としまえんフィッシングエリアは釣りマニアにも初めて釣竿を持つ人にも最高だったって話

2020年8月31日、遊園地「としまえん」は94年間に渡る歴史に幕を下ろしました。noteでも多くの方が #としまえん のハッシュタグがついた記事で思い出を語っています。

わたしもポツポツとではありますが、としまえんに10年間通い続けていました。ただし乗り物には乗らず、プールでも泳がず、コスプレも(これは機会があればやってみたかったですけど)していません。ではなんのためにとしまえんを訪れていたのかーーここまで書けば皆さまお気づきでしょう、釣りのためです! 「としまえんフィッシングエリア」は東京の釣り人、とりわけ23区で働くサラリーマンアングラーたちにとって最高の遊び場でした。このポストではとしまえんフィッシングエリア(以下としまえんFA)についての極私的な思い出を記しつつ、ここがいかに素晴らしい釣り場だったかということと、今までとしまえんFAが存在してくれたことへの感謝を述べたいと思います。

わたしが初めてとしまえんFAを訪れたのは、2010年11月29日。「流れるプールで釣りができるヘンテコスポットがあるらしい」ということをネットの記事で知り、当時住んでいた足立区の舎人から自転車で15kmの道のりを漕いでいきました。釣り人たちがプールに向かって真剣な表情でルアーを投げているという不思議な光景を目の当たりにして、このギャップは面白いぞ!と興奮した記憶があります。匹数までは覚えていませんが、確かスプーンかミノーで小さなニジマスを釣り上げました。余談ですが、ひとりで遊園地を訪れたのもこれが生まれて初めてでしたね。

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▲2010年秋のとしまえんフィッシングエリア。昭和時代の写真みたいですが、当時凝っていた古いフィルムカメラで撮影したせいです。

わたしはここ10年以上ずっと都内でサラリーマンをしているのですが、同じ場所に住んでいると飽きるので&2016年に生まれた息子の成長に合わせて何度か引っ越しをしています。としまえんFAからは近くなったり遠くなったりでしたが、それでも毎年秋口になると行かずにはいられませんでした。2017年からは多摩川のすぐそばに住んでいますので、ニジマスが釣れる管理釣り場というだけなら王禅寺のベリーパークという選択肢もあります。けれど、としまえんFAにはここでしか釣れない"練馬サーモン"が棲んでいますから!

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▲練馬サーモン。この個体は60cm程度ですが、80cmを超える大物も。

としまえんFAの代名詞ともいえる練馬サーモンはニジマスの三倍体ですが、その身は"サーモン"の名を持つに相応しい、美しいオレンジ色の赤身です。ニジマスの改良種かつ赤身の魚というと"ヤシオマス"が思い浮かびますが、練馬サーモンはヤシオマスよりもずっと"サーモン"らしい味がする……ような気がします(笑)。また、顔つきはニジマスそのものですがサイズは圧倒的に大きく、釣れればまず50cmを下回ることはありませんでした。そんな魚がニジマス同様ルアーやフライで狙えるとあって、としまえんFAきっての人気魚でした。

ただし、練馬サーモンはとしまえんFAのどこでも狙えるというわけではありません。としまえんFAは、以下の3つのエリアに大きく区分けされるのですが、

・アマゾンエリア:流れるプール。エリア内にルアー、フライ、エサ釣りそれぞれの専用区画が設けられていた。
・ナイアガラエリア:小さな滝がある止水のプール。ルアー専用。
・ミシガンエリア:波のプール(※釣り場として営業している期間は止水だが、噴水が稼働していて常時水は動いている)。中央からそれぞれルアー・フライ専用区画に二分割。

このうち、練馬サーモンが狙って釣れたのはミシガンエリアだけです。その他のエリアにも少数の練馬サーモンは放流されていましたが、ニジマスや他のトラウト類と意図的に釣り分けることはほぼ不可能でした。

ミシガン

▲ミシガンエリアでは長靴を履き、水中に立ち込んで釣りをするのが常道。

したがって、大物を求める釣り人たちはミシガンエリアに集結します。そして自慢のルアーやらフライやらを狭い区間に寄ってたかって叩き込むため、シーズンが始まって間も無く、練馬サーモンはスレっからしの高IQ魚となってしまいます。もちろん定期的に追加放流は行われますが、水に放たれてから一両日も経たないうちに、普通にルアーを投げただけでは見向きもしないほどの知能を身につけるのです。

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▲ふたつ上の写真がbefore、この写真がafter。一匹でこれだけ楽しめます。

そんな魚をあの手この手でだまして釣り上げるのが、ルアー・フライフィッシングの醍醐味です。わたしはソルトウォーター用のシンキングペンシルなど、あまり周囲の釣り人が使用しないルアーを選ぶようにしていました。その他にもペレット(養殖魚向けのエサ)が沈む様子を再現するかのようにルアーを上下に動かしたり、極端な速巻き/遅巻きで反射的に口を使わせたりなど、各人が工夫を凝らして練馬サーモンをゲットするべく奮闘していたのです。練馬サーモンを釣り上げると、スタッフさんが写真を撮ってブログに載せてくれるのも嬉しかったですね。

さてさて、練馬サーモンについて熱く語ってしまいましたが、としまえんFAが最高なのは釣りマニア垂涎の魚が棲んでいるからーーだけではありません! 先ほど記した3つのエリアのうち、ミシガンエリア以外のふたつは初心者でも楽しく釣りができました。特にアマゾンエリアにはエサ釣り専用区画もあり、はじめから糸と針が結ばれているレンタルの竿を使って誰でもお手軽にニジマスを釣ることができたんです。また、ナイアガラエリアは水深が浅いので常にニジマスが泳いでいる様子が見えており、釣りに慣れていない初心者でも「あの目の前を泳いでいる魚を釣るぞ!」とモチベーションを保ってルアーを投げ続けることができました……うーんなんだか全部過去形で書かなきゃいけないのが悲しくなってきましたね……。

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▲アマゾンエリア。手前にいる息子は飽きてしまってiPadを見ていますが…。

そうそう、としまえんFAには魚焼き場もあったんですよ。ルアー・フライフィッシング愛好家のなかにはキャッチ&リリースを信条とする人も少なくありませんが、やっぱり「自分で釣った魚を食べる」ことこそ釣りの楽しみ!という人も多いでしょう。ファミリーや友人知人とのレジャーとして釣りをするならなおさらです。としまえんFAはその辺りの需要をしっかりと汲み取っており、手ぶらで訪れても魚をさばいて串に刺し、塩焼きにして食べるための道具一式を借りることができました。なので釣りをしない人は一緒に来た人がフィッシングを楽しんでいる間遊園地で遊んでいて、釣れた魚を料理するタイミングで合流する、なんてことも可能だったのです。ディープな釣り人から完全なる初心者、果ては釣りに興味のない人まで万人が楽しめる管理釣り場ーーそれがとしまえんFAでした。

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▲雨の日は焼いたニジマスをレストハウス内で食べさせてくれました。

としまえんの閉園に伴い、としまえんFAも10年間の歴史に幕を下ろすこととなりました。わたしのような都心在住の釣り人にとって最高のオアシスだったとしまえんFAが無くなってしまうのは大変悲しいことですが、ここでの思い出は永遠に色褪せません。オープンから10thシーズンまで、ルアーで・フライで・エサ釣りで、日中に・夜間に、ニジマスを・アマゴを・練馬サーモンをーーそれぞれに独特の釣趣がある、様々な釣りを堪能しました。

運営スタッフの皆さまと、としまえんFAに棲んでいた全ての魚たちに最大の感謝を捧げます。今まで本当にありがとうございました! またいつか出会える日を、今から心待ちにしております。

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オイル煮

▲2019年10月24日に釣ったニジマス。筆者にとって、としまえんFAで最後に出会った魚となりました。1枚目が釣れた直後で、2枚目が帰宅してからの様子(南無三…)。練馬サーモン以外の魚はわずかに川魚臭がしたので、鷹の爪とニンニクを効かせたオイル煮が最高でした。

【2021年1月3日追記】
なんとなんと、としまえんの魚たちが西武園の流れるプールに移動されました! もちろん練馬サーモンも健在です。経営者の方に大感謝!というわけで2021年の初釣りとして早速出かけてきましたよ。かなりのハイプレッシャーでしたが、マラブーの中層リトリーブでなんとか2匹ゲット! ルアータックルとフライタックルの両方を持参したのが正解でした。足場が安定しているので、子連れでも楽しめる釣り場ですね。

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