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思想・哲学・宗教・人物(My favorite notes)

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思想・哲学・宗教など心や意識をテーマにしたお気に入り記事をまとめています。スキさせて頂いただけでは物足りない、感銘を受けた記事、とても為になった記事、何度も読み返したいような記事…
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2023年9月の記事一覧

貞慶『法相初心略要』現代語訳(三) 四分説について

凡例底本としては『大日本仏教全書』第八〇巻(仏書刊行会、1915)を用い、訓点や文意の確認のため適宜京大所蔵本を参照した[2]。 ()は補足、[]は文意を補うための補足で、いずれも筆者の挿入である。 〈〉は原文中の注や割書を示す。 四分について[四分説とは、識が] ① 相分(知覚される客体。識が対象として現れること) ② 見分(知覚する主体。識が相分である対象を知覚すること) ③ 自証分(識の自体分。これが変化して見分・相分となり見分を認識する。認識したことを一連の行為

貞慶『法相初心略要』現代語訳(二) 三性説について

凡例底本としては『大日本仏教全書』第八〇巻(仏書刊行会、1915)を用い、訓点や文意の確認のため適宜京大所蔵本を参照した。 ()は補足、[]は文意を補うための補足で、いずれも筆者の挿入である。 〈〉は原文中の注や割書を示す。 三性について[三性説とは、以下の通りである] 一、 遍計所執性 二、 依他起性 三、 円成実性 (一)遍計所執性 [遍計所執性とは、]凡夫の心が覚知する、色や声などの一切有[為]無[為][1]のすべて(諸法)である。これらは全て心の迷乱であって真

貞慶『法相初心略要』現代語訳(一) 三時教判について

はじめに 解脱房貞慶(1155〜1213)の作とされる『法相宗初心略要』(二巻、続一巻)は唯識初学者に向けた梗概書である。法相唯識のすぐれた概説書としては孫弟子にあたる良遍(1194〜1252)の『観心覚夢鈔』や『法相二巻抄』が知られ、解説を付した名著も出版されている[1]。しかし、『法相宗初心略要』は一般には知られていない。そこで本稿では、自らの唯識理解を深めるためにも試訳を成さんとするものであるが、自然誤った解釈も多々あると思われる。諸大徳の指南を仰ぐところである。 凡

安藤礼二『井筒俊彦 起源の哲学』/安藤礼二「空海 連載第十二回 第八章「平城」」

☆mediopos3237  2023.9.28 『折口信夫』(二〇一四年) 『大拙』(二〇一八年)に続き 安藤礼二『井筒俊彦 起原の哲学』が刊行された 安藤礼二の最初の著作 『神々の闘争 折口信夫』(二〇〇四年)でも 折口信夫の営為を完成させた重要な契機を与えたのは 井筒俊彦ではなかったかと示唆されているが 安藤氏は「折口信夫による神道、鈴木大拙による仏教、 井筒俊彦による一神教の創造的な解釈学、 そうした解釈学の系譜によって、 近代日本思想史にして近代日本表現史を

法華経とは

法華経も大乗仏教の基本と言われますが、江戸時代の超人富永仲基からは「効能書きしか書いておらず肝心の薬が無い」とか言われ、確かに読んでみても良く分からん記述が長々と続くので、その有難味も正直良く分からない。なので、少々長いですが、まとめてみました。 ■法華経が生まれた背景: ・釈尊在世の時代(紀元前4世紀ごろ)の仏教を「原始仏教」と呼びます。 ・釈迦入滅後(紀元前3世紀頃)、第2回仏典結集が行われた辺りで、大きく「上座部」と「大衆部」に分裂し(根本分裂)、更に約20ほどの部派