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コンサルと法人営業

戦略コンサルタントのアップルです。

今回はコンサルの営業の特徴、またそこから派生して「法人営業の定石」を本に書いてあった内容をもとに紹介します。コンサルはどういう営業をしているのか、法人営業の定石とは何かについて興味のある方はぜひご覧ください!

コンサルの営業の特徴とは?

当たり前ですが、法人サービスであるコンサルティングサービスは法人営業が起点になります。クライアント候補となる企業にアポを入れ、関係構築や課題ヒアリングをし、提案書を作っていきます。

コンサルティングファームの特徴は、基本的には営業部門というのが存在せず、かつ、役職上位のコンサルタント(パートナー、プリンシパル、シニアマネージャーなど)が営業を担うという点です。営業職として入った人が営業を担うのではなく、コンサルタントとして入った人のうちコンサルティングスキルが高く上層部まで登りつめた人が営業を担うということです。つまり、営業の経験がない、営業をする気などさらさらない、営業に苦手意識があるという人も、ある日突然営業のミッションとノルマを負うことになるのです。これは数ある法人サービスの業界の中でも特殊ではないかと思います(多くの法人サービス会社には営業部門が存在するので)。

かくいうアップルも現在では法人営業をしていますが、自分が社会人になって法人営業の仕事をすることになるとはまったく思っていませんでした。前職も営業の仕事ではないですし、ファームに入った当初は営業を担うポジションまで昇進することなど想像もしていませんでした。学生の頃は営業のような仕事はむしろ不向きだとも思っていました。そんな奴がなぜか営業の仕事をしている。それがコンサル業界の営業の実態です。

このように、コンサルの営業はコンサルティングの経験を積んだ人がコンサルティングの仕事の延長線上でやるものであるため、営業手法そのものについて研究したりスキルを磨くことが手薄になりがちだと感じています。「既存客については、コンサルでいい仕事をしていればおのずと売れるだろう」「新規客についても、鋭い論点や仮説を盛り込んだ提案書を作れば売れるだろう」というノリで営業をしている人が多いように思います。

法人営業の基本を改めて

アップルも然りで、これまで営業というものに向きあったことがほとんどありませんでした。営業に関連する本を読んだことは皆無ですし、自分なりの営業術を研究したこともありませんでした。しかし、最近はもっと営業力を高めたいと思うようになり、改めて営業の基本を勉強しながら自身の営業スタイルを見つめなおしてみようと考えているところです。

そんな中で手に取った「無敗営業」(高橋浩一著)という本が、オーソドックスながらも法人営業の基本や要諦についてよくまとめられていたので、その内容を簡単に紹介したいと思います。

印象に残った4つのポイントに絞って、コンサルの営業でどういうことが起こりがちかという事例も交えながらご紹介します。

(紹介する4つのポイント)
1.bantchというフレームワーク
2.法人営業が戦っている3つの相手とは?
3.営業ハイパフォーマーの勝ちパターンとは?
4.提案までに踏むべきプロセス

1.bantchというフレームワーク

本書の中で紹介されていたフレームです。たぶん営業の仕事をしている人の多くが知っているのだと思いますが、アップルはお恥ずかしながら初耳でした。bantchとは、以下の英語の頭文字をとったものです。

 b 予算
 a 決裁者
 n ニーズ
 t タイミング
 c 競合
 h 人員体制

これは法人営業で何かしらの提案をする場合に必ず押さえておくべき6つの事項をまとめたものです。確かにこの6つはコンサルプロジェクトを売る際にも不可欠な要素だと思います。

このうち手薄になりがちなのが、「予算」と「タイミング」と「競合」だと感じます。

「予算」
いろいろ提案をぶつけた後に「すいません、やっぱり予算が捻出できませんでした」となるときがありますが(お恥ずかしながらアップルもたまに)、これはお客様の懐事情(=使える予算)を先んじて確認できていないからです。お財布事情をできるだけ早めに、かつ正確に把握するのは、法人営業においてとても重要です。「今いくらもってますか?いくら使えますか?」と正面切って聞くのが心理的に憚られるのが予算把握がおろそかになる原因なので、間接的な質問でうまく聞き出したり、周辺情報から仮説・見立てをもつといった”テクニック”をもつことが重要だと感じます。

「タイミング」
また、タイミングも曲者です。特に戦略コンサルティングのようなサービスは「不急じゃないか」とみなされることも多く、検討が先送りになることもままあります。極めて緊急度が高い課題があり、今すぐにでも外部コンサルを使って解決したいという話なのか、それとも重要度は高いが緊急度はそこまで高くないから1年くらいの時間軸でじっくり検討したいという話なのか。前者だと売れる確率は高いですが、後者だとなかなか売れません。したがって「売れるタイミングなのか」「顧客の課題は緊急度がどれくらい高いのか」を先んじて把握することは、営業の”構え”を作る上で大事ですが、つい性急に売り込もうとして把握するのがおろそかになりがちだと感じます。

「競合」
そして競合。明確にコンペになっている時には、競合が何社いるかを把握すると同時に、おそらくあの辺の会社が入っているだろうなという見立てを立てますが(時にはお客様が教えてくれる)、コンペじゃないときの競合の把握はおろそかになりがちな印象があります。特に既存客だと、競合は多分入っていないだろうと思いこむバイアスがかかるので危険です。しかし実際には知らないところで競合が入ってきていたり、入ってはいないまでも競合が提案活動を仕掛けてきているケースはあります。コンペでない場合でも、常に競合の影はちらついているという前提に立ち、競合状況をそれとなくお客様に聞いてみるのが吉でしょう。

 2.法人営業が戦っている3つの相手とは?

本書では、営業が戦っている相手には3つあると整理しています。

1つ目は競合です。これは自明で、コンペのときも、そうじゃないときも、競合にどう勝つかはもちろん大事です。

2つ目は、「今やる必要があるか」です。競合は不在で、当社一本で発注を検討してくれているときでも、発注者は常に「うーん、本当に今発注する必要があるかな?」と悩んでいることは多いです。上記のとおりコンサルの営業においてもこの手のケースは非常に多いと感じます。

3つ目は、「内製できないか」です。わざわざお金を払ってまで外部に発注しなくても、自社内でできないか、という対案です。これも常に付きまといます。戦略コンサルティングで言えば、顧客のカウンターパートに戦略ファーム上がりの中途社員が一定数いる場合、戦略ファームに発注せずその社員たちに戦略検討をさせた方が合理的ではないか、との意識が働きます。内製というオプションに対して「内製のオプションは確かにあるが、XXXという理由により、それでもお金を払って我々に発注すべき」というロジックが必要になります。

①競合は誰でも意識しますが、②タイミングと②内製はふと意識から外れがちです。だからこそ、営業するときには常に頭の片隅に置いておき「今でしょ!なぜなら・・」「やっぱりうちに頼むべきでしょ!なぜなら・・」というロジックを常に言えるようにしておく(かつ、提案に盛り込む)ことが大事だと感じます。

3.営業ハイパフォーマーの勝ちパターンとは?

営業のハイパフォーマーは、顧客が課題を整理したり、提案依頼(RFP)を作る段階(=上流工程)から相談に乗っており、だからこそ受注確率が高い(半ば出来レースの中で勝つ)というものです。定石ですが、改めて強く認識しておくのが大事だと感じました。

逆にローパフォーマーは、相見積りをとる段階やコンペの段階(=下流工程)で声がかかります。ひどい場合は、当て馬として提案だけさせられます。当然受注確率は低くなります。

では、上流工程から関与させていただくためにはどうすればよいのか?コンサルで言えば、「顧客との間で高い信頼関係を築く」、もしくは「プロジェクトのデリバリーを切れ目なくやっておく」ことが重要です。特に後者の「切れ目なくやっておく」が重要。コンサルティングプロジェクトを通じて長期間クライアントのキーパーソンと接していると、新たな課題をいち早く察知することができ、上流工程から関われる確率が飛躍的に高まります。

プロジェクトのデリバリーをやりながら新たな課題を発見・定義し、その課題を解決するための別のプロジェクトを提案・受注し、またそれをデリバリーし、また新たな課題を発見し、・・というサイクルは、やはりコンサルティングサービスの勝ちパターンだと思います。

4.提案までに踏むべきプロセス

課題をしっかりヒアリングした上で商品を提案する「課題解決型営業」の重要性はもはや常識になっていると思いますが、ともすると「課題に対して即提案」をしがちではないかと思います。

本書では、提案に至るプロセスを、

①課題を引き出す
②課題を整理する
③提案の要件を定義する
④提案する

と4ステップに分解しており、この手順を着実に踏むことが大切だと説いています。「課題に対して即提案」は②と③をすっ飛ばしているということになるわけです。

②は引き出した課題を整理・構造化したり、優先順位付けするプロセスです。本書では、お客様自身が課題が整理できていないことが多いため、課題を整理・可視化するプロセスには大きな価値があると説いています。その上でその課題解決のための提案の要件を固めるのが③です。提案において何が特に重視されるのか、予算はどれくらいか、などを具体的に顧客との間で固めていきます。

コンサルティングプロジェクトの提案でも、基本的には①~④のプロセスを踏みますが、②や③はしっかり意識しておかないと手薄になりがちだと感じます。特に③の提案の要件定義をすっ飛ばすと、的外れの提案となり、苦労して作った提案書が水泡と帰すことになるので注意が必要です。


今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!


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