこと
やばいやん。
そしてもうひとつ
イヤモニは関係ないのですが
時を同じくして前とは違うトレーニング方法を試していたのも原因ではないか?と睨んでいます。
声楽的なトレーニングだったのですが
喉周りの筋肉への負担が大きく
独学でやるにはまさに生兵法は怪我のもとだったかもしれません。
そうでなければ
歳のせい
うーむ
それは如何ともし難い。
それからどした
半年近く続けた、ポーザーには危険な声楽的練習方法を中止し
通常のトレーニングに戻すことで
ついた癖は忘れることにしました。
それはそれとしてイヤモニよ。
もはや使わずにライブをやることは考えられない。
しかし使うことで異常事態が進行してしまったら……
何より、今度のライブの最中にコントロール不能になってしまったらどうしよう!?
葛藤がありました。
結局のところ
6月のライブ2戦はイヤモニで乗り切ることは出来ました。
しかし
後で映像を確認すると、
少し及び腰で歌っているというか。
それでも
直感に従い、イヤモニの音量は声も演奏も小さめに
自分で聞いていてデカイなとも小さいなとも思わない感覚を重視していました。
導入当初はせっかくだからとわりと大きめにしていたのですが
もしかすると自分の声が聞こえ過ぎて歌いづらくなっていたのかなーと。
サウンドチェックではPAのかたが予め設定してくださる音量から
様子を見ながら徐々に下げていただくようにして
トランスミッターの音量も
当初は3時、4時の方向まで上げていましたが
6月は1時、2時のあたり
10月のライブでは12時くらいにしました。
11時59分から初めて、後半では12時1分ぐらいにしてたりします。
それもこれも
その時・その会場によるのでしょうが
自分が心地よく聞けて歌える
という感覚にシビアになるしかないような気がします。
当たり前な話でツマラン!
お前の話はツマラン!
爆音マッチョイズム
イヤモニするようになって
「音程がフラットしているのが気になっていましたが、改善されましたね」
「表現力が増したと思います」
ライブをご覧になったお客様からそんなご感想を頂くようになりました。
ライブレコーディングを担当してくださっている方からも
「ピッチ良くなったなー」
と言われました。
(違うんです!ほんとは出来る子なんです!モニターがうまくいってなかっただけなんです! と心の中で思っていましたことを告白します)
改善がわかりやすく表れたのは
嬉しいことです。
しかし一方で
「声が小さくなったね」
いつもお世話になっているPAのかたに言われました。
ギクッ
長きに渡り私の声の大きさを数値で把握しているかたが言うのですから間違いありません。
そりゃそうなのです。
これまで、90から100%の間の大声を出さなければ自分に聞こえなかったのが、
50から80あたりで抑揚を意識するようになったのですから。
これは自慢なので心して読んでほしいのですが
私の声帯って
歌手・役者御用達耳鼻咽喉科の先生3人からは
「良いの持ってるね〜」
「こんな声帯見れるから医者やっててよかった」
個人的に「ボイトレの神」と私淑している某先生からは
「F1用のエンジンを積んでるようなものですね」
と評していただきました。
(えっもしかして挨拶的な定型文だったりする?)
そんな私のゴッツい喉が
モナコの市街地ならぬ京の碁盤の目を隈無く走るようなコントロールを目指すわけですからそりゃ大変なのです。
それにしても
長いことヘヴィメタル、ハードロックという音楽の
爆音こそ正義
汝声量モンスターたれ
という爆音マッチョイズム環境に適応すべく苦心してきた者として
声が小さくなるのは如何なものか。
悩ましい事です。
私は古い人間ですやさかい
ほんまはイヤモニなんてせんでよければせんほうがいいと思っているのです。
ステゴロでいきたいんです本当は。
しかし声量モンスターにはどう頑張ってもなれないし
あまつさえイヤモニをするようになった自分のことを
ちょっとズルいと思っています。
ツールドフランスに電動アシスト自転車で参戦するような。
あくまでも「私のくせに!」という意味でありイヤモニ使用を否定するものではありません。
いや本当に、心の底から
イヤモニに救われた…
と思うのも事実。
適切にモニターできる環境(レコーディングやリハーサル)では普通に歌えるのに
ライブとなると聴こえなくなって
それで音程が悪くなるって
本当に耐えられない屈辱感でしたから。
折からの配信流行りの中で
ライブが毎回のようにレコーディングされ配信される
リアルタイムのみならずアーカイブで生き恥を追い晒ししているようなものです。
それでも
前編でも書きましたように
楽器演奏者の方に音を下げてほしいとは言いたくないのです。
歌と演奏、ではなく
全パートが闘いせめぎ合いつくり上げる
そういう音楽を愛しているんだから仕方がないのです(かっこいい)
つまらん結論
さてイヤモニ使用最新履歴である2023年1月のライブ
「ワタシどうやって歌ってましたっけ?」
となる症状が顕著に表れていた曲のある部分がこの日はツルッと成功していました。
なんならこの10年で一番上手くいったかもしれません、そこだけは(笑)
やっとイヤモニをした上での喉のコントロールが
6回目か7回目にして少しは体得出来てきたということかもしれません。
危険を感じて中止した生兵法トレーニングも
じつは良い影響があったのかもしれないと思うところもあります。
逆に
ちゃんと聞こえてるのになんで失敗してるんや!!!
と自分を責める度合いもキツくなっています。苦笑
なんだかんだ言っても
トライ&エラーでアジャストしていくしかないのですよね。
ほんと当たり前すぎてつまらん結論ですけども。
イヤモニに興味あるかたにとって参考になるかはわかりませんが
話してみたかった事を書かせていただきました。
あーわかる!
いやーそんなことねーよ?
うーんやめとこうかな…
えー使ってみたい!
おーいもっといいやり方があるぞ
ご感想を聞かせてもらえたら嬉しいです。
拙文をここまでお読みいただき心から感謝します。
ありがとうございました!
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