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詩集『アプリコットジャム』

19
杏子とお砂糖、煮詰めました。
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2019年9月の記事一覧

【詩】雨、それは降り注ぐ嫌われ者

宙から降り注ぐそれは
恵みか はたまた憂鬱の象徴か

天が水を注いでくれなければ
ただ渇いていくだけなのに
人は勝手にそれを疎んで
なんとまぁ傲慢なことでしょうか

夜の静寂を湿らす雨音を好むくせに
朝から雨が舞っていると体が怠いと嘆く

憂鬱な朝が快晴だと死にたくなるくせに
涙が滲む帰り道に雨が降っていると安心するんだ

人の勝手。
そりゃ雨だって好き勝手降るさ。

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【詩】美しく生きたいって誓ったんだ

【詩】美しく生きたいって誓ったんだ

力を持つ人が辿り着いた答え
冷たい暗闇に慣れた目を潰した

笑えることはいいことだよ
だけど
笑えなくても責めないでよ

這いつくばってそれでも進んで
欲しかったものを手にした人たちが
幸せそうに笑いながらこっちこいよって
手を振るから
僕は。

光の中にいる人たち
光に焼かれて立ち竦む僕
強く刺せば影は深い
何が悪かったのかな
目が眩んで痛いよ

誰でも強くは居られないのに
誰もが強さを

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【詩】夜の珈琲みたいに

【詩】夜の珈琲みたいに

深夜 僕はコーヒーを淹れた
秘密みたいな香りがした

僕ら もう大人だからさ
背伸びみたいな言い訳をした

正しくある必要なんて無いよ
そもそも君の云う正しいって何だい?
それがもし「間違いのないこと」ならば
ここにある命は許されると思うかい?

コーヒーは甘く黒い色を浮かべて
静かに温度を失っていく
眠れない夜に温い夢を啜った

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