近現代イタリアのピアノ曲名曲紹介

皆さんこんにちは。
今月は、20〜21世紀にイタリア人作曲家が書いたピアノ曲を紹介します。
今回紹介するのは、過半数が存命の作曲家の楽曲です。今後新しい曲が発表されたら、続編の記事も書いていきたいですね。


イタリア人作曲家は、オペラの作曲家や、鍵盤楽器では古典派までの時代の作曲家の知名度は高いといえます。
しかし近現代の作曲家においては、レスピーギ(1879-1936)の「リュートのための古風な舞曲とアリア」は日本国内で演奏される機会が多いものの、レスピーギの別の作品や、他の作曲家は知らない方が多いのではないでしょうか。
解説はしませんが、彼の「6つの小品」はとても綺麗な作品です。
https://youtu.be/T19mqDSR5ws


以下、作曲家の生誕年が古い順に楽曲紹介をしていきます。
G.マリピエロ作曲 秋の前奏曲
https://youtu.be/NLxTwN4Kf0w
マリピエロ(1882-1973)はイタリアを代表する新古典主義の作曲家の一人で、イタリア古楽の研究者として楽譜の校訂も行った人物です。
マリピエロは、モンテヴェルディやフレスコバルディといった、古い時代のイタリアの作曲家の楽譜を写譜することで、独学で作曲を学んだ時期がありました。
そうした背景から、マリピエロの作品には全音階や対位法が用いられています。
「秋の前奏曲」は4曲から成り、軽やかでどこか影のある響きが美しい作品です。


またイタリア新古典主義音楽の作曲家として、マリピエロと同じかそれ以上に重要人物とされているのが、A.カゼッラ(1883-1947)です。
ピアノ曲より管弦楽曲の知名度が高いですが、「ソナチネ」「トッカータ」などのピアノ曲を残しています。


V.リエーティ作曲 ピアノソナタ
https://youtu.be/u8iWasEv6e0
リエーティ(1898-1994、リエティとも表記されます)は、ユダヤ系イタリア移民の3世としてエジプトのアレクサンドリアで生まれ、イタリアで過ごした後アメリカに帰化しているので、「イタリアの作曲家」として紹介するのが適切か迷いましたが…
リエーティの作風も新古典主義に属するものですが、マリピエロの作品と比べるとメロディックでキャッチーなものだと感じます。
「ピアノソナタ」は3楽章から成り、軽快で気品溢れる1・3楽章と、対位法的な手法で書かれた不思議な響きの2楽章の対比が面白い作品です。
リエーティはほかにも、二台ピアノのための「束の間のワルツ(Valse Fugitive)」や、「チェンバロとオーケストラのための協奏曲」など魅力的な作品を残しています。
・束の間のワルツ
https://youtu.be/KRzQB9BeQOs
・チェンバロとオーケストラのための協奏曲
https://youtu.be/311pmRmp2QU


ここからは一気に時代が飛び、1960年代以降に生まれた存命の作曲家たちを紹介します。

R.ベッラフロンテ作曲 ピアノソナタ1番「不調和」
https://youtu.be/ouyWmqfx6XE (第1楽章)
https://youtu.be/oJjB1eYLkPE (第2楽章)
https://youtu.be/STDCUxrs688 (第3楽章)
ベッラフロンテ(1961-)は、現代イタリア人作曲家の中で最も注目されている人物の一人で、その作風は歯切れの良いリズムや、都会的で少し辛口な響きが特徴です。
ピアノ曲のほかには、ギターや室内楽などの作品も書いています。
「ピアノソナタ1番」は、様々なモチーフが交錯し緊張感溢れる1楽章、静寂を感じさせる美しい2楽章、リズミカルで爽快な3楽章からなり、それぞれの楽章の性格の違いが引き立っています。


A.コッラ作曲 夜想曲
https://youtu.be/7kE0Pz-OS98 (4番「月虹」)
https://youtu.be/lkDoQ8Rag1s (9番「ロープの吊り橋)
コッラ(1968-)の作品は楽曲によって作風がかなり異なり、特殊奏法が用いられた室内楽曲などもあります。
ピアノのための夜想曲は美しく聴きやすい作品が多く、ここでは筆者がお気に入りの2曲を紹介させてください。
4番「月虹」は、煌びやかなパッセージが幻想的で演奏効果の高い作品です。
9番「ロープの吊り橋」は、少ない音数で書かれたシンプルな作品に聴こえるものの、楽譜を見ると細かい指示や不規則なリズムが目立ち、それらが揺蕩うような独特の曲想を生み出しています。


G.カシオーリ作曲 3つの夜想曲
https://youtu.be/uK6JpxPHLLI
カシオーリ(1979-)は度々来日しているピアニストで、この曲は昨年のリサイタルで日本初演をした作品です。(まだ筆者はカシオーリの演奏を生で聴いたことがありませんが)
コッラに作曲を師事していた影響か、カシオーリの楽曲にはコッラに通じる、美しさやロマンチズムが感じられるのではないでしょうか。
ちなみに、上記のコッラの動画もカシオーリの演奏によるものです。

S.パパロッジィ作曲 考え(25-Ⅸ-2022)
https://youtu.be/j0TcBBJyDhA
パパロッジィ(1986-)はローマ出身の作曲家で、一時期作曲から離れて小説などを書いていたようですが、2018年に作曲を再開し、自身の運営するYouTubeチャンネル(https://youtube.com/@SPscorevideos)に楽曲を上げています。
この曲は非常に少ない音数で書かれた、静寂を表したような小品です。


ここまでで紹介したのは筆者の個人的好みから、比較的耳馴染みの良い作品が多いですが、さらに尖った作品を好む方はこちらも聴いてみて下さい。
(かなり耳に痛い響きなので、失礼ながら筆者はちゃんと聴けませんが。)
F.エヴァンジェリスティ作曲 音の反射
https://youtu.be/-5EyO-mWXnM
S.シャリーノ作曲 ピアノソナタ2番
https://youtu.be/IQdFm6QzmKE


来月の記事もお楽しみに。


参考文献
・ピティナピアノ曲事典
https://enc.piano.or.jp/ (2023年6月27日閲覧)
・ Encyclopedia Britannica "Gian Francesco Malipiero"
https://www.britannica.com/biography/Gian-Francesco-Malipiero (2023年6月25日閲覧)
・https://www.ecspublishing.com/amp/composers/r/vittorio-rieti.html (2023年6月27日閲覧)
・ベッラフロンテ 公式ウェブサイト
https://raffaelebellafronte.it/ (2023年6月27日閲覧)
・Ricordi "Alberto Colla"
https://www.ricordi.com/en-US/Composers/C/Colla-Alberto.aspx (2023年6月28日閲覧)
・「東京で一夜のみのリサイタルが実現!12年振り天賦の才との邂逅。ジャンルカ・カシオーリ ピアノ・リサイタル」
https://www.japanarts.co.jp/concert/p17/ (2023年6月28日閲覧)
・Ulysses Network "Stefano Paparozzi"
https://ulysses-network.eu/profiles/individual/27755/ (2023年6月28日閲覧)

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