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郷土紙という超ローカル新聞(連載24)豆記者って何よ



新聞を身近に

せっかく10月15日から1週間が新聞週間となっているのでこのネタをぶつけてみました。
郷土紙のような発行エリアが狭く部数が少ない新聞だけでなく、多くの新聞社が行っていることの一つに「小学生新聞コンクール」があります。

事業の名称、詳細は各紙で微妙に違いますが、壁新聞のような形式で新聞社に応募してもらい、金賞、銀賞、銅賞、社長賞、編集局長賞、デスク賞ほかいろいろな賞を出すようなヤツです。

私も小学生のころ、グループ活動で壁新聞を作った記憶はあります。今でも学校の授業でもやっているのでしょうか?
模造紙大の紙に地域で困っていること、珍しい(と思った)話題、昔の話を知っている人の話や学校のできごとなどを取材しました。
私は「新聞といえば4コマまんが」と勝手に思っていたので、たいして絵が上手いわけでもないのに喜んで4コマを担当したのを妙に覚えています。内容はきれいさっぱり忘れ去っていますが。

新聞社に壁新聞コンクールとして応募してもらうのは、新聞に親しみを持ってほしい、身近な存在に思ってほしいという目的があります。
巧妙な(いや、ミエミエの)刷り込みです。
残念ながら現在の新聞業界を取り巻く環境をみると、ほとんどの新聞社は目論見が外れてしまったということですね。


「豆記者」という謎の上から表現


新聞社は、壁新聞コンクール以外にも新聞を身近に感じてもらうための小細工… 方策をいくつも用意しています。
例えば「夏休み豆記者体験取材」というのもそのひとつです。
それにしても豆記者ってなんだよ、豆記者って。

ご想像の通り豆記者は、記者体験をする小学生のことを指しています。謎の上から表現ですよね。
いくら大人より小さいとはいえ、小学生を豆扱いする比喩はどうかと思います。不思議なもので、新聞社に長くいる人たちは、この失礼な表現をなんの疑問もなく毎年使っています。
このほかにも「ちびっこ100人、寒さに負けず稽古始め」なんて見出しでお正月に浜辺で行う空手の寒稽古の記事を書くこともあります。
人に対して豆とかちびというのはあきらかに悪口です。ふつうの社会人なら面と向かって言ってはいけないことだと知っています。まして差別を糾すことを役割のひとつと思っている正義至上主義の新聞社ならば、なおさら許されません。
これに限らずテレビや新聞から広がったのではと疑惑のある見下した表現は、けっこうあります。

見せかけのwin-win


豆記者体験取材は、あらかじめ新聞社側と市役所や警察署、商工会議所、農協などと話をつけ、小学生記者たちを招いて取材ごっこをするイベントです。
イメージアップにつながるのか、市長も喜んで協力。小学生たちの質問(取材)を受けています。
夏休みの小学生に自由研究ネタ提供と記事が薄くなりがちな夏にトピックを作りたい新聞社の思惑がはからずも一致してしています。もちろん、小学生側にそんな思惑はありません。せいぜい先生たちに多少そういう傾向があるという程度です。新聞社主導の「見せかけwin-win」です。

オールドスタイルに書き直し


私も過去に小学生が地元の市長にインタビューしたり、議会見学をする体験を取材したことがありました。
当時、1年目で「豆記者」ということばを知りませんでした。仮の見出しで「記者体験小学生、市長を追及?」とし、記事の中では「小学生たちは、矮呂欲太郎市長に給食のメニューについて質問すると…略」などと書いて出稿しました。
その後、印刷前の大刷りを確認すると、みごとに「市長、豆記者の追及に冷や汗」と変わり、記事本文も「豆記者体験の御班正義くん(11)は、議員控室で腹出目田坊議長に…」などとオールドスタイルに直されていました。
記者が記事本文や見出しを直されるのはかまいません。デスクが手を入れるのは、職権であり、責任を持つわけですから。
しかし、豆扱いされた小学生の気持ちを思うと少し複雑な気分でした。豆とかちびっこと書かれてうれしいとは思わないことでしょう。
新聞に親しみどころか、遠ざかる一因になるかもしれません。


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