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生成AIでデータアナリストはなくなるのか

どうも、です。先日、社内でトークセッション的なイベントに登壇しまして。そこで話したこと、話しきれなかったことなんぞを垂れ流そうと思います。

この記事に書いてあることは概ねこんな感じです。

  • 生成AIに限らず、技術の進歩によって非データアナリストのデータ利活用は進んでいる

  • データアナリストの仕事においても、データの集計、可視化などの作業はかなり簡略化・効率化していくことが予測される

  • データアナリストはより戦略に近い立場と、データ活用をトータルプロデュースする立場のいずれかになっていくのではないか

  • なくなるかどうかでビビるよりは、なくす方の仕事しようぜ

です。だいたい言いたいことは言ったのであとはゆるく書いていきます。

非データアナリストのデータ利活用はどんどん進んでいる

データ分析の歴史

前回の記事でも一瞬触れましたが、ビジネスの世界でデータ利活用、というのが多く言われるようになったのは、2011-12年頃の、ビッグデータブーム以降と思われます。

ぱっと調べた限り、2012年の5月にNHKのクローズアップ現代で「社会を変えるビッグデータ革命」という特集が組まれたようですが、他にも日経XTECHではこんな記載がありました。

IT業界では数年に1度、「バズワード」といわれる流行り言葉が生まれる。ここ数年は、「クラウド」一色だった感があるが、2011年後半から2012年にかけてのそれは「ビッグデータ」で決まりだろう。

で、2012年10月には我々をセクシーにしたあの記事、Data Scientist: The Sexiest Job of the 21st CenturyがHBRで発表されて、加熱するわけです。

データ分析の今

で、次の項目で詳細を話すのですが、データ分析の仕事ってここ数年で随分進化したなあと思います。細かいツールを挙げるとキリがないわけですが、分析ツールというのは随分増えたわけです。

その中で、非分析官向けのツールというものも随分増えて、例えばBIツールだったり、ダッシュボード系のツールなんかがそうですね。Google Analyticsみたいな、web解析ツールなんかもそうだと思います。要は、プログラムを書かなくてもUI上でデータをポチポチできるツール、ですね。

「データアナリスト」と(か、それに類似した職種名で)呼ばれる人たちの仕事の多くが、こういったダッシュボードづくりみたいな、自分が分析するためのデータづくりではなくて、他人のためのデータづくりをしてるんじゃないかなーと思います。

私も数年前に、非データアナリスト向けの分析ツールというやつを企画開発して商品化した事もありますが。こういった形で、非分析官がデータを分析するようになる、というのは、ツールが整えば整うほど進むものだと思います。

データアナリストの仕事はどんどん効率化している

で、先程の話に戻ります。データサイエンティストがセクシーになってから10年が経ち、ChatGPTでまた「データ分析」というものは進化しようとしているわけですが。この10年、ChatGPT以前からデータアナリストのしごとも随分効率化してきたなあと思うわけです。

たとえば、私が入社した当時2013年を思い出すと、ようやく前年にHadoopの導入がされた頃で、Hiveすらも無い、JavaでMapperとReducerを書いてデータ集計をする、という世界だったんですよね。

その後HIVEのv1.0がリリースされたのって2015年なんですよね。それまではSQLでビッグデータを集計する、ということすら、ようやく今黎明期を抜け出したくらいと言っても良いと思います。(Pigもほぼ同時期に使われるようになったのかな、こちらはメジャーバージョン出る前に開発止まってますが・・・BigQueryはローンチが2011年なんでもうちょい早いんですね、割とGCPは後発なイメージがあるんですがどうなのでしょう。詳しい人は解説してください。)

というわけで、DWHにSQL投げて巨大なデータを分析する/できるようになってからまだ10年経ってない、というのが肌感ですが。Jupyter projectの設立が2015年、AWS SageMakerのリリースが2017年、Google colabがほぼ同時期くらい?みたいな感じで、こういうデータ分析する人向けのサービスが整ってきたのがここ5年位かなあと。

最近のトレンド的には、GCPの発表見ててもAWSの発表見てても、もっぱらAIでより簡単に、みたいな方向ですし、もうちょいこういったツール群も進化することでしょう。

既にデータ分析周辺の仕事で起きていること

少なくともChatGPT以降、データ分析にまつわる仕事もまあまあ変化してるなあという感覚があります。

SQLを書くという作業の価値は下がる

少なくとも現在すでに、text to SQLとか、text to DashBoardみたいな形の、「生成AIでデータ集計を自動化してやろうぜ」という世界は来ているみたいです。ChatGPTにコーディングまかせようぜ、というのは結構やってる人いると思うのですが、同様にSQLも当然GPTに書かせること自体はそんなに難しくないです。

実際はSQLの構文というよりは、データの中身だったりテーブル構造だったり、そういった情報が無いと適したSQLは書けないものなので、相対的に「SQLを書ける」という能力の価値は下がり、データベース設計やデータマネジメントといった領域の価値が上がりそうです。

「ビジネスに必要なデータを得るためにSQLを書く」という作業自体はそんなに難しくなくAIでもできるはずですが、実際のところ「スキル」として身につけるためにはエラーハンドリングに悩まされて心が折れる経験を乗り越える必要があるもので、ここをAIがどれだけクリアしてくるか?はまだ未知数だなあというところです。

いずれにせよ、この辺の「エラーハンドリングで心が折れる問題」というのはデータマネジメントがきっちりしていけばかなり解決する部分も多い気がするので、まあまあSQLが書ける、というスキルそのものの価値は下がるんじゃないかなあと。

データをそれっぽく解釈するところもAIでやってくれる

データを見てそれっぽい考察をつける、という部分についてはGPTで結構できることが最近わかってきました。

実際のところ、質の高いアナリストのアウトプットには当然及ばないのですが、まあアナリストが手をつけられないような小さい分析案件に対してとりあえずAIでそれっぽいこと言わせてみる、というのは結構有効です。

実際のところ、データ分析をより多くの人に提供しようと思うと、1つ目がデータ集計の問題で、2つ目にデータ解釈の問題でつまずくことが多かったのですが、これらは結構解決しそうな勢いです。

(本当は課題を特定する、とか仮説を作る、とか設計をするとか、前提のところで間違った道に進んでることは多いんだけどそんなことに当人は気づけないのでご愛嬌だよ、そんな本質的な話はしてないのさ)

ということで、色んなBIツールとかダッシュボードツールなんかの分析ツールに、こういったデータの”解釈”の機能はある程度実装されるようになってくるんじゃないかなと思います。

どこまでAIができるようになるのか?

では実際、分析プロセスにおけるどこまでをAIがやってくれるようになるのか?というのはまだそんなに見えてないところです。

基本的に「分析」には「ドメイン知識が必要だ」って言われる事は多いですが、この「ドメイン知識」的なものをAIは持ってないです。せいぜい一般論的なものが限界です。

例えば事業分析であれば、最新の自社の情報と他社の情報を相対的に比較しながら戦略的な意思決定を支える、ということが必要なわけですが、自社がどういう戦略を立ててどう攻めようとしているのか、なんて情報はAIは持っていないし、当然その戦略を実行するにあたって自社にどういう人材がいて、どういう資産があって、という事も知りません。

戦略というのは、自社のアセット知識なくして決められるものでも無いわけですが、こういう知識をAIにどうやって与えていくのか?というのは一つ課題になるんじゃないかなーと思います。

大手企業、上場企業や検討商材を扱っている会社など、比較的インターネット上で情報を集めやすいビジネスと、そうじゃないビジネスでも差が出そうです。

事業分析的な部分ではなく、もっと専門的な、たとえば工場における素材の分析みたいになってくるとGPT的なAIがどうこうできる領域じゃなくなりそうです。

企業内wikiだったり会議のログだったり、そういったものをAIに学習させてより自社に適したAIを作る、という技術は遅かれ早かれ出てくるだろうなあと思いますが、いずれにせよ「ドメイン」の知識がどれだけ求められるか、どれだけAIに事前に覚えさせられるか、によってデータアナリストのしごとはかなり変わってくるんじゃないかなーと思います。

結局データアナリストは失業するのか

掲題の問いに戻ると、私の回答は「失業というよりは名前が変わるんじゃないか」です。

データアナリストの本質的な価値の部分、例えば課題を整理・発見したり、分析できるような環境や、より尤もらしい分析をデザインするスキル、リサーチ設計をするスキルなどを用いた仕事の価値自体は現状あまり減らなそうです。

一方で、上で述べた通り、データをハンドリングしたりダッシュボードを作ったりする部分の比率は徐々に減って、よりストラテジーに近い領域のしごとが増えていく、と。SQLを書かなくなったときに、その人のことを「データアナリスト」と呼ぶのか?というと個人的には疑問です。

そしてもう一つ、これも既に起き始めている事ではあるんですが。ダッシュボードでもなんでも良いんですが、分析ツールを使ってデータをある程度誰でも使えるようになると、確実にデータアナリストへの"依頼"は減っていきます。

こうなってくると、「データアナリストならもっと良い分析ができるのに!」と言ってもそもそもその分析力を発揮する場がなくなってきます。そうなってくると、「依頼を受ける」「依頼待ちの」データアナリストは割と早晩仕事がなくなっていくんですよね。

今後データアナリストはどうなるのか

じゃあどう変化するのか。今後求められるデータアナリストの派生型としては、個人的には下記の2つに集約していくんじゃないかなーと思ってます。

①戦略型アナリスト

いわゆる戦略コンサルなんかにいるタイプだと思いますが。戦略を立てることを目的に、その裏付けとしての分析をするタイプ、ですね。インテリジェンスを導くことに責任を持つ人達。インテリジェンス型とかって名前をつけてもいいかもしれない。

このタイプに重要なのは、あくまで「データ」を分析するのは手段の一つであり、データからはわからない定性的な情報、リサーチなども含めたデータづくりなどをしながら最終的に戦略に与するようなインテリジェンスを生み出すことが求められる人、ですね。

おそらく一人でこれらの情報を集めるというよりは、ある程度組織の中心でチームを組み、戦略組織として機能するほうが良いんじゃないかなとは思いますが。その中でデータ分析"も"行う人達を戦略型アナリストと呼んでみます。今も、活躍しているデータアナリストはこういう立場に結構いるんじゃないかなーと思います。

こちらのタイプは、市場や競合の理解などを含む戦略への深い理解、意思決定者とその人たちを取り巻く環境の理解、戦略実行のためのマネジメントへの理解など、広い視野と高い視座、中長期的な視点などのスキルが求められると思います。幅広い経験が必要ですね。つよい。

②アナリティクスプロデューサー

むしろこれから重要になるのはこっちだと思います。前回の記事でも少し触れたのですが、「分析する」ことよりも、「分析し続ける」ことに責任を持つ、というのがこちらの仕事のイメージです。

データ分析に関わる仕事をしている人の多くが、「そもそもデータを手に入れるまでに時間がかかる」「データの前処理で時間がかかる」といって、分析の"手前側"に時間を取られる経験があると思います。一方で、既に述べたように、データとアナリティクスを取り巻く環境とツールはかなり進歩してきています。今後も進歩していくでしょう。

そういう環境下において、適切なツールを用いて、継続的にデータを出し続ける、より簡便にデータを誰でも使えるようにしていく、という役割が重要になっていくと思います。

実際に、DXを請け負っているような人たちはこういう仕事をやっているケースが多いかもですね。データマネジメントからBIツールの開発まで、組織のデータを適切に集め活用するための道筋を作る、という仕事。

いわゆる「データアナリスト」的なデータをいじって分析して・・・という仕事は、こういった環境づくりにおいても、PoCを繰り返しツールの企画に落とし込む部分で必要になってくるでしょう。データをいじるのが好きな人はこっちを意識したほうが良いと思います。

おわりに

なんやかんやダラダラと長文をしたためてしまいましたが、おそらくデータアナリストの仕事の在り方は結構変わってくるんじゃないかなーと思ってます。

だからこそ、どちらかというとどう変わるか、にビビりながら仕事をするよりは、目の前のテクノロジーを使って目の前の仕事をいかに変えていくか?という視点でもって、むしろ変える側に回る姿勢が大事だと思います。

データアナリストの仕事が、いつまでにどのくらい変化するか?っていうのは正直わからないですが。今の仕事をなくしてやる、くらいの気持ちで仕事をする方が健全に進歩ができるんじゃないかなーと。

ということで、世の中がどう変わるかはわからんけど、わからんなりにみんなで一緒に足掻きましょう。



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