私の大切な2人のお巡りさん

久しぶりにしっかりと恋をしている。
ずっと気分が悪い、
吐いてしまいそうだ。
立っていられない、
声を上げて泣いてしまいそうだ。
あぁそうだったそうだった、
恋愛は、私にとって、いつも、
こんなにも苦しいものだった。


私には、
自分を殺そうとして失敗した経験がある。
たぶん、いや絶対、
死ぬ勇気なんてなかったけど、
もしかしたら死ねるかもって思って、
そういう行動に出た。
見ていた誰かが通報してくれたんだろうね、
お巡りさんやレスキュー隊の人が
ヒーローのようにやってきてくれて、
私をロープで吊り上げてくれた。
そのまま私は保護されて
父親の迎えを警察署で待つことになった。
迎えに来た父は冷静な感じだったけど、
車で父と私を駅まで迎えに来てくれた母は、
たぶん泣いていた。
そんな風にたくさんの人に迷惑をかけて
親不孝でしかないような行動に出たことを、
今までもこれからも本当に申し訳なく思うけど、
でも、忘れてしまいたいわけじゃない。
だって、そのときの私は、
そうすることでしか自分を救えないと思って、
もうどうしようもなくて、
そういう行動を選んだのだろうから。

そしてその過去は
どす黒い塊になって、
私の心にずっと居座り続けている。

そのどす黒い塊を持ったまま
生きていくことは、まあできる。
普段は隠しておけばいいし、
隠す術も身につけたつもりでいる。
でも、
そのどす黒い塊を持ったまま
恋愛をすることは、あまりにも難しい。
だんだん隠しておけなくなるから。
その黒くて重たい塊を、
一緒に持って欲しいとは言わない。
私の過去だから、私がひとりで持つ。
でも、おねがい、
私の塊を見ても、どこにも行かないでほしい。
そう願ってしまい、
ずっと隠していた塊を見せてしまう。
そしたら私はまた、ひとりになる。

ASDの人と付き合ったとき、その彼は、
私の塊を見てもどこにも行かなかった。
どこにも行かないどころか、
表情ひとつ変えなかった。
私をまるごと受け入れてくれる人も
この世には存在するんだって思ってた。
でもたぶんそういうことではなくて、
ASDの自閉的な特性だったんでしょう。
私を含め、自分以外の人に興味がないってこと。
そんなASDを抱えているのは、
女性より男性の方が多いと聞く。
それでもやっぱり、ASDを抱えた男性よりも
ASDではない男性の方が多いのは当たり前で。
だから、大体の男性は、
私の塊を見て、とりあえず一歩引く。
そこからはあっという間で、
気付いたら私のそばからいなくなっている。
そして私は泣いている。


私の塊を見ても
どこにも行かなかったASDの元彼のことを
ずっと忘れられなかった。
でもひょんなことから
やっと、
好きだなと思える人に出会った。
顔はタイプじゃないし背も高くないけど、
とにかく面白くて、
私のことをずっと気にかけてくれる優しい人。

そんな彼は、お巡りさんをしているんだって。
私の周りにお巡りさんをしている人はいないから
なんか現実味がなかったけど、
凄いなぁって心から思った。
でも私は、それを聞いて、
自分がかつて自分を殺そうとしたことを、
鮮明に思い出してしまった
のです。
そんな強烈な出来事、
忘れるわけがないと思っていたし、
どす黒い塊はいつも心にあったけど、
うまい具合に記憶というのは薄れてくれていて、
普段の生活の中では
特に思い出したりしなかったんだけどな。

会話の中で、私はうっかり彼に、
私の塊を見せてしまった。
いや、違うな、
見て欲しかったんだと思う。
ヒーローのように
私を助けてくれたあのお巡りさんと彼を
重ねてしまったのだと思う。

私の塊を見た彼は一歩引いてしまったと思う。
そう感じている。
ぜんぶぜんぶ見せたわけじゃないし、
私の考えすぎなのかもしれない。
できたらそうであってほしいけど、
私はもう、怖くて、
吐いてしまいそうなくらい苦しくて、
どうしていいかわからなくなってしまった。
好きだと思った人が、
何処かへ行ってしまうのを
また泣きながら見ないといけないのかな。
こんなこと思ったらダメだってわかってるけど、
そんな風になるなら死んでしまいたいって
思ってしまっている。
またこじらせてしまっているね。



でも私は、
私自身に思い出してほしいから、叫ぶ。

「ねえあんずちゃん、泣いてていいの?
こじらせ街道を引き返す決心を
したばかりじゃない!」

こじらせたまま、
また同じような恋愛を繰り返すのは嫌だ。
だから泣かないで、
今やれることをやろうよ。
吐いてしまいそうなら、
まずは吐いてしまえばいい。
立っていられないなら、
まずは膝から崩れ落ちて大声で泣けばいい。
それからでいいから、やれることをやろうよ。
塊を見ても、どこにも行かないで欲しいなら、
ずっとそばにいたいと思わせるくらい
素敵な女性になるしかない
んだよ。
塊を持っていることなんて関係ないくらい
そんなのどうでもよくなるくらい
素敵な女性になればいい
んだよ。


ちょっと体調が悪いから
しばらく連絡できないと彼に伝えた。
ホントのことだしね。心が元気じゃない。
こんな状態で連絡を取り続けたら、
きっとまた自分を殺したくなる。
吐いて、泣いて、体調が良くなってから、
もう一度彼に連絡しようと思っている。
そのとき、
彼がもう私のそばからいなくなっていたら、
もう仕方がない。サヨナラだ。
でも、彼がまだ私のそばにいたら、
もう少しだけ、彼と、彼を好きになった自分を
信じてみませんか?
あの日あのお巡りさんが
私の命を救ってくれたから、
今こうしてまた素敵なお巡りさんに出会えて、
私は本当に嬉しいって伝えたい。
どす黒い塊を見せるのではなく、
素直なその想いだけ伝えたらいい。
それを伝えて、
彼が私のそばにいたいと思ってくれるかは
彼以外誰にも分からないけど、
こじらせることなく真っ直ぐに素直に
その想いを伝えることができたら、
どす黒くて重い塊を
やっと手放すことができる気がする。


あぁ、やっぱり私はいま、
久しぶりにしっかり恋をしている。

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