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今日の科学 6月1日

1940年6月1日は、アメリカの物理学者キップ・ソーンが生まれた日です。
彼は1970年代から重力波観測の研究に乗り出し、1980年代からレイナー・ワイスと、大型重力波観測装置LIGOの建設に尽力しました。LIGOは2015年9月に重力波を初観測し、ソーンらは2017年にノーベル物理学賞を受賞しました。

重力波は質量をもっら物質が動くことで、時空がゆがみ、波のように伝わる現象です。理論的には人間が動き回ることでも、重力波が発生しますが、とても小さくて観測することはできません。重力波はアインシュタインの一般相対性理論から導き出される現象です。

1970年代に、中性子星のペアを長期間観測することで、重力波が存在はすることは間接的に示されたものの、直接観測は長い間できないままでした。

1973年ごろ、マサチューセッツ工科大学(MIT)のレイナー・ワイスは重力波を直接観測する方法としてレーザー干渉計法を提案。同じような時期に、カルフォリニア工科大学(CalTech)のキップ・ソーンも重力波の研究に乗りだしました。

1980年代に入ると、小型の観測装置に限界を感じたワイスはソーンたちと共同で大型のレーザー干渉計重力波観測所(LIGO)を建設する提案をして、研究予算が認められました。しかし、計画はなかなか進みませんでした。

LIGOの計画が動き出したのは、1994年に素粒子物理学者のバリー・バリッシュが2代目の統括責任者に就任してからでした。バリッシュは重力波の専門家ではありませんでしたが、大型実験計画の責任者を務めた経験を活かし、LIGO計画を蘇られました。

LIGOが完成したのは2002年のことでした。徐々に感度を上げながら観測を続けましたが、重力波は観測できませんでした。2009年から2014年にかけて、LIGOは抜本的な改修がおこなわれ、感度を大幅に上げた第2世代のアドバンスドLIGOに生まれ変わりました。

そして、2015年9月18日に改修後のLIGOの正式な観測が始まる計画が立てられ、その準備として9月12日から試験運転を始めました。すると、9月14日に重力波をとらえることに成功したのです。この成果は2016年2月11日に発表され、世界中の人々を驚かせました。

ワイス、ソーン、バリッシュの3人は、「LIGOへの決定的な貢献と重力波観測」を讃えられ、2017年にノーベル物理学賞を贈られました。初観測から2年でノーベル賞を受賞したことからも、重力波の直接観測に成功したことのインパクトが大きかったことがわかります。

ちなみに、キップ・ソーンはクリストファー・ノーラン監督の映画「インターステラー」の科学監修をしたことでも有名です。ソーンの理論物理学に基づく監修により、ブラックホールなども忠実に再現され、映画にリアリティを与えています。

あと、重力波について詳しく知りたい人がいたら、いい本がありますよ。


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