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Antec P10Cレビュー ~カスタマイズ必須の玄人向けPCケース~

はじめに

前回の記事でリニューアルしたPCのパーツ構成をまとめました。

今回からはパーツの組み立てから初期設定など、調べてもなかなか見つけることのできなかった情報や、実際に組んでみて気づいたことなど、私がPCを購入する前に知りたかったことをまとめていきたいと思います。

そんなわけでかなりマニアックな内容になるかもしれませんが、ご興味ある方はお付き合いをいただけますと幸いです♬


P10Cを選ぶべき人

基本的なスペックは公式ページをご覧ください。

Antecの最近発売されたミニタワー型静音ケースはP10 Fluxと最新のP10Cの2つがあります。違いはこんな感じ。

  • P10 Fluxはケース上部にUSB-Cがついていない
    →P10CはUSB-C付き

  • P10 Fluxは右側面下部がメッシュ構造=静音性を犠牲にエアフロー重視
    →P10Cは左右ともに全面防音パネル仕様

  • P10 Fluxは逆回転ファンが標準セット

  • P10 Fluxの方が少し値段が安い


つまり、大きなポイントとして、USB-Cが付いてるかどうかと、静音性をとるかエアフローをとるか、の2点でしょうか。

また、ほぼ同じ目的に使用できる製品として、Fractal Desiginの「Pop Silent Solid」もあります。前回の記事で比較含めて紹介しているのでご参照ください。


まとめると、こんな感じ。

  • エアフロー&記憶媒体重視ならP10C(P10 Flux)
    → & カスタマイズの手間を気にされない方

  • 静音性重視ならPop Silent
    → & 面倒なことはしたくないお手軽派の方

ハイエンドのCPUやGPUの搭載を検討している方で静音性も両立させたい方はP10Cを、ミドルクラス以下のCPU・GPUを検討されている方はPop Silentを選べぶのがお勧めです♬

ただ、後述する通り、P10Cを選ぶ場合、ある程度自分でカスタマイズをしてあげるのがお勧めです。もしそういった手間が面倒な場合は組み込むだけで普通に使えるPop Silentの方がお手軽かもしれません。

P10Cを選ぶ場合、ぜひ今回紹介するカスタマイズを行ってください。デフォルトでは使い勝手がかなり悪く、また音も出てしまいがちです。私も色々調べてこの辺りが一番の悩みポイントだったんですが、カスタマイズしたことで問題点がほぼ完ぺきに解決できたので、結果としてはすごくお気に入りのケースとなっています♬

完成!



P10Cでお勧めのカスタマイズ

先ほども書きましたが、P10Cはほぼカスタマイズ必須のちょっとマニアックな方向けのケースです。

もちろんカスタマイズをせずに使うことも可能ですし、それが本来の使い方なんですが、デフォルトで使う場合、以下のような点が気になってくるかもしれません…

  • ケース上部にファンコントロールボタンが付いていて強弱で変えられますが、強弱でしか変えられない上にうるさい自分でスイッチを押さないと切り替わらないので面倒

  • リセットボタンがない

  • PSU上部に設置できるファン(以下「下部ファン」)はせっかくなので取り付けたい

  • 回転数が高くなるとファン取り付け部のパンチ穴からの「ひゅおーん」といった風切り音が発生

もちろんこの辺りが全く気にならないよ!という方であればデフォルトのまま使い続けていただいて問題ありませんし、それでいてこのケースの魅力が落ちるわけではないので、ご安心ください。


ではP10Cで私が実際におこなったカスタマイズをお勧め順に紹介していきます♬

  1. ケースファンはファンハブに繋ぐのではなくマザーボードのファンコネクタに接続
    →マザーボード上からCPU温度やケース内温度と回転数を連動して自動制御が可能に!

  2. 前面ファン3つは「CA-100A」等の分岐ケーブルでまとめてマザーボードに接続
    →前面ファンをマザーボード上から一括して制御可能に!また、配線がすっきり♬

  3. 背面ファンを「NF-S12A」等の静音大風量ファンに交換
    →静音性の向上とエアフローの向上の両立!

  4. ケース上部のファンコントロールボタンから繋がっている2pinをファンコンではなく、マザーボードのリセットピンに接続
    →使わなくなったファンコントロールボタンがリセットボタンに変身!

  5. ケースのUSB3.0はマザーボード下部のヘッダーに接続
    →USB3.0ヘッダピンが2つ付いているマザーボードの場合

  6. PSU上部にファンを移設する場合、防振材をケースとファンの間に挟み込むことで共鳴音を防止
    →専用アイテムでなくとも「激落ちくん」等を三角形にカットしてあげることで対応可能!

  7. BIOSのファンコントロール画面で前面ファンはMAX1200rpm(70%)、下部ファンはMAX1100rpm(60%)を目安にチューニング
    →この辺りの回転数から風切り音が発生…下部ファンはケースに直接設置されていることからくる共鳴音もあるので、許容回転数が少しシビア…

  8. 低温時は前面ファンを50%程度で回すことでケース内を正圧に保ちPC内部の埃の流入を防ぐ
    →日々のメンテナンスを楽にするために♬

  9. 下部ファンは前面ファンより弱くすることでエアフローを阻害しないように。また低温時は回さないことで更なる静音性を追求
    →GPU設置後は低温時も低回転で回すこと推奨!

  10. 「ICYDOCK:MB343SPO」を組み込むことで5インチベイ最大限に活用
    →光学ドライブと3.5インチアイテム(カードリーダーやHDD等)の二刀流!


では1つずつ詳細を見ていきましょう!

1.ケースファンはファンハブに繋ぐのではなく、マザーボードのファンコネクタに接続

せっかく付いているファンハブをいざぎよく取っ払います!取っ払ったファンハブは今後のために念のため取っておきましょう。

副次的なメリットとして、「裏配線がすっきりする」ことが挙げられます。下記が私の実際の裏配線の様子ですが、赤枠で囲った部分にファンハブが付いていました。それを取っ払ったので、ファンの配線も逆にシンプルになり、裏配線がより見た目すっきりになりました♬

ファンハブがあった場所


2.前面ファン3つは「CA-100A」等の分岐ケーブルでまとめて、マザーボードに接続

前面にはファンが3つもあるので、素直にマザーボードにつないでしまうと、端子の数が足りないですし、見た目も悪くなってしまいます。しかーし!分岐ケーブルを使えば配線を1つにまとめられ、とてもすっきりするので、お勧めです♬

上の写真でだと、ちょうどファンハブが付いていた場所の左側にある、3つのクルクルした部分ですね。


3.背面ファンを「NF-S12A」等の静音大風量ファンに交換

P10Cは静音ケースのため、基本は窒息型のケースです。つまり中にこもった熱を排出するために最も重要なのは背面ファンであり、ここはなるべく高回転かつ大風量で回しておきたいところ。
しかしそうなるとケースに付属のファンではどうしても音がうるさく、性能も中途半端です。なので、前面ファンはそのままで妥協するにしても、背面ファンだけを少しこだわるだけで、冷却性やら静音性の満足度をグッと高めることができます!

なお、noctuaの場合、ゴム製の防振マウントが付属しますが、P10Cの場合、ファン取り付け部が「穴」ではなく「縦長の溝」になっているため、素直にねじで止めましょう。


4.ケース上部のファンコントロールボタンから繋がっている2pinをファンコンではなく、マザーボードのリセットピンに接続

1番でファンコンを取っ払ってしまいましたが、そうなるとケース上部の「ファンコントロールボタン」の使い道がなくなってなってしまいます。もったいないですよね。。
でもこのケース、リセットボタンがありません。

というわけで、ファンコンボタンの配線をファンコントローラーではなくマザーボードのリセットピンに繋ぐだけ。
簡単にリセットボタンに変身です♬


5.ケースのUSB3.0はマザーボード下部のヘッダーに接続

私の場合、内部にUSB3.0ピンヘッダが2つあるマザーボードを選んだわけですが、そのうちの1つが下部についており、ちょうどPSU上部に設置予定の下部ファンと干渉しそうな位置関係になっています。

ウェブ上のレビューでは「干渉注意」と書かれていたりするので不安でしたが、結果として、ケースのUSB3.0ケーブルであればぎりぎりで干渉せずに裏配線スペースに引き込むことができました
かなり強引に曲げてしまってますが、今のところ不具合なく快適に使えているので、意外と曲げ耐性は強いのかもですね。

私のようにマザーボード上に2つ付いている方は特に、組み込んだ後にこの作業をするのはかなりしんどいと思われますし、USB3.0ケーブルの材質によってはここまで曲げられないものもあるはずなので、ケースのUSB3.0ケーブルは下部に接続するのがお勧めです。

下部ファンとの干渉を避け、裏配線スペースに捻じ込む!

なお、曲げ過ぎで心配!という方はこんなアイテムもあります。マザーボードによって切り欠きが上側の場合と下側の場合とがあるので、どちらにも対応できるこういう製品を使って逃がしてやれば安心ですね♬


6.PSU上部にファンを移設する場合、防振材をケースとファンの間に挟み込むことで共鳴音を防止

下部ファンを素直に設置してしまうと、PSUを覆うシュラウドカバー全体にファンの振動がそのまま伝わってしまい、激しく共鳴します(^^;
かつ、下部ファンの空気の取り込み口が狭いからかなんなのか、恐らく隙間を風が通る際の風切り音も合わさるようで、かなり不快な音が…

そのため、ファンと接地面との間に緩衝材を挟み込んであげましょう。

下記のように専用品もあります。

もしくは、「激落ちくん」のようなメラミンスポンジが意外と効果的に代用できたりします。
メラミンスポンジを使う場合は専用品でないため、適当な厚さにしたうえで、三角形にハサミでカットし、ファンとケースの間に挟み込み、ネジで強引に貫通させる感じです。
ちなみに私は家中の振動が気になるものに洩れなく激落ちくんを使っており、まさに大活躍しています♬


7.BIOSのファンコントロール画面で前面ファンはMAX1200rpm(70%)、下部ファンはMAX1100rpm(60%)を目安にチューニング

個々の環境でもしかしたら違うかもしれませんが、私の場合、ファンの速度を変えながら音が大きくなるタイミングを探ったところ、前面ファンで1200rpm、下部ファンで1100rpmくらいが境界線のようでした。

そこでその辺り回転数に収まるようにBIOSからファンをチューニングしています。
ちなみにASRockの場合、ファンの回転数の制御方法として2種類があります。

  1. BIOSを使った設定:FAN-Tastic Tuning

  2. OS上からの設定:ASRock Motherboard Utility(A-Tuning)

ASRock Motherboard UtilityはASRockのサイトからダウンロード・インストールください。


私の場合、最初は「A-Tuning」で設定しようと思ったんですが、どうもきちんと設定が保存されなかったり、再起動すると設定が変わってしまったりでよくわからなかったので、BIOSからの設定に落ち着いています。

ただ、設定曲線を見るには便利なので、スクショにだけ活用!
下記のような感じに仕上がりました。

ポイントはこんな感じ。

  • CPUファンは標準設定で

  • 背面ファンは排熱処理の要なのでパフォーマンス設定で

  • 前面ファンはケース内の正圧を保つために常に高めの回転をさせつつ、逆に高温下でも70%(=1200rpm)に収まるように設定

  • 下部ファンはアイドル時に停止させつつ、高温下でも60%(=1100rpm)に収まるように設定

なお、高温については「80度」を一つの目安にしています。
これは改めて違う記事で紹介予定ですが、低電圧化とオーバークロックを組み合わせて最強の現像環境を整えた場合、CPUに連続して最大負荷をかけ続けた場合の最大温度が「88度」だったため、その少し手前から全力で冷やせるように考慮したものです。

ただ、実際の現像環境においてそこまで負荷がかかることはないので、想定以上の負荷がかかった場合の安全マージン的な意味合いとなります。

各ファンの回転数制御まとめ


8.低温時は前面ファンを50%程度で回すことでケース内を正圧に保ちPC内部の埃の流入を防ぐ

これは7番で既に書いたとおりですね!

正圧というのは「圧力が高い状態」です。
空気は「圧力の高いところから低いところ」に流れます。
つまり、ケース内の圧力をケース外の圧力より高い状態に常に保っておくことで、外の埃がケースの隙間からケース内に侵入することを防ぐことができます。

そのために前面ファン×3という強力パワーを使って常に制圧の状態をキープしておけば、たまにする掃除も楽になるというものです♬


9.下部ファンは前面ファンより弱くすることでエアフローを阻害しないように。また低温時は回さないことで更なる静音性を追求

前面ファンは1300rpmを超えるくらいからケース前面のパンチ穴に当たる風切り音が目立つようになります。これを防ぐ場合、「パンチ穴をペンチ等でカット」というドラスティックな方法か、「モルトフィルター等をファンとケースの間に挟み込む」という2パターンが考えられます。ただし確実に風量は弱くなるので、エアフローとの兼ね合いで検討してみてください。

意外にお勧めなのが、「どれか1つのファンにだけフィルターを挟み込む」ことです。私がまさに一番上のファンにだけフィルターを挟み込んでいるのですが、これによって明らかに全体の風切り音を減らすことができました。お陰で全体の回転数も気持ち高めることができました。

専用品も売っています。

もしくは「光」さんのように、汎用フィルターを使うのも手です。光さんのは目が粗い=風量を損ないにくい気がするので良い感じです。私は5mm厚のフィルターをハサミでカットして使っています。こういう形式だと色々な場所に応用できて良きです♬


10.「ICYDOCK:MB343SPO」を組み込むことで5インチベイ最大限に活用

最近のケースでは、5インチベイが2つ付いているなんてほぼ絶滅危惧種です…しかし1つならまだ意外とついているケースを探すこともギリギリ可能です!
そして、写真現像がメインの私としてはやはりカードリーダーは内蔵で搭載したい…できれば光学ドライブも搭載したい…というわがままなお願いをかなえてくれる素敵なアイテムを作ってくれているのがICYDOCKさんです。

ICYDOCK:MB343SPO
Pioneer:BDR-UD03
SkyDigital:SKY-TFe30

PC組み込み時のポイントですが、5インチドライブに複数のアイテムを組み合わせる都合上、どうしても配線が窮屈になりがちです。そのため、先に本製品にカードリーダーと光学ドライブを組み込み、配線も行い、すべて組み終わった後でPCケースに装着するのがお勧めです。

特に私が使っているカードリーダー(SkyDigital:SKY-TFe30)の場合、ペリフェラル電源が必要だったり、そのコードがめちゃ固かったりで途中まで粘って頑張ってみたのですがダメでした(^^;
こんな時ほどフルプラグイン電源でよかったと思うことはありません。

ちなみに本製品には「スリムSATA<->SATA変換ケーブル」がちゃんとついてきます。しかもきちっとはまってくれてすぐには抜けなそうな感じ。なかなかの精度でgoodポイントですね。

また、私の場合、個体差なのかP10Cケースの5インチベイの隙間が、向かって右側のほうが1mm以下のわずかな誤差でほんの少しだけ小さくなっており、本製品の右側のドライブを押さえる爪が引っかかって入れることができませんでした。。
しかしプラスチック製なので指で力を入れて少しだけ凹ませる方向に変形させれば大丈夫でした。よかった!

さらに本来、本製品は手前側左右・奥側左右をケースとねじ止めして固定するはずですが、P10Cの場合、手前側の穴はケースと干渉していて使えません。そのため、奥の左右2本ずつ=4本で固定することになります。
しかしこちらも強めにねじを締めこめばがたつくようなこともなく、快適に使えております!


いかがでしたでしょうか?

自作PCって本当に奥が深いですね…しかしその分、自分のしたいことが完璧に実現できますし、綺麗に組めたときはとっても気持ち良い達成感です♬

RAW現像がメインのPCなんて自作する人はあまり多くないかもしれませんが、もしこれから自作に挑戦される方にとって少しでも参考になれば幸いです。

次回はいよいよPCを起動させ、初期設定を行っていきたいと思います。

まずはBIOSの設定から!

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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