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今日の科学 5月29日

1929年5月29日は、イギリスの理論物理学者ピーター・ヒッグスが生まれた日です。彼は1964年にヒッグス粒子の存在を予言しました。その後、ヒッグス粒子の存在を確かめるために実験の構想がもちがり、実際に発見されたのは約50年後の2012年7月のことです。ヒッグスは2013年にノーベル物理学賞を受賞しました。

私たちの周りにある物質をどんどん細かくしていくと、素粒子にまで分けることができます。物質に関係する素粒子はフェルミオンと呼ばれ、12種類あることが知られています。この他に、宇宙に働く力を伝えるための素粒子(ボソン)が4種類存在します。

素粒子物理学によると、この宇宙は物質と力で構成されていて、それぞれが素粒子で構成されることがわかってきました。そして、物理学者たちは、素粒子の標準理論というものをつくり、この宇宙がどのようにできてきたのかを明らかにしようとしました。

ところが、その過程の中で、大きな問題が発生しました。素粒子の標準理論では、ほんらい素粒子は質量(重さ)がないことになっていたのです。でも、クォーク、電子、ニュートリノなど、多くの素粒子は重さをもっています。この矛盾を解消するために考えられたのがヒッグス粒子でした。

ヒッグス粒子の考えを取り入れると、素粒子と質量の関係はこうなります。すべての素粒子はもともと質量をもっていないのですが、空間にはヒッグス粒子が詰まっていて、通り抜けようとすするとヒッグス粒子にジャマされるような感じになり、質量をもつように見えるというのです。

何だかつじつま合わせのようにも感じますが、実際に実験をするとヒッグス粒子の存在が確認されたのです。実は、ベルギーのフランソワ・エングレールとロバート・ブラウトはヒッグスよりも先に同じような考えを発表していました。

しかし、新しい粒子の存在を明確に主張したのはヒッグスだけで、素粒子に質量を与える粒子はヒッグス粒子と名づけられました。ヒッグス粒子は素粒子の標準理論の中でもとても重要なものでした。

そのため、2012年7月に、実験によってほぼ間違いなく存在することがわかると、その翌年の2013年には、いち早く理論を提唱したヒッグスとエングレールにノーベル物理学賞が贈られました。ノーベル賞は生存している人に贈られる賞なので、2011年に死去したブラウトは受賞対象にはなりませんでした。


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