牛乳石鹸教団に入信するのを辞めた日
最近、頭がオッサン臭い。
いや、最近というのはちょっと見栄を張ってしまったかもしれない。
正しくはここ数年、頭がオッサン臭い。
ワタシはオバハンなので、オッサン臭いのはちょとカテゴリエラーなのだけど、どうしたことかそういう事になってしまっている。
なぜだ。なぜなのだ。
しかもシャンプーが合わないと、頭皮に湿疹が出来たり、顔に湿疹が湧き出してきたりするので、あんまりシャンプーの冒険は出来ないし、ワタシは家人ほどではないけど化学物質的なニオイに過敏なところもあるので、若いお姉さんたちのあのいい匂い系のシャンプーを使ってしまうと、自分の髪の毛の匂いで眠れないという副作用がある。だから、ワタシの使えるシャンプーは意外と少ない範囲に収まっていたりするのだ。
しかし、それではオッサン臭いのが取れないのである。
困った困った。
家人が通りがかりに椅子に座っているワタシも頭の匂いを嗅いで「ぐふっ。苦みが目に染みる」と言いながら去っていくのを見る度に、ニガイニオイとはいかに……と、ワタシは哲学的なテンションになっている。
とはいえ、自分の頭のオッサン臭さは結構好きだったりするのはここだけの秘密である。
ブラシのニオイとか嗅いじゃうよね。うん。
そんなある日。
牛乳石鹸(赤箱)にハマった家人が
「頭牛乳石鹸で洗ったらええねん。すっきりするで」
と、石鹸で頭を洗うことを勧めてきた。
牛乳石鹸は昔全身にアトピーが出た時に青箱に非常にお世話になった。洗い上がりのさっぱり感はボディソープでは到底真似できないものだし、牛乳石鹸の香りだって1日中嗅いでいたいくらい大好きだ。
しかしワタシは知っている。石鹸で頭を洗うと、泡を洗い流す時点でギッシギシの束になってすすぎにくいことを。あの流しにくさを経験するくらいなら、オッサン臭い頭でよい。
むしろ、ワタシは自分のオッサン臭い頭の匂いが好きだ!
ということで、家人の意見は加齢だけに華麗にスルーしたのであった。
それから少し日にちが進んだある日のこと。
子が家人に洗脳され、家人が代表を務める「牛乳石鹸教団(全身を牛乳石鹸で洗う教)」に入信したことが判明した。
「石鹸ラクチンやで~」
そう言いながら、クネクネとクリーチャーのような動きで、廊下をびしゃびしゃにしながらお風呂から上がってくる子。この子はいつになったら脱衣所できちんと体を拭いて、パジャマをしっかりと着てから出てくるようになるのだろう。毎日毎日注意するのも飽きてきたんですけど。
おっと話がそれた。
話を戻して。
そんな子の頭のニオイは、ここ2年くらい、ワタシの頭のニオイとそっくりだ。どうしてそんなことがわかるかと言うと、ワタシの枕のニオイと子の枕のニオイが同じニオイだったから。
まだ思春期なのにオッサン臭いというのも可哀そうと思わなくもないけれど、子の頭のニオイもワタシは嫌いではない。隙あらば頭に鼻を付け、クンクンと嗅ぎ逃げするくらいには愛している。
同じシャンプーやコンディショナーを使っているわけでもなく、年齢も親子ほど離れているにもかかわらず、枕のニオイが同じ。これはもうイリュージョンと言っても過言ではないだろう。
ニオイの遺伝子がそっくりなのか?
そんな子が牛乳石鹸教団に入信した。
ということは、子の頭のニオイが変わっていたら、牛乳石鹸で頭を洗うことでワタシの頭のオッサン臭も変わるということ。
ほんの少しの希望を胸に。私は子の頭のニオイを嗅いだ。
クンクンクン……
子の頭のニオイを嗅いだ瞬間、ワタシは牛乳石鹸教団に入信する気持ちをスッパリスッキリと捨てることにした。
⊂⌒~⊃。Д。)⊃ カワッテヘンヤン!
親子二代、これからも手を取りあってこれからも頑張っていこうと思う(←
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