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今日の科学 6月11日

2009年6月11日は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の月周回衛星「かぐや」が、月の表面に制御落下し、運用を終えた日です。かぐやには、14種類の観測機器が搭載され、月の重力や地形を精密に測定するなど、アポロ計画以来の高度な月探査を実施しました。

月は、地球の唯一の衛星で、地球に一番近い天体でもあります。1960年代の終わりから1970年代にかけて、アメリカのアポロ計画で12人が月面に降り、有人探査をしましたが、その後、月探査はあまり実施されませんでした。

人類が月に再び目を向けるきっかけをつくったのが、1994年にアメリカが打ち上げた探査機「クレメンタイン」でした。月には大気がなく、水などが存在しないと考えられていましたが、クレメンタインの観測によって月の北極や南極地域のクレーターに水の氷が存在する可能性が示されました。

この地域にあるクレーターには1年を通して太陽の光が射しこまない永久影があるととがわかってきました。永久影には水が固体である氷の状態で存在しているのはないかと考えられたのです。

「かぐや」は2007年9月に打ち上げられ、月の周回軌道に投入されました。かぐやはレーダー高度計を使い、約677万点の高度を測定し、それまでよりも精密な月全体の地形図を作成しました。

また、月の重力分布を調べたところ、クレーターができた後に内部から溶岩が噴出し、クレーターを埋めた「海」と呼ばれる地形では、他の場所よりも重力が高いことがわかりました。また、月の重力の違いから地球を向いている月の「表」の側は、月ができてからしばらく温かかったと考えられています。

月に水の氷があるかどうかについては、かぐやの探査では否定する結果が出たのですが、インドの探査機「チャンドラヤーン1号」の観測データを詳しく分析することで、月の北極や南極に水の氷があるという期待が高まっています。アルテミス計画などで、人が月面に行くことではっきりするかもしれません。

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