Breaking Bad
流行りの時期に見過ごしてしまったテレビシリーズはたくさんあります。
特に私たち夫婦は、みんなの人気がわーっと集中している時はなんかしらけてるへそ曲がりなもので、1シーズン遅れで見ることはしょっちゅうです。
でもこの「Braking Bad」について、最初の1話をみ終わった途端
なんで私たち、これ見逃してたの?
と相棒と首を傾げました。
簡単にいうと、アメリカの化学の高校教師が、妊娠間近の妻と障害を持つ息子、そして最近肺がんが見つかった自分の将来のために覚醒剤を作り始める、というお話です。
いやーもう、5シーズンを2週間ちょいで観終わるほど集中してしまい、とにかっく毎日18時ぐらいになるとソワソワし始め、スナックやサンドイッチを用意し、一夜に2話から3話をこなしました。土、日は
「Breaking Bad祭り」
と称して朝食後から夜までw。休憩は交えるも、やはり腰や背中は痛む。それでも、次が見たくて止められませんでした。
こんなに夢中にしたのには、ストーリーや登場人物の背景、関係に色々興味深いものが多かったからでした。
私も相棒も教師経験者(相棒は現役)なので、最初に描かれる主人公の悲哀みたいなものに自分をシンクロしたのがまず心を撃ち抜かれた原因かと思います。
私は、とにかく稼働率の割に給料の安い自分の立場で病気をした時の切羽詰まった経験をしているのでそこら辺に共感。
相棒はセクシュアルアピールと教養習得をないまぜにして登校して来る「おとなこども」の生徒たちのこと。アカデミックな話をしても理解もせず、性に関わる話題だけにはガッツリ食い入る、その他は教師には尊敬すら皆無な彼らに蔑まされた気分にさせられる無常さ。
特に相棒の共感部分は、ウォルターが元教え子のジェシーと共に覚醒剤手作りを決意するあたりにシンクロしていました。
そして、地域の覚醒剤売買に長けた元教え子ジェシーと共にタブーの現金稼ぎに足を突っ込むわけですが、
基本的化学の知識は学校で教えたはずだし、そこから科学的知識を伸ばして覚醒剤を作っているのだとばかり思っていたウォルターは、全く何にも学ばずジャンキーに成り下がったジェシーとなぜかコンビを組みます。
時を重ねて、普段では体験し得ない危険な世界に足を踏み込んでいくウォルター。
家族に隠して大金を稼いでいるわけですから、帰りが遅くなったり、アルバイトを辞めて昼夜覚醒剤を作っていることに色々疑念を持たれつつ、表の世界では教師を続け、治療や生まれてくる娘を心待ちにして過ごします。
しかし、いつ捕まるか、自分が死の淵に立ちながら、家族にどのぐらい残してやれるかと懸命に危機に立ち向かうあのパワーはコメディに描かれつつも必死さが伝わります。
初めてジェシーがウォルターの作った覚醒剤を売り、大金を持ち込んだ場面では、悪妻の私は、
あー、化学の先生と結婚すればよかったわ〜
と曰い、哲学の先生である相棒の頬を餅のようにプーっと膨らませたのはいうまでもありません。でも相棒自身、自覚はしていました。しかし、それにより、彼がマフィアと対峙したり人が殺されるのを目の当たりにしないわけです。
色々あって5シーズンの最後でウォルターは一大決心をし、家族の将来を守り、教え子のジェシーを救いに行きます。
別れを告げに元妻に会いに行ったウォルターが
いや、全て自分のためにやってた。楽しんでた。生き生きしていられた。
と告白します。(ネタバレごめんなさい!)
実際、彼は過酷な治療を続けていても、一度はほぼ癌の完治を遂げ、活動的になった期間がありました。その姿は、視聴者のわたしたちでさえ、彼はなんかことの流れを生きがいにしているのでは?と考えるほどでした。
うだつが上がらない教師として、給料の安いがゆえに洗車センターでバイトをする自分に比べると、自分の知識がお金となり、どこのカルテルより質の良いものを作って、世界の覚醒剤組織には唯一無二、と名を馳せるようになることは、いかにアンダーグラウンドな世界であったとはいえ、彼はそれなりのスリルを味あったのではないかと思います。
しかし、盲点は、彼の家族が普通の人たちであった、ということ。
悪を認めない普通の人であるゆえに、彼がどうして悪の世界に足を突っ込んだのか、どうしてそこから抜け出ずにどんどん深みに入っていくのか、怖さや怯えを感じないのかが理解できませんでした。
ウォルターは全て家族のため、と感じる部分を、妻は持ち前の正義や正当性で全て否定していきます。
私たちは、日が経つにつれて彼の妻をどんどん憎むようになりましたw。でも、私たちは全貌を知っているからウォルターに加担できるのであって、一部しか知らず、みるみる家の床に山ほどのドル札が積まれていくことは、一般労働賃金のレベルを知っている人にとっては実際恐怖であると思います。
このシリーズは、世の中の何が良いか何が悪いかのジャッジをあえてせず、人それぞれの立場で自身の正義を支えに営む人間劇を淡々と描く、それが魅力だったのだな、と感じます。
現在、同じ制作スタッフが作ったシリーズ「Better call Saul」を楽しんでいます。Breaking Bad にも出演したキーマン、ウォルターの弁護士サウルのお話です。
とにかくお話が暗いテーマにも関わらず、見続けて面白い理由は、お話がコメディタッチだからです。
とにかく、英語で観てもそんなに難しい部分は少ないしわかりやすいです。
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