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映画『きさらぎ駅』/所感、考察

とうとう見つかっちゃったか…(後方彼氏面)

『きさらぎ駅』
公開日 :2022年6月3日
上映時間:82分
監督  :永江二朗
脚本  :宮本武史
公式サイト

※以下ネタバレが含まれるため、未見の方はご承知ください。

*****

・所感

先日からNetflixおよびアマゾンプライムで配信が始まり、話題を呼んでいる映画、『きさらぎ駅』。
NetFlix映画ランキングで1位に躍り出、Twitter等でも感想を目にする機会が増えた。

うっとおしいことこの上ないのを重々承知で言わせてもらいたい。
私は公開当初から推してた。
…この勢いのまま語らせてもらおう。
公開時、私は渋谷の映画館に赴き、どんなもんかと斜めの姿勢で席に着いた。
この映画の主題は言うまでもなく『きさらぎ駅』、タイトルそのままだ。
きさらぎ駅は2004年に2ちゃんねる掲示板へ書き込まれた、「はすみ」という女性ユーザーの不思議な体験談である。
後追いの形で類似の体験談もあちこちで発生し、現代を代表する”都市伝説”になってしまった。
このあたりの基本的な情報は、少しでもオカルトに造詣のあるネットユーザーであればもはや常識であるといっても過言ではないだろう。
それほどにこのきさらぎ駅という題材は手垢がついていて、嚙みつくしたガムのような題材に感じられた。
くわえて邦画ホラーに見られがちなチープな雰囲気。キャストにはアイドル。
私は観る、観るけどもしB級ホラーが好きじゃなかったら観ないかな。
そんな、個人的に踏みたいタイプの見えている地雷だった。
映画館の入りを見るに、客層は同じようなホラーオタクかお化け屋敷感覚のカップルが大体二分していた。
このようなホラー映画は大抵上映館数が少なく、MOVIX等のあまり大きなところでは扱わない。
つまり流れでふらっとというより、ちゃんと狙って見に来る客が多いのだ。
そうすると大体上記したようにオタクかカップルが来る、というのが定石なのである。

映画が始まり、構成を徐々に理解する。
あの一連の書き込みをリアルタイムに行うのではなく、「はすみ」=葉山純子の体験談として聞き取りを行う。
ここでFPS(一人称視点)を入れてきたところは、近年のホラー映画のブームに乗っかって観客を飽きさせないという意欲が感じられる。
映像技術的にすごく活きていたかと言われると微妙なところだが、体験談である、というところと後半にかけてのギミックに説得性が増すので構成には一役買っていただろう。
無垢な女性、粗暴な若者とそのグループ、考えなしの中年男性とホラーの定番どころをそろえ、もうかなり序盤で電車も駅も関係なくなってくる(元の書き込みも線路を歩く流れは同様だが)。
あれやこれやと低予算なCGやオーバーな演技でのイベントが起こり、「老人」「トンネル」「車」等原作のキーワードを拾っていき、ついに原作の先の展開が訪れ、純子はなんとか現実世界への帰還を果たす。
あれ、案外早いな……と思うもつかの間、この映画の主人公は純子ではない。
インタビューを行っていた大学生・春奈は、きさらぎ駅の存在する異世界への接続方法に思い至ってしまうのである。
ここでまさかの「異世界エレベーター」が登場。ネットの有名怪談同士が夢の競演。
シリーズ物の別作品の主人公がカメオ出演していたような嬉しさがある。
そしてそれを実践した春奈の異世界入り、"二周目"とか"RTA"とか言われていた後半パートへの突入である。

このころの私は恐らく、すでにちょっと前のめりになっていた。
いいのか、ホラー映画で二周目なんてして。
でもそんなの絶対面白いな……
あとはご覧になった方ならご存じの通りである。細かなフラグで最適解を選び、パーティーメンバーを有効活用しつつガンガン進んでいく。
車のおじさんを殴り倒したあたりで、私は感じていた。
映画館の一体感がすごいのである。
特に恐らく私と同じ、斜に構えていたホラー好きのオタク達のワクワク感。応援上映でもないのに。
『CABIN』を観た時と似ている。または『コワすぎ』シリーズにも通ずる。
ホラーの文脈の上に成り立つ、ホラーだからできる笑いの空気だ。
(余談だが、上記2作品も今作も、ラストに現れる存在がクトゥルフっぽいのはなんなのだろうか。相性の問題?)

「きさらぎ駅をテーマにホラー映画撮りましょう」と企画があがり、ループ物にしようと決めてこの展開を作り上げた制作陣には脱帽である。
怖いかと言われれば、怖くはない。リアリティもない、映像の豪華さもない。
あるのは爆弾級のアイデアである。このアイデアで勝負に来ている。
しかし願わくば、このプチヒットに乗じて2とか作らないことを祈る。

・考察

いくつかの疑問点や時系列などを簡単にまとめる。

〇「はすみ」が掲示板に書き込みをしている様子がない
リプレイは一人称であり、嘘が混じる可能性があることは展開から明らかだが、電波が通じないという描写は春奈の際にもあったため矛盾。
まぁ一々携帯で掲示板に書き込む描写は助長だし、都合が悪いのだろうけど、となると春奈はなんで純子を訪ねてきたってことになる。
映画内だと純子はただの神隠しの被害者で、書き込みはない設定だったりしたっけ?(ここ後で確認します)
OPで書き込みのイメージ画像のようなものが使われていたし、書き込み自体はあったと解釈していたが…
苦しめに解釈するならば、純子は恐らく異世界に飛ばされてから脱出までの間にあの体験を何度も繰り返している。
その過程でたまたま電波が通じるループが存在し、掲示板に書き込みを行った。
だがその回では脱出することができず、現実世界の書き込みだけが残った。
この場合は脱出した純子に書き込んだ記憶がないことになるが、あの様子だと異世界の法則等なんとなく把握していたようだったし特別問題視していないのかもしれない。

〇電車内の人々の来た順番
ほとんどが不明。
使用する携帯電話の機種などで特定できたりするんだろうか…
だが、宮崎明日香が純子よりも前に来たことは作品内の描写から恐らく確定ではないだろうか。
純子は明日香の高校の新任教師であるが、明日香はそのことを知らない。
また、純子のセリフからインタビュー時の明日香の母親はそこそこ高齢であることがわかる。
17、8歳の明日香の母親は大体40歳代頃と推察でき、純子が電車に乗ったタイミングから現在までの数字(19年)を足してみても60歳代がせいぜいである。わざわざ高齢であることを強調するほどの年齢であるとも思えない。
よって、明日香がきさらぎ駅に迷い込んだ何年かのちに純子が教師となり、彼女もまた電車に乗ってしまったというのが順序としては正しいのではないかと考える。
ついでにだが、1周目の映像で見たメンバーはあくまで純子が脱出した際の記憶のため、神隠しにあっている7年間の間にも多少メンバーの入れ替わりはあったのではないだろうか。


取り急ぎ。
他に気が付いた点などあれば随時追記を行う。

以上。

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