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コンサルティングファームが先取りしてきた働き方の制度

戦略コンサルタントのアップルです。

コンサルティング業界で長年働いていると、ふと「最近流行っている会社の仕組み・制度って、コンサルティングファームにはもともとある「常識」だよな」と思うことがしばしばあります。

そこで今回の記事では、世の中で流行る前からとっくにコンサルティングファームには導入されてましたよという働き方に関する仕組みや制度を5つご紹介しようと思います。最後に「なぜコンサルティングファームではいち早く新たな制度が導入されるのか」という要因についても軽く考察します。

①ジョブ型雇用

ジョブ型雇用がここ2~3年でかなり話題となり、実際に導入を進める日本企業も増えてきました。メンバーシップ型雇用がいまだに中心の昔ながらの大手事業会社に勤めている方にとっては、ジョブ型雇用へのシフトはパラダイムシフトに感じられるのかもしれません。その点、コンサルティングファームは究極のジョブ型雇用だと感じます。

というのも、役職別の「ジョブ」が極めて明確に設定されているからです。パートナーならセールスとファームビルディング、マネージャーならプロジェクトのデリバリー責任・PMロール、コンサルタントならプロジェクトの中での重要なモジュールの主体的遂行、アナリストなら論点に仮説や答えを出すための調査・分析。こういった感じです。

このジョブの明確さは、コンサルティングファームで働く上でとても気持ちが良い点です。ジョブが明確故、各自の持ち場が明確ですし、「役職は付いているけど何をしているかわからない」という窓際っぽい人は基本的には発生しません。

②社内労働市場

最近ではソニーなどの一部の事業会社が、ポジションの公募制を導入しています。人事部がすべてを差配するいわば「計画経済」アプローチではなく、空いたポジションに対して手を挙げた人が競いあうという「市場経済」アプローチの導入です。言い方を変えれば、部分的に社内に労働市場が導入されつつあるということです。

この社内労働市場もコンサルティングファームの特徴です。パートナーがプロジェクトを受注すると、まずどのマネージャーをアサインするかを決めます。稼働が空いている中でもっとも優秀、あるいは仕事がしやすいマネージャーを選ぶのです。このようにパートナー(需要)とマネージャー(供給)の間に労働市場があります。そして次にマネージャーがコンサルタントやアナリストをアサインします。3名のメンバーで実行するプロジェクトの場合、稼働の空いているコンサルタント・アナリストの中で、最も優秀あるいは仕事がしやすいメンバーを3人選ぶのです。マネージャーとコンサルタント・アナリストの間にも同様に労働市場があります。

社内労働市場の利点は透明性・公平性があることです。選ぶ方も好きなメンバーを選べるし、選ばれる方は少しでも良いプロジェクトにアサインされるように実績・成果を上げようとします。

③社内副業制度

社内副業も最近では増えてきました。20%の範囲内で別部署の仕事を手伝うことができるといった制度です。これに類する制度もコンサルティングファームでは従前からあります。社内副業とは言いませんが、プロジェクトワークに余裕があるときや稼働が空いているときには、自ら手を挙げてファームをよくするための活動(ファームビルディング)や、案件のマーケティングのサポートをするのが一般的です。

そうした活動に従事することが人事評価上加点要素になるというのもありますが、そうしたインターナルなプロジェクトに関わることで経験の幅を広げたりスキルアップすることが主たる動機付けとなっています。

④テレワーク

コロナをきっかけに急速にテレワークが広がりました。今では多くの会社が取り入れているテレワークですが、これもコンサルティングファームは先んじて取り入れていました(ファームによって濃淡はあると思いますが)。

アップルが所属しているファームでも、裁量労働制ということもありオフィスに出社する時間にはある程度の裁量が認められていましたし、「午前中は家で仕事をして、午後から出社する」というようなワークスタイルはコロナ以前からやっていました。zoomなどのオンライン会議ツールも、ずいぶん前から活用されていたと記憶しています。

⑤フリーアドレス

フリーアドレスもコロナ以降に急速に広がりました。全員が毎日出社するワークスタイルではなくなったので、一人に一席用意するのはスペース(オフィス賃料)のムダである。だとすればフリーアドレスにして、ついでに平均出社率を想定の上オフィスもダウンサイジングしてしまおう。こういった考えで最近フリーアドレスに切り替えた会社も多いことでしょう。

このフリーアドレスも、常駐プロジェクトが多いコンサルティングファームがいち早く取り入れたように思います。客先への常駐メンバーが多いと、一人に一席用意するのはスペースの無駄のため、フリーアドレスが合理的だからです。またコンサルティングファームは人の出入りも激しいので、固定席だとしょっちゅう座席表を改訂しなければなりません。そういう手間を回避するためにもフリーアドレスの方が便利です。


以上5つご紹介しました。他にもありそうですが、パッと思いつくところは以上です。このようにコンサルティングファームは、会社の制度・仕組みを先取りしている側面があります。おそらく、不断に生産性や効率性を追求するカルチャーがあるからこそ、良い仕組みや制度は世の中に広がる前に既に取り入れているのでしょう。また、コンサルティングを通じて世の中の先端の技術や仕組みに触れるため、それに触発されて自社に導入するというメカニズムが働いているのかもしれません。

未来の会社の仕組みや働き方を占う上で、コンサルティングファームが目下どのような新しい仕組みや制度を導入しているか/しつつあるかを調べることは、意味があるかもしれないです。


今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!


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