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今日の科学 5月11日

1924年5月11日、イギリスの電波天文学者アントニー・ヒューイッシュが生まれました。彼の研究グループは1967年に、まるで人間の脈拍のように規則正しく拍動するパルス信号をとらえました。このパルス信号は、正確に1.34秒の周期で発生していて、何日も観測された。観測を続けた結果、パルス信号を発する天体がいくつもあることがわかり、正体がわからないながらも、パルサーと名づけられました。

その後の観測で、パルサーの正体が中性子星であることとが判明。中性子星は、大部分が電気的に中性な中性子というものでできているものの、表面には鉄やニッケルなどの原子核、電子、陽子などもあります。そのため、地球や太陽と同じように磁場があります。

中性子星の中には高速で自転しているものがあります。高速回転している中性子星からは、自転の影響で、特定の方向にビームのような電磁波が放出されています。パルサーは、ビームの出る方向が回転軸からずれているために、地球から見ると規則正しいパルス信号を送っているように見えていた天体だったのです。

パルサーを発見した功績も含め、電波天文学における先駆的な研究に対して、ヒューイッシュと同僚の天文学者マーティン・ライルには、1974年に電波天文学分野の研究者として初めてノーベル物理学賞が贈られました。

しかし、パルサーの信号を最初に発見したのは、ヒューイッシュが指導していた大学院生のショスリン・ベル・バーネルでした。彼女にはノーベル賞が贈られなかったのです。当時は女性科学者の地位が低かったために、彼女の業績が正当に評価されなかったことが原因といわれています。

2018年、アメリカのブレイクスルー財団は、ショスリン・ベル・バーネルに基礎物理学ブレイクスルー賞特別賞を贈りました。パルサー発見の貢献とその後の科学界でのリーダーシップが評価されたものです。

現在は女性研究者の業績も評価されるようになってきましたが、女性にとって科学分野には進みにくい障壁があるようにも感じます。女性も、男性も自分の興味を持った分野の研究がやりやすく、自己表現がもっとしやすい社会になればいいなと思います。


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