見出し画像

日本の街は“道路”ではなく“川”で出来ていた -荒川区景観まちづくり塾2022 〈第1回講座〉-

荒川区景観まちづくり推進委員、委員長の山本です。
このnoteでは、私たちの委員会による景観まちづくり活動について記しています。
今回は、2022年9月3日に開催された荒川区景観まちづくり塾2022〈第1回講座〉について。


2022年度より第2期としてリスタートした景観まちづくり塾。
テーマも新たに「水×景観」となりました。
募集チラシはこちら。

「隅田川」「暗渠」の2つを題材に、荒川区内の「水×景観」を探求する全6回のプログラムです。

今回は、その第1回目の講座ということで、基調講演とガイダンスを中心とした内容になっています。


1. 基調講演

まずは、当塾塾長の篠原修先生による基調講演。
「日本の都市の素質を考える」と題して、日本の街がどのようにつくられてきたかについてのお話です。

江戸時代、江戸の街では船を使った物流が盛んで、地方から食料や材木などさまざまなものが持ち込まれました。設けられた堀割は物流だけでなく、攻め込まれないための防御、また排水インフラや防火など、さまざまな役割を担っていました。

篠原修塾長

そして明治時代。アジア各国が植民地として支配されていく中で、日本は工業化・軍備拡大を目指していきます。その中で、新橋ー横浜を皮切りに、物流をより速い鉄道に切り替えました。

重要なインフラが河川から鉄道・道路に変わったことを受けて、明治29年に河川法を制定。これまでの物流を考慮した低水工事から、洪水時の治水対策を中心とした高水工事を中心とした内容に。
これにより、街にとっての川の価値が「役に立つもの」から、洪水を引き起こしてしまう「迷惑なもの」に一転。

こうして現代の鉄道・道路中心のまちづくりが出来上がっていきます。

日本のまちづくりの基本は、“道路”ではなく“河川”だった。
まちづくりにとっていかに河川が重要か、そして現在各地で起こる河川氾濫の根っこにはどういう問題があるのか。
僕もお話を伺いながら、いま改めて水に注目して街を見つめ直すことの意味を考えていました。


2. 荒川区景観まちづくり塾の取り組み

次に、初めての参加者もたくさんいらっしゃるということで、当塾についてご説明。体制やこれまでの歩みをご紹介しながら、皆んなで目的を共有していきます。

2016年より始まった荒川区景観まちづくり塾
区民らからなる推進委員会が主体となり、産官民学が一体となって開催

当塾の目的は「荒川区らしい景観ってなんだろう」を探ること。
この簡単なようで難しい問いに、単に運営側が答えを提示していくのではなく、塾生の皆さんと一緒に考え、探っていきます。

変わりゆく街にあって、荒川区らしいまちづくりを目指したい

また、当塾講師の日本大学理工学部まちづくり工学科の岡田智秀教授からもこれまでの活動についてご報告いただきました。
「〇〇 × 景観」として、テーマごとに荒川区を再発見していくことで荒川風物資産を採集する。結果、荒川区らしい景観に繋がる。岡田先生、および研究室の学生さんには学術的側面からサポートいただいています。

岡田智秀講師
「〇〇×景観」から見つける荒川区らしい景観

2016年から続く荒川区景観まちづくり塾。
ここではこのような簡単なご説明に留めますが、これまでの活動などはまた改めて別のnoteにてお伝えしようと思います。


3. OB活動報告「あらかわ 防災×景観 かるた」

続いて、高上旭 委員からこれまでの卒業生がどのような取り組みをしているか、事例報告。

第1期のテーマ「防災×景観」にて採集した荒川風物資産をもとに、子供からお年寄りまで楽しみながら学べるツール「あらかわ 防災×景観 かるた」をつくるOBチームの活動をご紹介しました。

このかるたは当時の塾生から提案があり、塾のグループワークとして活動が始まったものです。その後、OBとして卒業した後も区内各所で展示会を開くなど活動を続けています。

今回の塾生の皆さんも学びながら仲間をつくり、卒業後、それぞれの活動に繋げてもらえると嬉しく思います。

私たち運営をしている推進委員も、もとは塾生からスタートした人がほとんど。
趣味として、仕事として、ボランティアとして。
どんな形であれ、それぞれのまちづくりに活かすことができるよう私たちもサポートしていきます。


4. ガイダンス

そして、いよいよ今年度の活動について。
今回テーマに「水×景観」を選んだのにはいくつか理由があります。

まず、荒川区では荒川区景観計画の中で3つの景観基本軸を定めていて、そのうちの一つが隅田川景観軸であること。

また、隅田川沿いでカミソリ堤防からスーパー堤防への置き換えが進み、宮前公園をはじめ、たくさんの親水空間が整備されているというタイムリーな話題であることも理由の一つです。

ということで、プログラムは、以下の通り。
第2、3回講座は「隅田川」を題材に講座&体験ツアー。
第4、5回講座は「暗渠」を題材に講座&体験ツアー。
まずは座学で学び、学びを携えて街に繰り出す、これをセットにした講座です。

それぞれの体験ツアーでは、「体験ツアーを通じて、あなたが発見した〈水×景観〉を教えてください」という宿題を提出していただきます。
それぞれの視点で発見したものを、互いに教え合うことで街の面白さを共有するためのツールです。

そして、最終講座ではこちらの宿題をもとに意見発表会を開催。
みんなで発見した「水×景観」から荒川区らしい景観を炙り出していきます。

このように2022年度はインプットに重きを置きながら、街を再発見。
2023年度にはこれらのインプットをもとに、直接まちづくりへアプローチするようなグループワークを行うことで、卒業後の活動に繋げていくという、複数年でのプログラムを予定しています。


5. 参加者によるひとこと自己紹介

ということで、初回ということもあり長々と説明が続いてしまいましたが、少しでも皆さんのお声をお聞きしたいということで、塾生の皆さんに一言ずつ自己紹介していただきました。

今年度の塾生は計36名。
テーマが変わったこともあり、継続してのご参加という方だけでなく、今回初めてという方もたくさんいらっしゃいました。
また、すでにまちづくり活動されている方々もいて、僕たち委員もたくさん学ばせていただければと思っています。


6. あらかわ遊園視察 

そして本日最後のプログラム。会場のすぐ近く、リニューアルオープンしたばかりのあらかわ遊園へ。
隅田川沿いにつくられた区立の遊園地ということで、ここも水に関連するスポットです。

まずは遊園に接して設けられるスーパー堤防の工事現場を視察。
緩やかな丘がどのようにしてできているのか見学しました。

そして、観覧車に乗り、上から街の様子を眺めます。

遊園の歴史を紐解くと、隅田川の水を引き込んで作られた大きな池があったそうですが、現在の遊園内にも釣り場や池、プールなどたくさんの水関連スポットを見つけることができました。

と、視察を終えたところで第1回の講座は終了です。


コロナ禍により3年ぶりの開講ということで、たくさんの不安がありましたが、それでも定員を上回るお申し込みがあったこと、そして当日には会場で、オンラインで、たくさんの方にお会いできたことが何より嬉しかったです。

会場の大きさの都合により、オンライン参加に回っていただいた方には冒頭からマイクトラブルもあり、ご迷惑をおかけしてしまいました。そんな中でも参加者同士でフォローいただきながら、なんとか1回目を終えることができました。みなさま、ありがとうございました。

何はともあれ、新しいテーマ「水×景観」、スタートです。


第2回は隅田川についての講義。
隅田川の担当は原澤優介 委員と大野整 委員。
ゲスト講師に東京都と荒川区の担当者をお招きし、座学で隅田川や、川と荒川区の関わりについて学んでいきます。


荒川区景観まちづくり推進委員 委員長 山本展久




荒川区景観まちづくり塾 2022 〈第1回講座〉
・内容:開講式 + 基調講演
・日時:2022年9月3日(土曜日) 13時〜
・場所:あらかわ遊園スポーツハウス会議室(東京都荒川区西尾久8丁目3−1)
・講師:篠原修氏(GSデザイン会議代表・東京大学名誉教授・荒川区景観まちづくり塾塾長)、岡田智秀氏(日本大学理工学部まちづくり工学科教授・荒川区景観まちづくり塾講師)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?