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▶︎飛行機から見える小さな島

「ねぇ、見て!島が見える。」

どれ?と窓の方に顔を向けるも、通路側の席からはその島の姿を捉えることは出来ない。こちらからは雲の中を飛んでいるのであろう、白いモヤがただ窓の外に見えるだけだった。

「あれどこの島かなあ。それにしても綺麗な海だね。ワクワクしちゃう。」

こちらに話しかけているのか、はたまた独り言なのか、私にははっきりと判断することは出来なかった。それでも、キラキラした眼でこちらを見る彼女の様子からすれば、きっとその光景を共有したがっているのは間違いないだろう。

「こっちからは見えないの。写真、見せて。」

窓の外にカメラを向けていた彼女に、私はそう言葉を返す。私は彼女からカメラを受け取ると、カチカチッとボタンを操作した。彼女の言う通り、画面の中のその景色は確かに美しかった。島の周りに広には、水色から青色に変化を見せるグラデーションの海。この目で直接見ることが出来ないのが惜しく感じた。

「本当、綺麗だね」と言葉を返すと、彼女は隣で嬉しそうに笑った。キラキラとしたその笑顔に向けて、私は思わずシャッターを切る。

そうして私たちの、旅が始まった。

***

お花見企画に参加いただきました、旅野そよかぜさんの月替わり企画 #画像で創作5月分 に参加しました。今回は、実際にあった飛行機でのワンシーンを脚色し、小説風にアレンジして書いてみました。

当時、飛行機に乗った私たちが向かったのは中国、上海。あの時彼女には、どんな景色が見えていたのでしょうか。(実際に小説のような会話をしたのは日本に帰る飛行機の中でした。)

今はただ『旅行』がまた普通に楽しめる日が来ることを願うばかりです。

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