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そのタンパク質はノーセンキュー

家の包丁がなかなかの切れ味になってきたので、包丁を研ぐことにした。

買ったばかりの頃は、いつも通りに

「タンタンタンタン…」

という小気味よい包丁の音を鼻歌と共に響かせながら切っているつもりなのに、切れすぎるがゆえに刃先がまな板に毎度毎度刺さり

「タンッ(サクッ) … タンッ(サクッ) …」

と、リズムもへったくれもない残念なお料理効果音を発していた我が家のアイツ。まるで「料理なんてもんはオレが作るもんじゃないんだよ!」とでも言いたげに、尖りに尖ったアイツだったのに。時間というものはすべてのモノに平等なのは本当だったようで、あんなに鋭かったアイツも

「タンタンタンタン…」

と、お料理上級者マダムのように、すました音をかなでながら野菜を切ることができるようになってしまった。

しかしあくまで「上級者マダムのように」なので、野菜達のまな板側の部分で結ばれた「見事な結束力」を断ち切れないことが9割超ととてつもなく多いのは、ここだけの秘密だったりする。


「尖ったアイツにもう一度会いたい」

そう思ったワタシは大昔に通販で購入した「おさかなの形」をしたセラミックの刃を研ぐヤツで、アイツに再開するべく一生懸命シュッシュシュッシュと刃を研ぐことにした。

が、しかし。

全く持って切れ味が復活しない。びっくりするくらいビフォーアフターの違いが判らない。いつまでたってもマダムモドキ。なんてことだ…。おさかなごときでは、マダムの殻を打ち破ることはできなかったか…。

そう思いながら、流し台の下を覗いてみると

「この包丁きれへんわ!」

と、先代の我が家の包丁にガン切れした母が、3年ほど前に問答無用で置いていった砥石を発見した。裏表で粗さが違う、本気なアナタにとってはとてつもなく頼れるアニキだ。


砥石  か …


漫画や小説の主人公だったら、この砥石を手に取り、颯爽と(?)木陰で包丁を研ぎ始め、しばらくした後「よしっ」と包丁の刃を太陽にかざしてキラッなんてさせた後、右手に包丁を持ち、左手でその辺に落ちている小枝なんかを空中に投げて

「シュッシュッ」

なんてしたら

「ポタリポタリ」

と切れた小枝が落ちてくるそんな場面。


しかし、残念ながらワタシにはそんなスキルは存在していない。砥石で上手く包丁が研げたことは、今生においていまだだかつて一度も無い。それに、微妙にあのショリショリ感もショリショリ音も好きじゃないのよねぇ…。


と言う事で、包丁研ぎを買ってきた!
そして研いでみた!
家人が!(←

その後「切れ味を試したいからどうしても今日の夕飯は作らせて欲しい」と家人が涙ながらに頼むので(ウソ)、喜んで夕飯づくりの地位を明け渡したワタシは、台所にすら入ることなく晩御飯の出来上がりを心待ちにしていたのだった(ちょっとは手伝え

「包丁どう?切れるようになった?」
「う~ん、よくわからんかな」
「え?そうなん?」
「あ、でも、ちょっと切れ味よくなってるかも」
「それはよかった」


・・・数分後・・・

「あ~、結構切れるようになってるかも~」
「急にどうした?まぁ、切れるのはええこっちゃ」
「めっちゃ爪きれるわ~」
「手切らんといてよ?!」
「あははは~」
「っていうか、包丁は爪切るもんちゃうで?」
「めっちゃ爪切れるわ~」
「ちょ!!全部きっちり取り除いてよ!!」


タンパク質をなるべく多く取りたいと思ってる


家人のことはもちろん嫌いじゃない


しかし、そのタンパク質はノーセンキューだ!


(;・∀・) ヒトカケラモ ハイッテナカッタYO!!!
セーフ



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