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絶対今じゃない

こんにちは、きゃわです。

非常識を煮詰めてベタベタのまま固めた中国人社長の会社を退職して早2か月。
新しい会社にも程よく慣れ、おかげさまで毎日穏やかに仕事をすることが出来ています。
今までの会社の中でも群を抜いてノンストレスに近い。
いい…とてもいい…。仕事はこういう穏やかな気持ちでするもんだよね…。
と、ひしひし常識のありがたみを嚙み締めております。

新しい職場に通いだしたのはここ2か月ですが、もともとはあたおか会社に入る前に派遣契約満了まで3年間通ったエリアですので、自宅最寄り駅からどの車両の何ドアに乗れば改札までスムーズなのか、そこからどういう動線を辿ればオフィスビルまで快適に向かうことが出来るか、その間に何軒コンビニがあるとか、最早勝手知ったるものです。

この日は朝に小雨が降っていました。
傘がなくてもギリいける程度の本当に極々小雨ではありましたが、
それは私が家を出る時間の話。
おそらく明け方から早朝まではしっかり降っていたんだなという天気も相まって、いつもより電車が気持ち混んでいた上で、やや遅延しておりました。

とはいえ、朝の満員電車が少々遅延したなんて都内JRにおいてよくある話。
やばいこのままだと遅刻する!!なんて慌てはしません。
へぇ、へぇ、今日は混んでますね~~くらいに過ごしますが、その日はいつもと勝手が違った為、心なし私も焦る気持ちがありました。

新年度に伴い弊社代表が変更したため、各部署を回る懇親会という名の飲み会が社内で順次開催され、今日はうちの部署が偉い人複数人を下々の者で囲むという地獄が開かれる日でした。

普段はかなりカジュアルな格好で出社していますが、今日ばかりはさすがにTシャツスニーカーで出社するわけにはいきません。
円卓でいただく高級中華の店もさることながら、そもそも偉い人(複数人)が居るわけですから、私のヘマは部長のヘマになり兼ねない。
入社して日が浅いのにそんな厚かましいことは出来ません。
久々にジャケット着用、ワンピースに黒パンプスという、このまま往訪に出れそうな格好で出社していました。


普段なら難なく駆け降りる駅の階段も、この日ばかりはヒール。
しかも雨の影響でタイルが滑る。
急ぎたいのに足元に気を取られいつものスピードは出ません。
そんなこんなで私の心は少しばかり焦っておりました。


改札を出る。
それは出走の合図と言わんばかりに、各会社員たちが一斉にゲートを抜けて各々の方向へ四散していきます。
私も後れを取ることなく、きれいなスタートを切ったと思います。
ブリンカーは着けていませんが、焦るあまり視界を相当狭く絞り一直線にゴールのオフィスビルへと向かっていきます。

階段の障害を越え、いよいよ第3コーナーを曲がる。
さあここからは最後の直線…!
そんな中、右横から急に呼び止められました。

私は何か落とし物をし、後方の方がそれを拾ってくださったのかと思い、
やや申し訳ない気持ちとともに顔を上げ、片方のイヤホンを外しました。

小首を傾げる私にそのひと(男性)は、
「あの…すいません…ものすごくタイプで…」
と声をかけてきたのですが、その際瞬間的に思ったのがタイトルの通りです。
いや、絶対今じゃねぇ!!
出社時に時間的ゆとりがある方はどれくらいいらっしゃるのでしょうか。
私には見当もつきませんが、きっと1分1秒惜しむべく忙しい方が多いと思っています。私もそのひとり。
ギリとはいえ流石に10分前にはデスクでPCを立ち上げてますし、2分前に席についてセーーフ!!みたいな出社はしていませんが、途中でスタバによって席に座れるほどの余裕はないわけです。

そんな中でありがたくも声を掛けていただいたところで、申し訳ありませんが応答に割く時間の余裕はありません。
っていうか、出社時にナンパ(って言っていい??)するなんて話聞いたことありません。
応答云々の前にシンプルに頭パニックです。

『あ、すみません…これから出社なので…』
起きて以降初めて声を出したので、ガッサガサだったであろう声を絞り出しお断りを伝えました。
すると先方も、「自分もこれから出社なので、LINE教えていただけませんか?」と続いてきました。

そう来たか…と思いましたし、どうしても交換したくない!と思うほど酷い雰囲気の方ではなかったので、恐らく時間にゆとりがあれば連絡先の交換くらいなら応じたかもしれません。
でも今はただひたすらにここから離れてデスクに行きたい!!
何ならちょっと周りに人多くて恥ずかしいし、焦る気持ちは1mmも消えてない!!
と思ってしまい、『すみません…無理です…』とお断りし、私はオフィスビルに入りました。

あまりの動揺と混乱で、ビル内のコンビニを無駄に2周し、いらん動線を踏みまくってようやくデスクに着きました。
幸い隣の席の先輩とはとても仲良しです。
趣味も合うし、話のテンポやノリ、ツッコミが合うので非常に気が楽な素敵な先輩です。

おはようございますを言い切ると同時に「事件です」と伝え、
朝から何事かとビビる先輩に、先ほどの顛末を話しました。

コンビニ2周したところまで聞いた先輩は一言、

「その人はどこからきゃわちゃんのことを見てたんだろうね??」

…え…?
…どういうことですか?

「瞬間的に一目ぼれして声かけてきたならいいけど、絶対違うじゃん?
正面からすれ違う形で歩いてて顔見て、後ろからUターンしてきたのか、
同じ電車だったとか、改札あたりから気になってたとか、
どっかで見かけてタイプ!って思って、でもこのままだとビル入っちゃう!
ってなったから慌てて声かけてきたんでしょう??」

待って。めっちゃ怖い話するじゃん!!!
真夏の納涼にはまだ早いんですけど!!

言われて気づいたらめちゃくちゃ怖くなりました。

いつも以上に焦って視野が狭かったこと。
いつもより圧倒的にキレイ目な格好していたこと。
私の中のいつもと違う部分は確かにあった。

けど、けどさ。
聞いたことない。出社時にナンパなんて。
きっとめちゃくちゃ勇気を振り絞って声を掛けてくださったんだとは思う。
自分の事を醜女とまでは言わないけど、でもお世辞にも別に抜きんでて恵まれたルックスじゃない。
そんな私にタイプですなんて声かけてくれたんだから、まじで相当頑張って声かけてくれたんだと思うけど、本当今じゃない!!

もしこれが帰りのタイミングだったら、また違ったかもしれない。
その日は2次会まで行って日本酒まで飲んだ後だったし尚更あったかもしれん。
人生のタイミングは色々あるし、偶然も必然もわからないけど、
とりあえず平日の朝にびっくりするのはもう勘弁願いたい。

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