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テレグラフにいた #47

# 47
 未来はわからない。終わりはいつもすぐそばにある。
 次の火曜日も、その次の火曜日もジーンは学生棟の前に現れなかった。僕は新宿に行き、あてもなく彼女を探し歩いた。駅前では誰もが携帯電話を振り回し、僕と同じように誰かのことを探していた。日が落ち、次第に雨が降り出して、僕はジャズを聴かせる喫茶店に入った。もちろんそこにも彼女はおらず、店内では外の雨音を掻き消すようにチェット・ベイカーの「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」が流れているだけだった。

 そして、いつしか僕は彼女を探すことをやめた。

(続く)

二千二十年四月十一日。
少し長い小説を公開します。
これから毎日更新して、多分五月が終わる頃に終わります。

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君は友の、澄み切った空気であり、孤独であり、パンであり、薬であるか。みずからを縛る鎖を解くことができなくても、友を解き放つことができる者は少なくない