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本の学び

冷静と情熱のあいだ Rosso



この本を
みつけた頃は

ふたりの著者が
女性側から
男性側から
ひとつのストーリーを
つくりあげる

というスタイルが
わたしにとって
とても斬新だった

江國香織さんの描く
冷静な
クールな
アオイの佇まいに
憧れた


週に三日
ジュエリーショップで
パートタイムをこなし

仕事は
春の動物園の
動物のようだ
楽ちんで
少し淋しい

足しげく図書館に
通う

キッチンで
本を読み

ソファで
本を読み

散歩先は
一人になりにくる場所
サンタマリア•
デッレ•グラッツィエ教会
中庭回路の石壁に
腰をかけて
本を読む

静かな生活
穏やかな
過不足のない
とても上手く
流れていく日々


アオイの生活スタイルは
たちまち
わたしのロールモデル
になった

アオイの設定が
わたしと同い年
ということも
影響を受けた理由だ


江國香織さんの描く
背景が大好きだ

弱い風が
額をながれていく

雨の甘い匂いが
鼻をくすぐり
こまかい雨が
落ちてきた

たちまち土が
匂いたつ


ミラノの湿度が
わたしの部屋にも
立ちこめる


だからわたしは
5月
雨の日には
この本が
読みたくなる


物語の翌々年
わたしもドォーモから
フィレンツェの
街並みを眺めた

まさに
恋人たちの
聖地だった

あおいの気持ちに
想いを重ねた

若さゆえの
歯がゆい頑なさ


わたしを含め
おそらく
この年代の女性は
精一杯の頑なさで
自分を守っている



後悔はしない
後悔は
使い果たして
しまったのだ
何年も前に



今ならわかる
頑なさは不自由だ
苦しくて孤独だ

何度読んでも
切なくて
切なくて

胸が苦しくなる

あれから
同い年のあおいは今
どんな人生を
送ってるのかな?

この本は一生
わたしの本棚に
居続ける

わたしの本棚の
名作シリーズに

いつか
愛娘や
愛娘の愛娘が
探してくれることを
密かに願ってる



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