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愛しさのフィルター #幸せをテーマに書いてみよう

ある晩のこと。

23時半を過ぎて、ああそろそろだなと二階にある寝室から階段を降り、洗面台の前で歯磨きをした。

この後、主人を誘っちゃおうかな。とか思案しながらいつも通り、奥歯、裏側、表面の順に歯を磨く。

歯磨きを終えて階段をのぼる。寝室の扉を開けると、主人が蛍光灯の明かりの下でうつ伏せになって眠っていた。

わたしは不眠の治療のために睡眠薬を二種類処方されているが、それらを飲んでもなかなか寝付けないことが多々ある。一方主人はすぐに眠れる人だ。

わたしの歯磨きは家族の中では長い方だけど。

寝つき、いいなぁ。と感心した。

そしてちょっと空振りみたいな気分にもなったことも告白しておく。


その寝顔があまりに無邪気で。
しばらく見入っていた。
男の子みたい。
何の翳りもない。
そこに平和の象徴があるみたいだった。

あまりにも愛おしくて、サイレントカメラを起動する。

iPhoneの画面には、33歳の男が寝ている光景が映し出されている。

わたしが見てる光景と違う。
ん?なんで?
角度?

アングルをいくつか試してみるも、
しっくりこなかった。

違和感しかなくて、カメラアプリを落とした。

そしてまたその寝顔に見入る。
わたしは微笑んでいた。確かに。

触れたいと思ったけど、その平安を乱したくない気持ちが勝った。触れるでもなく、しそびれてしまったおやすみのキスを一方的にするでもなく、ただ眺めていた。

カメラには映らないものがわたしの目には見えてた。

主人は塗装職人だ。人間の目がいかにいい加減で騙しやすいかよく教えてくれる。そしてわたしは目が悪い。0.03とかじゃないかな。しばらく測ってないけど。

その時も眼鏡をかけていた。その下に、色眼鏡があるんだな、と自覚した。愛しさを纏って、眠る主人を眺めた光景は確かにあたたかかった。

妻補正、なんて。

日常にふと訪れるこういう瞬間が、わたしは幸せのひとつだと思う。

倍にして返すくらいの文章を書くよ!!!!!