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アメリカで盲導犬の子犬を育てる話その1:受け入れ準備編

日本でも盲導犬になるための子犬(Puppy)を盲導犬学校にいくまで育てるパピーウォーカーというボランティアがありますが、
本記事はアメリカでそのボランティアにあたるPuppy Raiserに我々夫婦がチャレンジしてみることにした記事です。(妻が書いてます)

Puppy Training

我々夫婦は実家も含めていままで犬を飼ったことがない2人ですが、
知人の家に泊まらせていただく機会が多く、出会ってきた犬を飼っているお家を見ながらいつか私たちも犬を飼ってみたいなと思っていました。
以前イギリスで滞在していた時、ロンドンでは特に公園や地下鉄できちんとトレーニングを受けた犬が人間と共生しているのをみて、
イギリスでは犬のトレーニングのための学校があるというのを知りました。
その時、もし自分たちが犬を飼うなら人間も犬もトレーニングをして共に生活する準備をしないといけないなと感じたのでした。

その後、その犬のトレーニングの学校のことはNHKで石田ゆり子さんのドキュメンタリーで紹介されるものを見る機会がありました。

このドキュメンタリーをみるまで、実のところ私は「躾」というものが持つ責任について人間側のエゴだったらどうしようかと、
犬にとって苦痛になってしまったらどうしようかと、犬を飼ったことがない人間なりに色々悩んでいたのですが、犬がトレーニングを受ける様子は「できたら褒める!」という姿勢で犬の習性上これがゲームのような感覚で覚えることを楽しんでやってるということを知り、
トレーニングを通して一緒に冒険をするようなチャレンジを犬としてみたいなと思うようになりました。

アメリカでPuppy Raiserに興味を持ったきっかけ

私たちが住むアメリカ オレゴン州のポートランドエリアは犬を飼ってる人がとても多く、住宅もペットフレンドリーのアパートメントが多くあります。最初、保護犬などの引き取りも考えたのですが、イギリスのように犬のトレーニングを人間側も学べる機会が欲しいなと思った時、Puppy Raiserのボランティア募集を知り、応募してみることにしました。

GDB(Guide Dog for the Blind)への登録

アメリカの盲導犬協会はいくつかありますが、西海岸はGDBという団体がやっていて、そのボランティアの一環でPuppy Raiserの募集をやっています。
webから応募ができて、イベントの参加などから制度を学んでいき、住んでる地域のボランティアコミュニティに入ってその地域内で行う定期的な勉強会などのイベントに参加しながら子犬のアサインを待ちます。
私たちは昨年12月に応募して、今年の2月にトレーニングを終えた子達が視覚障害者の方へ引き渡し卒業式をするイベントから参加しました。

ボランティアイベント①
Guide Dogs for the Blind Graduation Ceremony

卒業式には8週間の子犬から1歳までを育てたボランティアの家族と、これからその盲導犬と生活していく視覚障害者の方がトレーニングをうけた盲導犬と登壇して手紙を読んで引き渡しとなります。視覚障害者の方と盲導犬もその施設で1週間くらい生活に慣れるまでのトレーニングをするので、そのトレーニングの卒業式にもなっています。
ボランティアの家族からしたら自分が育てた子犬が立派に仕事を始める姿を見ることができる機会で、がんばっておいでね、と、私たち参加者も応援したくなるような卒業式でした。
そのあと、私たちのようなPuppy Raiserを希望する人たち向けの説明会を行い、トレーニングの様子を見たり、医療保険や予防接種などはGDBが負担するとか、餌の指定とか受け入れるための準備についても施設を周りながら聞きました。
話を聞きながら、私たちのような英語非ネイティブの家庭でも受け入れができるのか、とか、実はこの頃妊娠がわかり、赤ちゃんがいる家庭でも受け入れができるだろうか、とか本当に受け入れができるのか不安になって質問したのですが、
アメリカでのPuppy Raiserボランティアは結構寛大で、
「いろんなご家庭に行く可能性があるんだから非ネイティブでも赤ちゃんがいる家庭も歓迎だよ!」と、「もし出産直後とかもしPuppyのお世話が難しかったら地域の別のボランティアメンバーにシッターを依頼できるから遠慮しないでね」と励ましてもらえました。
日本ではパピーウォーカーのボランティア中は旅行に行けない制限があるところもあると聞きましたが、GDBは「いろんなところを経験させてあげたいから旅行にもぜひ連れてって!Service dogとして同乗がしやすい航空会社も教えるね。でももし同行が難しかったら旅行中他のボランティアに数日預かってもらうとかできるから大丈夫だよ」と言われて、地域のグループ全体で育てる意識があって安心できました。

ボランティアイベント②
Puppy Handling Class

生後数ヶ月のPuppyとトレーニングをします

卒業式から1週間後くらい、実際のトレーニングを教えてもらえるクラスを案内されました。
このクラスではいまPuppyを育てているボランティアの方がPuppyを連れてきて、一緒に歩く訓練や落ちたものを食べない訓練などを一緒に行いました。実際にボランティアしている方の話を聞けたり、この前の卒業式と違ってまだ訓練途中で、一緒に歩く時に左側に必ずいるようにする、とか、吠えてしまう、とかルールをまだ習得できていない子達もいますが、そういう時にどのように人間側で指示するのかを教えてもらえました。
また、人間側のトレーニングとして、それぞれのトレーニングをしたPuppyがどんな性格の子で、どんなだったか、と話す場面もあり、犬ごとの個性を考えさせられるワークショップの流れだったのも印象的でした。

ボランティアイベント③
Puppy Truck

外に出れて嬉しい8週間のPuppyと遊ぶボランティア

前回のクラス後、地域のボランティアグループのリストに入れてもらい、次からは地域のボランティアグループで案内されるイベントに参加するようになりました。その案内を受けたものの1つ目が、生後8週間のPuppyを載せたトラックの休憩に外で遊んであげるボランティアでした。
GDBの盲導犬はカリフォルニア州の施設で繁殖が行われ、そこから専用のトラックをつかって各州のボランティアグループに配送されます。今回のトラックはシアトルやタコマに行く予定の長距離移動中で、私たちがいるエリアのホテルに1泊運転手さんの休憩に合わせて、子犬たちがストレスを溜めないように夕方と早朝に外に出してあげます。
生後8週間のPuppyはまだやんちゃで他の犬とじゃれついたりたまに吠える子も。ボランティアのメンバーでお水をあげたり、うんちをした時に誤って触れないようにするなども対応します。

ボランティアイベント④
GDB Regular Meeting

ついに地域のグループにも招待され、地域で月1回夜にやっている勉強会に参加できました。(本当は毎月やってるらしいけれど、我が家はメーリングリストのメールアドレスが誤ってて数ヶ月前回の活動から時間が経ってしまいました。)
その地域でいま育ててるPuppyたちと参加して、トレーニングの仕方や直近で行うGDBのイベントの話などします。Puppyは地域で育てる感があって、講習中はリーシュを持つ人を変えながら、みんなの犬、という感じでトレーニングをしたりみんなで情報交換したりします。私たちが行った回はBlinds schoolの食堂でしたが、回によってはスーパーなどの商業施設で行ったりもするそうです。

ボランティアイベント⑤
Puppy sitterと事前home visit

Puppy Raiserが旅行などで不在の時、ボランティアメンバーで数日預かることができます。MLで募集がされ、私たちは地区のリーダーの方の旅行中4日間のシッターをすることになりました。シッターをする数日前にリーダーの方2人が家に来て、問題ないかを見に来てもらいました。
家の中で、どこをPuppyのスペースにするか、とか、餌やり、お散歩、おしっこ・うんちのお世話についてルールを教えてもらいました。
うちはPet friendlyなアパートメントなので、犬を飼ってる人も多く、Dog parkがあったりしますが、他の犬と一緒に遊ばせないとか、他の犬にほえないようにお散歩に集中させること(他の犬は吠えてきたりしますが、ちゃんと集中してその道を通り抜けたらGood girlと言っておやつをあげます)など気をつけることを教えてもらいました。
4日間我が家で預かるPuppyはすでに14ヶ月でリーダーがトレーニングをしているので、とてもおとなしくて吠える場面も1度もありませんでした。
うちにいる間、お散歩やご飯のスケジュールをこなしたり、Walmartに一緒に買い物したりもしました。

ジャケットオフの時間はとってもリラックスして愛嬌振りまいてくれます

困ったことといえば、うんちやおしっこのコマンドがいつもと違う環境に緊張してしまったからかなかなかしてもらえず、膀胱炎を心配してしまったこと。途中でテレビ電話やメッセージをしてリーダーの方に相談したりしながら、頻繁にお散歩に行って根気強く待ちました。(後日分かったことですが、普段お世話をしているリーダーのお家はとっても広いお庭がある一軒家で、我が家の駐車場エリアと普段の場所が全然環境違ったんじゃないかなと。。)
4日間のお世話でPuppyとの生活スケジュールやルールを確認できたり、用意しなければならないものなどがわかり、Puppy受け入れの準備がイメージできました。リーダーの方には出産の時期のことも伝えて、「それなら早いほうがいいね!」と次のPuppy truckの回で子犬を受け取れるように進めてもらうことになりました!

ついに子犬受け入れに向けて!
GDBのオンライン講習や必要物品の用意など

Puppyが来る日程など具体的に決まっていき、
リーダーからGDBのオンライン講習を受ける案内などが届きました。
用意された資料スライドを見ながら、どのようなコマンドを覚えるとか、やっていいこと・悪いことを教えてもらいました。
知らない単語がたくさんだったので、都度調べながら、夫婦でメモとって受講しました。
リーダーの方ともオンライン通話をして、受け入れに必要になるものを教えてもらいました。最初の時期はフェンスや下に敷くシートなども必要になりますが、それらはGDBが用意してくれたり地域のグループで使ってないものをおさがりしてもらいました。

子犬用のこのスペースをYes pen/Yes spaceというとのこと

消耗品になるようなうんちバッグやトイレ用のシート、おもちゃなどは個人で揃えることになっており、ペットショップをいくつか回ってどれを買おうか検討しました。

この記事を書いている現在はPuppy受け入れの数日前。
子犬のアサインの前に、PPQ(Puppy Placement Reqest)で受け入れの家の家族情報や犬種希望を入れてアサインの参考にしているようで、
ゴールデンレトリバーもしくはラブラドールの黒・白と、オス・メスの希望が出せました。ゴールデンレトリバーの希望を出してみましたが、数が少ないようでアサインは白ラブラドールの女の子に。名前は両親の系統がわかるように最初のアルファベットを指定されて、うちの子はVから始まる名前で指定をされました。
準備も着々とすんで、来る日がたのしみです!

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