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思想・哲学・宗教・人物(My favorite notes)

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思想・哲学・宗教など心や意識をテーマにしたお気に入り記事をまとめています。スキさせて頂いただけでは物足りない、感銘を受けた記事、とても為になった記事、何度も読み返したいような記事…
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#チベット仏教

チベット仏教で正しい認識を究める

 チベット仏教と正しい認識 認識には正しいものと誤ったものがあります。 それは世間一般と一致する事で、誤解や錯覚は誤った認識、それに対し見た通り存在する視覚は正しい認識です。 チベット仏教を修学する僧院では、どの宗派も正しい認識が何であるかの探究を議論しながら学びます。その時にインドの戒師ディグナーガや戒師ダルマキールティの論理学や認識論に関わる著作を使用します。 大事なのは、お釈迦様は最初から正しい認識の方だった訳ではなく、様々な経験から錯覚や誤解や煩悩を取り除き、

先生の代わりに

伝統宗教の価値が薄れた現代は、 倫理的価値観から経済至上主義へと あらゆる事をお金に換算する、 「金銭的に価値がなければ価値がない」 と言っても過言ではない価値観が蔓延る 時代でもあります。 宗教団体が引き起こす事件や問題が多く、 宗教への信頼が失墜し、人の善意が 信用しにくいため、言いにくいですが 本来は宗教は倫理の実践のための、 それを裏付ける価値観、哲学を学べる 教育機関として代々機能する事で、 現代社会に受け入れられるべきでした。 今回意訳し

「四つの執着をなくす」という心の訓練 意訳

「全てを自分の思い通りに」と自他の成功と失敗に強く執着して時を過ごす方は、弱さから煩悩に負け怒りや冷酷さ、強欲さ、神仏や仕事の役職や権威などを傘に着た支配や排除という悪感情や、自他の名誉や恥、利益や損失、称賛や非難、楽や苦を娯楽とするので、身体はともかく心は地獄・餓鬼・畜生に住む不幸な方です 「自分の思い通りにしたいと執着する心」から自由になり、この人生を自他を傷つけず大事にする事に費やそうと努める方は「幸福な方、幸福な生を目指す方」です 「幸福な生を目指す方」は、経済的

ツォンカパ大師の縁起讃 意訳

先のガンデン寺座主やゾンカチューデ前僧院長、サキャ派の高名なリンポチェなど死亡が確認された後、死の瞑想状態に入られ数日遺体が腐敗しないという事がここ1ヶ月相次ぎました。 社会的な地位もあるお忙しいラマが、隠遁修行者のようなハイレベルの密教修行に至っておられるのは驚きでした。 前ガンデン寺座主は私はご縁があった程度でしたが、私の先生は直接チベット大蔵経を教わったりと深い師弟関係でした。 遅まきながら、恩師方への報恩の意味でツォンカパ大師の縁起讃の意訳をしました。 素晴ら

ジョナン派に伝わる「深甚なる法流百八の教え」

ジョナン派 クンガー・ドゥルチョク師(AD1507〜1566)はカカ・ジェツンタンバ法王の前世者です。師がまとめたこの 「深甚なる法流百八の教え」は、成就の八法流という、ニンマ派のゾクチェン・カダム派の道次第・サキャ派の道果(ラムデ)・マルパカギュー派のマハームドラー・シャンパカギューのニグマの六法・シチェの五道とチュー・ジョナン派とシャルプトゥン派のカーラチャクラ(六支瑜伽)・ウゲンの三金剛をはじめ、チベットに伝わる顕教・密教の教えを網羅したもので、ジョナン派だけでなく、ゲ

ツォンカパ大師の「功徳全ての元」 意訳

功徳全ての元(チベット語でユンデン・シルギュルマ)はゲルク派のゲシェである恩師からブッダガヤで授かりました。道次第の「恩師に仕える」から「密教修行」までを短くまとめてますので、覚えやすかったからです。 ちなみにその先生はインドの大学の助教授だったそうで、国からの年金が貰えるからとある南インドの僧院の電気代を支払っておられました。 途中から先生のお弟子方(もゲシェ)が合流され、インドの仏教聖地は危ない所があるからと人気のない朝早くは移動しない事など教わりました。 功徳全て

ツォンカパ大師の「修行の要の三つ」 意訳

チベットにおいて、いわゆる無上瑜伽タントラでの即身成仏を果たしたと有名なのは、カギュー派のミラレパ尊者と、ゲルク派のツォンカパ大師のお二方です。 この「修行の要の三つ」を説かれた事で、ニンマ派等チベット仏教の他の宗派のラマからも、「ツォンカパ大師は空性を正しく理解されている」と言われたという、大変大事な教えです。 ちなみに写真はパルデン・ハモ、ダライ・ラマ法王の護法神です。 修行の要の三つ 意訳 尊い恩師に礼拝致します 釈尊の教え全ての大事な所、勝れた菩薩方が称賛す

ツォンカパ大師の菩提道次第略論 意訳

ツォンカパ大師はチベット仏教ゲルク派の開祖でその教えは素晴らしく、その著作は優れた方々が訳されています。 ここではツォンカパ大師の「菩提道次第」の3部作ある中で1番短く普段の祈願として使えるものを意訳しました。 「諸悪莫作衆善奉行」 写真はラマからラマへと代々伝わる、ツォンカパ大師の聖遺物であるお袈裟の一部を譲り受けたものです。ご覧になられた方々に大師様のお加持があります様にと祈願致します。 「菩提道次第 経験からの詩」 (自他を過去・現在・未来と三世に渡り大事にする

チベット仏教ゲルク派で正しい認識を修学する ツォンカパ大師の高弟より

前回はニンマ派の僧院大学にて修学する場合、4年目で学ぶ課程などにあるテキストの紹介をしました。 これがゲルク派ですと、第2章は入中論の時に修学します。およそ9年目前後から、年に2、3ヶ月間集中してになります。ツォンカパ大師の高弟、ダルマリンチェン師のテキストを意訳して紹介します。 尊いラマに礼拝致します 2 (正しい認識と)理解する(対象である)煩悩のない清々しさと一切相智、(それぞれ)そこに到る道を解説するのに ① 概論② 詳説 ① 概論に 1 ディグナーガ師が著し

確定する認識という燈明 意訳 3

上のチベット語は 亡命先のインドにある、ニンマ派の僧院ナムドルリン寺の僧院大学の5年目の授業内容の一部で、現在意訳中の「確定する認識の燈明」を学ぶ事と、その解釈書をケンポ・クンサン・パルデン師釈で学ぶと書いてあります。この論書以外にもミパム・リンポチェのテキストはよく学ばれています。ここでは9年間で様々な経論の修学をされます。英語になりますが、興味のある方は是非サイトを見に行って下さい。 namdolling.net Ngagyur Nyingma Institute

確定する認識という燈明 意訳 2

前回のミパム・リンポチェの続きです。 ニンマ派の空の見解の意訳になります。 写真はネパールのお祭り、ティージ祭りにネパールの方からご馳走になったカレーです。大変美味しいかったです。 以下本文 ②(仏・菩薩が理解するように)声聞・縁覚の阿羅漢は人無我と法無我を理解するのか 一部の方々は声聞・縁覚の阿羅漢は(人無我のみを理解し)法無我を理解しないと言います 「(私の)五蘊」という五つの括りを(他と関わりない実体のある)「私」だけに属する存在などと把握する(錯覚上の)本体・

確定する認識という燈明 意訳

ニンマ派のミパム・リンポチェは近代ニンマ派の大学者、大変高名な師で、その著作は素晴らしい教えが数多く残されています。私の恩師からは、「仏教の初心者には分かりやすく、しかし熟練者にも考える余地があるように、同じ著作の中で説かれているのがミパム・リンポチェの教えの優れた点です」と教わりました。 ニンマ派の師ですが、ロンチェン・ニンティクを著したロンチェンパと同じく他空説中観の教えも受け継がれていたようです。他空説中観の教えを聞いた弟子の方が残された著作がリンポチェの全集の中に残っ

菩薩の宝石の首飾り 意訳

チベット仏教カダム派からの教えの伝統で有名な道次第(ラムリム)と心の訓練(ロジョン)。「百の心の訓練」という論書の中、1番トップに来るのが「菩薩の宝石の首飾り」です。 著者はチベットに入蔵されたインドのアティーシャ尊者、それを意訳しました。  アティーシャ尊者の高弟が観音菩薩の化身と言われるドムトゥンパ師ですが、チベット仏教各宗派観音菩薩の化身がおられるというか、強いご縁があるのを感じます。  写真は「心の訓練」の教えをダライ・ラマ法王猊下にお願いした時、法王猊下のサイン入

ターラナータ尊者の自空・他空の分別 3 意訳

ジョナン派の他空説中観の教えがどういったものなのか、今は海外で活躍されているジョナン派の恩師に尋ねた時に授かったのがこの教えでした。 「本当にあるから、煩悩をなくしていくと仏の性質が現れる」と、分かりやすく教えて頂いたので、私の中では普通の空の見解が 「煩悩に抗う為に錯覚・誤解を減らすための教え」、他空の見解が 「本来の良い性質が人にはそもそも具わっている、人の本質は善という教え」になりました。 また密教の教えで海外で活躍されておられるゲルク派の恩師は、 「第二転法輪では空は