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不完全を楽しむ① ー家具の作成ー

歯磨き粉の最後を何とか絞り出すも、歯磨きに着けようとした瞬間にヒュッと引っ込む事にチューブの限界を感じてしまった今日は。
#他にないんかい
#令和だぜ

過去の施工例について。
施工例と言ってもリフォームやリノベーションではなく、家具を作成した時のお話と、この仕事を通して得た気づきです。


【依頼-解体する家の思い出を残したい-】

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※写真はイメージです。

今から7~8年ほど前。
当時リフォームの工事や設計をしていた私の部署に、ご依頼のお電話がありました。
ご依頼内容は

『取り壊しになる家の思い出を何か残したい』

というものでした。
後日、詳しいお話を伺うために実際に解体される予定のお家へと伺いました。
お依頼主様は70代ぐらいの品のいい女性の方でした。
2年前、ご主人様が病気で亡くなられ、自身も体の調子が悪いことから、家を手放して交通の便のいい市内へと移り住む事にされたそうです。
お子様も県外に出られていることや、新居への費用として40年間家族と共に過ごしたお家を解体して売却することに。

ただ、結婚してから、子供が生まれ、家族みんなで暮らし、お子様が離れた後もご主人様と一緒に過ごした思い出の詰まったお家。

本当なら手放したくないという思いと、大切な場所がなくなってしまう悲しい気持ちと、どうしても心の整理がつかづ、知り合いを通して弊社に相談をされたそうです。



【ご提案】

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早速、家の中に入ってみると、家財はキレイに片づけられ、あとはもぉ取り壊すだけの状態でした。
そのお家の中で、今までの思い出や、家族のこと、家を建てた頃の事などたくさんお話を聞かせて頂きました。

そんなお話を聞きながら改めて家の中を見ると

毎年の大掃除でご主人様が磨くことが恒例だった、欅(ケヤキ)の階段。
お子様の身長を記した跡のある建具。
家族みんなで張り替えていたという障子など
ご家族がここで過ごした時間が透けて見えました。

きっと、家の中にある傷一つ、落書き一つ、汚れ一つをとってもその家族しかわからない素敵なストーリ、思い出があるんだと思います。

最初は柱や梁を切ってもって行きたいと言われていたのですが、その材料を使って家具を作成することをご提案させて頂きました。



【作品①-階段の段板で作った腰かけー】

固い木でソリや曲がりもあったのですが、何とか形になったのは家具職人さんの技術。
お父様がお手入れされていたということで、塗装などは一切しませんでした。

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【作品②-障子を使ったパーテーション-】

障子は破れにくいものに張り替えさせて頂きましたが、障子の姿をなるべく壊さないように作りました。

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【家具をつくるにあたり】

この家具を作成するにあたっては、素材をなるべくそのままの形で使うことに拘り、傷の補修はもちろん、無駄な研磨や塗装を一切しませんでした。
材料を切った小口もそのままです。

肌に触れて、香りをかいで、傷一つ、落書き一つを眺めながら当時の楽しい光景を思い出して頂ければいいなという思いを込めて作成をさせて頂きました。

大切なお家の一部分を材料としてお預かりしていたので、完成してお持ちする時は久しぶりに緊張したのを覚えています。
そして、涙を浮かべながら喜んでくれたお客様の顔も今でもハッキリと覚えています。



【不完全を楽しむ】

この仕事で得た事と気づき・
それはまた次回。

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