ｻﾝｻｲﾃﾞｽ🐣💕（2530文字）
こんにちは。
がーこ🐥です。
あひるのメスです。ｻﾝｻｲﾃﾞｽ。
ｻﾝｻｲﾃﾞｽって早口でごまかしたのは、ほんとは25才だからです。
人間の世界に落っこちてきて25年になります。
どこから落ちてきたかというと、あひるランドからです。
あひるランドは空の上にあるのです。
ある日、ランドのはしっこから下をのぞいていたら、足をすべらせて落っこちちゃったのでした。
気がつくと、人間の世界にいました。
にぎやかで、ちょっと楽しそうなところだったので、しばらくここで暮らそうかなって思いました。
あひるランドでの１日が人間の世界では１年なのです。
だから、
「３ヶ月かそのくらいこっちにいるわね」
ってランドのパパママに電話しました。
ランドの３ヶ月は、人間の世界でいう90年くらい。
「３ヶ月も留守にするなんて」
ってランドクイーンのママには呆れられちゃったんだけど、
「まあまあいいじゃないか、プリンセスの人間界修行を見守ってあげようよ」
ってランドキングのパパが言ってくれたので、こっちにいられることになりました。
言い忘れてたけど、わたし、あひるランドのお姫さまだったんです。
でも人間界ではぬいぐるみのふりをしています。
なぜかというと、生きているあひるだって人間にバレるとたいへんなことになるからです。
「いいかい？ がーちゃん」
って木こりさんが電話で教えてくれました。
木こりさんは、あひるランドの森に住んでいて、あひるたちのお世話をしてくれている仲間です。
「人間界では、ほんとうのあひるだってバレたらダメだよ。バレたらランドに帰らなきゃいけないってきまりがあるんだ。でもね、家族にだけはバレても大丈夫。そういうきまりもちゃんとあるのさ。だからね、がーちゃんは人間界で、すてきな家族をつくりなさいね」
(家族かあ……)
だなんて思いをめぐらして、ふと気がつくと博品館のぬいぐるみコーナーにぶら下がっていました。
(ちょうどいいわね)
と思いました。
(ここでおとなしくして、誰かに買ってもらえるのを待ちましょう。その人に家族になってもらいましょう💕)
どきどきしながら待ちました。
でも、誰も買ってくれません。
いちばん前にぶら下がっているマスコットが買われて、つぎに２番目のマスコットが買われて……、
(いよいよわたしの番ね)
って緊張したのだけど、やがてやってきたお客さまは、わたしを手に取り、わたしの顔を眺めて、それからわたしを戻して、わたしより後ろにぶら下がっていた子を買いました。
つぎのお客さまも、またつぎのお客さまもわたしを買ってはくれませんでした。
やがてお店のお姉さんが来て、わたしを手に取り、わたしを眺めて、少し迷い、それからわたしを、列のいちばん後ろにぶら下げ直しました。
なぜかっていうと、わたしがコセイテキなあひるだったから。
コセイテキ、っていうのは、パパが……、あ、ここでいうパパは、あひるランドのパパじゃなくって、人間のパパ、あひろって名前でnoteを書いてるパパのことなんだけど、そのパパがあとから言ったことなんです。
「がーちゃんは規格外のあひるだからね、大量生産されたマスコットさんたちとは違って個性的なんだよ」
ってあひろパパは言いました。
キカクガイ？
タイリョウセイサン？
コセイテキ？
わたしにはちょっと難しかったけど、要するに、わたしの片方の目が、少しだけ上にずれて接着されていて、だから、ほんとうなら隠されていなきゃいけない縫い目が見えちゃってるってことらしいのだけど、それが理由でわたしは売れ残っていて……。
(もうダメだ)
って思いました。
(わたしを家族にしてくれる人はいない。あひるランドに連れ戻されちゃう……？)
そのときです。列のいちばん後ろにいるわたしに手が伸びました。
「え？ その子は目がずれてるじゃん？」
って聞こえました。
どんぐりみたいな瞳が、わたしを、じっと見ていました。
「この子にするよ！」
ってどんぐりな目の下の、あひるのクチバシみたいな口が言いました。
ママとの出会いでした。
りーこという名前でnoteを書いているママです。
目がずれてるじゃん、ってママは、一緒に買い物をしていた友だちに言われたんだけど、誰にも買ってもらえなかったらかわいそうだって思ってわたしを買ってくれたのだそうです。
助けられてわたしはママのむすめになりました。
ご飯のときも、寝るときも、旅行に行くときもママと一緒でした。
それからママは、パパと結婚しました。
わたしに人間のパパができました（あひろです）。
パパママとわたしはいろんなところに行きました。
エーゲ海の船にも一緒にのったし、ウブドの森のお風呂にも一緒に入りました。
仲間もたくさんできましたよ。
『居酒屋すく』を経営している「すく」や、
漢方医をしている「ウィッシュ先生」、歌の好きな「ぴよちゃん」や天気予報士の「ぷる」、ほかにもたくさんの仲間にかこまれてわたしは、しあわせなあひるになりました。
あひるランドにはまだまだ帰らないつもりです。
こっちでは25年が経っているけど、ランドではまだひと月も経っていません。
いつの日か、今のパパママが天国に召されるとき、わたしはパパママをあひるランドに招待するつもりでいます。
天国は、その人の望む世界です。だからパパママがあひるランドを天国だって思ったらそこが天国なんです。
わたしはまだまだパパママの子供でいたいです。
だからドラちゃんと結婚して、
ペンちゃんっていう子供もできたのだけど、
25才だっていうのをごまかして、早口で、
「ｻﾝｻｲﾃﾞｽ！」
とか言っちゃいます。
永遠のｻﾝｻｲでいたら、永久にパパママと家族でいられるかなって。
キングとクイーンのパパママも、最近では、
「それもまあいいかもね」
とか言っています。
――んで、さあて、今日はクリスマス⛄🎄✨！
パパママや仲間たちと思うぞんぶんジングルしちゃいまあああすつ🎅🎁✨！
ｻﾝｻｲﾃﾞｽ！
文庫本を買わせていただきます😀！