カレー好きなら知っておきべき2500円越えレトルトカレー1選
木箱が届いた。
人類がテンション上がる箱ランキング2位である木箱を前に、厳かな気持ちになる。脳内のBGMは月光だ。
I am Gods Child.
木箱が届くなんて、自分はもしかしたら神なんじゃなかろうか?
少し目を細めて遠くを見つめた。ちがう、I am Gods Child.
ぐれーねこ「にゃー(How do I live on such a field?)」
おれ「にゃー(きみにもわかるんだね、木箱の良さが。)」
ぐれーねこ「にゃー(こんなもののために生まれたんじゃない)」
パカッ。
山西牧場三右衛門カレー(4個10,000円)
1個2,500円
くろねこ「にゃー(こんなもののために生まれたんじゃない)」
くろねこ「にゃー(この箱…ネコ属が無視できない大きさ肌触り…)」
完璧なレトルトカレーなどといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。
六月にデートした女の子とはまるで話があわなかった。
僕が南極について話している時、彼女はレトルトカレーのことを考えていた。
レトルトカレーの目的は自己表現にあるのではなく、自己変革にある。
エゴの拡大にではなく、縮小にある。分析にではなく、包括にある。
僕はなんだか自分がレトルトカレーにでもなってしまったような気がしたものだった。
誰も僕を責めるわけではないし、誰も僕を憎んでいるわけではない。
それでもみんなは僕を避け、どこかで偶然顔をあわせてももっともらしい理由を見つけてはすぐに姿を消すようになった。
泣いたのは本当に久し振りだった。
でもね、いいかい、君に同情して泣いたわけじゃないんだ。
僕の言いたいのはこういうことなんだ。一度しか言わないからよく聞いておいてくれよ。
色は深く濃い茶色にオイルの波紋が広がっている。何かにつけて物事を分類したがるひとがいるのはわかるかい?そう、僕のことだ。このカレーとおぼしきもの、いやもしかしたらカレーに見えているのは僕だけなのかもしれないが、琥珀色の液体を古ぼけた映画に出てくるロケットの様に銀色をしたスプーンですくいあげてみる。
日本風にアレンジされたスパイスカレーだ
ひとしきり目で楽しんだ後に僕はそっと目を閉じた。けれども、カレーが見えなくなったのでゆっくりと目をあけた。
僕もハンバーグは嫌いじゃないがレトルトカレーに入ったものは苦手だ。しかし、銀色に光るスプーンの先端がそれに触れた時に、右手の中指と人差し指に伝わる感触から僕は大変な勘違いをしてしまっていたことに気が付いた。
僕らがハンバーグだと思い込んでいた大きなものは、塊肉だった。スプーンで一口大に切り分けて、琥珀色をした艶かしく光る液体と共にスプーンでそっと口へ流し込んだ。
舌にあたるなめらかな食感と口腔内に広がる玉ねぎの香り、少し遅れてカレー特有の深いスパイス類。上顎にあたる「それ」を噛み締めると、口中に広がるほろほろとした豚の甘み。噛むごとに丁寧にソテーされたであろう玉ねぎが口の中で主張する。コク深さ、甘み、渋み、辛味、塩み、噛み締めるごとに広がる口福感、鼻から抜けるオイリーなスパイスの香り。
ルーだけをすくって口へ運び、目をつぶって幸せを噛み締める。
僕は深いため息をついて、何かに気が付いてしまった時にする口角を上にあげる仕草をして、銀色のスプーンを置いた。
1つ2,500円のレトルトカレーは、豚塊肉カレーに見せかけた、深いオニオンローステッドカレーだった。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?