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飲食業はこれからどうなっていくのか?

「これから飲食業界はどうなっていくと思いますか?」と、よく聞かれます。
社会に出て20年目、一貫して飲食店の経営をサポートする仕事についております。そんな私から見て今の状況はどういう状況かと言いますと、大方の皆さまと同じだと思いますが、「こんな状況を見るのは初めて」というのが本音です。

灯りが消えた、人のいない飲食店街を見て、自分の目から自然と涙がこぼれて来ました。私の中で、「飲食店」という存在がこんなにも大きなものだったのだと改めて気づきました。

感情のことを言い出すと終わりがないので、先に進みたいと思います。

泣いてばかりもいられないし、そんな立場でもありません。

飲食店の経営をサポートする立場として、今の状況を一度整理してみようと思って筆を執りました。「そんなことは分かっているよ」という結論になるかもしれませんし、「こんな大変な時に、悠長に整理なんかして他人事のつもりか」と、ご批判もあるかもしれませんが。飲食業界のことを真剣に考えている一人の人間が「今という状況」をどう見ているのかという1つのサンプルとしてなら、私の言葉でも、誰かの参考になるかもしれないと思って、書いてみようと思いました。

整理してみたいのは「飲食業ってこれからどうなるの?」ということです。

書いてみます。
最近よく見かける言葉として、
・beforeコロナ期(新型コロナ以前)
・withコロナ期(現在)
・afterコロナ期(新型コロナ収束後)
その時間軸に分けて考察したいと思います。

【beforeコロナ期(新型コロナ以前)】
世の中は第四次産業革命とも言われるDX革命の真っ只中でした。
DX=デジタルトランスフォーメーション。
全ての物や事がデジタルと結びつく革命期ということです。

ネット上などメディアで踊っていた言葉としては、シェアリングエコノミー、サブスクリプション、MaaS、キャッシュレス、などという言葉が出て来て、
「サブスクっていいの?」「キャッシュレス進んでる?」というような会話が交わされていました。

舌を噛みそうですし、頭がこんがらがるので、私の言葉で話ます。

「商売のやり方が、デジタル化に合わせて多様化してきた」ということです。

私はその頃(と言っても数カ月前ですが)飲食業界の課題について
◆本部・店舗両方のデジタル化による生産性向上 
◆人材不足の問題と労務環境問題
その二つに集約して調査・研究していて、先進的な取組を探しては取材し、業界に向けて、セミナーや具体的ツールの紹介を通して対応策を提案しておりました。

この頃の、例えば音楽業界を見てみると、
昔であれば「CD」という主力商品の売上が業績を左右していた時代を長く経験してきて、それが以前ほどは売れなくなった。その代わりに台頭して来たのが、デジタル化された楽曲を顧客の携帯電話にダウンロードする形で購入させる販売方法や、月々定額の料金で楽曲を聞き放題にする等の販売方法(サブスクリプション)、YouTube等で動画を配信して再生回数に応じた広告料収入を得る方法など、デジタル進化による販売チャネルの多角化が進行していました。

販売チャネルとは、売り場(販路)のバリエーションと言う意味でよいと思います。それが今まではCD屋さんでCDを売るという太い一本の販路だったのが、デジタル化の進化により販路が様々になった。

飲食業界は、その波が少し遅れてですがヒタヒタと迫っていた時期であると認識しています。「来店売上」という太い商流がまだまだ強いが、デリバリーやサブスクリプションなどの新しい販売チャネルが台頭の兆しを見せていました。

【withコロナ期(現在)】
世の中はSTAY HOMEの真っ只中です。
今、新型コロナウイルスという世界の課題に対して、生命と経済をどう守るかという時間です。共通するキーワードは「守る」「維持」です。

この大変な時期にあって飲食業界が何に取り組んでいるか。
書いてるだけで手が震えるほど大変な仕事ですが、感情を押さえて「施策」を列挙します。

(施策グループ①)
◆経営維持の為のバランス判断
・融資交渉
・営業調整
・雇用調整
・持続化給付金の申請
・雇用調整助成金の申請

(施策グループ②)
◆社員と顧客を守る感染症対策
・営業時間の調整
・物理的な感染防止対策

(施策グループ③)
◆来店売上以外の販売チャネルの確保
・クラウドファンディング
・テイクアウト
・デリバリー
・通販、宅配
・決済方法の多様化対策
・オンラインレストラン

(施策グループ④)
◆③を補完する新たな顧客とのつながり作り
・SNS活用
・インフルエンサーとのつながり作り
・動画配信

上記のような施策を、
「withコロナ期(現在)に特有な施策」「afterコロナ期(コロナ収束後)にも引き続き有効な施策」に注意深く分けて見ていくと、コロナ収束後の傾向が見えてくるのではないかと私は考えています。

【afterコロナ期(新型コロナ収束後)】
ここがいわゆる「飲食業ってこれからどうなるの?」の部分になってきます。未来のことなので誰にも分かりませんが、推察してみたいと思います。

過去と現在を見てきて、その流れから未来を推察してみます。

withコロナ期(現在)は、見ようによっては、beforeコロナ期(新型コロナ以前)の「宿題」の重要性が急激に顕在化した時期と見ることも出来ます。

音楽業界は、デジタル化の進行によって「CD」という主力売上が減少し、多様な販売チャネルに分かれました。これは主力売上の側から見れば縮小ですが、販売チャネルが多様化すること自体は市場規模の縮小を意味しません。飲食業界においてもこの傾向が一気に加速したのが現在だと感じています。

では、先ほど挙げたwithコロナ期(現在)の施策をもう一度見ていきます。
この各施策の中で、afterコロナ期(新型コロナ収束後)にも残る施策は何だろうかと見ていけば、これからの飲食業界の傾向が見えてくると思っています。

(施策グループ①)
◆経営維持の為のバランス判断
・融資交渉
・営業調整
・雇用調整
・持続化給付金の申請
・雇用調整助成金の申請

上記グループ①の施策は、恐らくwithコロナ期(現在)特有の施策です。
もちろん平常時でも取り組む可能性のある施策ですが、今ほど全国的にほぼ全ての飲食店がこの施策に一斉に取り組んでいる時期は珍しいでしょう。
ですので、この各施策はafterコロナ期(新型コロナ収束後)の飲食業界の傾向と見るべきものではないとしておきます。

次にグループ②~④の施策は恐らくレガシーとしてafterコロナ期(コロナ収束後)に残ります。もう一度見てみましょう。

(施策グループ②)
◆社員と顧客を守る感染症対策
・営業時間の調整
・物理的な感染防止対策

(施策グループ③)
◆来店売上以外の販売チャネルの確保
・クラウドファンディング
・テイクアウト
・デリバリー
・通販、宅配
・決済方法の多様化対策
・オンラインレストラン

(施策グループ④)
◆③を補完する新たな顧客とのつながり作り
・SNS活用
・インフルエンサーとのつながり作り
・動画配信

いかがでしょうか。新型コロナウイルスが世の中に与えたインパクトの余波と、デジタル化の進行が止まらない限りは有効な施策ばかりです。と、言うことは、withコロナ期(現在)上記の取組を既に始めている飲食店は、その取組を何が何でもafterコロナ期(コロナ収束後)の自店の強みに変えるという意識で全力で取り組めば良いでしょう。

グループ②~④の施策を簡単に言うと、
【安心・安全な売場・職場作りと労働環境の整備】
【新しい販売チャネル作りとテクノロジーのフル活用】
です。
この傾向で言えば、実店舗は安心感の創造の場。売上は多様なチャネルで新しく増やしていく。そういった時代になると考えられます。

その際にどんなお店が「強い」お店なのか、もっと具体的に予測して以下の①~⑥にまとめてみました。あくまでも予測ですが。

【afterコロナ期に強いお店はこういうお店】

①抗ウイルス対策により一般家庭よりも感染症リスクが低くて安心である。
(客として行きやすく、スタッフとして働きやすい)
②新たな販売チャネルに即対応できる為に多様な決済方法に対応している
③店内売上以上か、店内売上に迫る外販売上を持っている

(テイクアウト、デリバリー、通販宅配、グッズ売上、サブスク等)
④⇒③の売上を作る過程で顧客とのダイレクトのつながりが出来ている。
(SNSのフォロワーや店舗会員)
⑤店舗独自のプロモーション(広報・PR)ノウハウを持っている
(インフルエンサーとのつながり等、情報発信のチャネルとノウハウ)
⑥デジタルツールのフル活用により本部・店舗の業務効率が高い
(経営数字の把握がリアルタイムで出来ている為に経営判断を早く行える。実店舗の運営に必要な人員数が最適化されていて、来店売上以外の新しい売上作りに人員を割ける)

上記①~⑥のようなお店が「強い」お店になっていくと思っています。もっと言うと、たった今、withコロナ期においても上記①~⑥が強いお店は、強いです。近しいお店は存在します。

余談なのですが、私は最初に勤務した会社で「継続して繁盛するお店の特徴をまとめる」というミッションを貰ったことがあり、その時に、日本全国の100年以上続いているお店の特徴を調査して整理したことがあります。
その時にまとめたことを一言で説明すると「ブランド力があり、顧客リストを有しており、店内売上以外の売上を持っている」と、まとめました。これからの飲食業界において「強い」飲食店は、100年以上続く飲食店の特徴を、デジタルツールの活用で手にしている飲食店になるのではないかと思っています。

その会社に勤めていた頃から、起業して経営者になった今も変わらずに、「常に飲食業界の最大の課題に対して先進的な取組を調査・研究する」ということを続けています。そんな私が今、重点的に調査・研究しているのは、

◆店内空間における抗ウイルスの最上レベルはどう作るか。
◆店内売上以外の売上の柱を作る商品開発から人気商品化までの流れ。
◆こだわり料理を冷凍食品にする為の商品開発の具体的なステップ。

等々です。そういった調査の結果分かってきたこともたくさんあります。また順次、具体的に書き残してみたいと思っています。その際にはまたご覧いただければ幸いです。

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