東南アジアのピアノ曲名曲紹介

皆さんこんにちは。今月は東南アジアのピアノ曲を紹介していきます。
まだまだ暑い日が続くので、せっかくなら熱帯の風情を感じられるものをと思いこのテーマにしました。
皆様のお気に入りの曲が見つかれば嬉しいです。


・L.カシラグ(Lucrecia Kasilag)作曲 ピアノソナタ ト短調
https://youtu.be/uJq9veecpyc
ピナツボ火山のエレジー
https://youtu.be/uxWlF7LQUlA
カシラグ(1917-2008)はフィリピンの女性作曲家で、アメリカで作曲を学んだ後フィリピンに戻り、自国の音楽文化の発展に寄与した人物です。
カシラグはフィリピンを題材にした作品や、フィリピンの民族音楽からの影響を感じさせる作品を残しており、またフィリピンの踊りの研究も行いました。
「ピアノソナタ ト短調」は単一楽章構成で、踊りのようなリズムと、聴いていて不思議と懐かしさを覚えるようなメロディが特徴です。
「ピナツボ火山のエレジー」は、1991年に起きた大噴火に影響を受け作曲されました。
曲の冒頭と中盤に出てくる激しいトレモロからは、噴火の恐ろしさなどが伝わってくるのではないでしょうか。


・Trisutji Kamal作曲 海の歌
https://youtu.be/bJIZMYiBkCw?si=lFjIQFMSBSQC652C (動画の前置きが長くて、1:00過ぎから演奏が始まります。)
蝶(二台ピアノのための作品)
https://youtu.be/xwEraYN7J3I?si=Ij-nA3znOpWYc-yp
Trisutji Kamal(1936-2021)はインドネシアの女性作曲家で、アムステルダム、パリ、ローマで作曲を学びました。
今回紹介する作曲家の中で唯一ヨーロッパで作曲を学んだためか、ドビュッシーなどの影響が感じられる繊細で美しい響きの作品を残しています。
「海の歌」はオリエンタルな雰囲気に溢れた印象派風の作品で、Kamalの作品の中でも人気なのか、彼女の他の楽曲と比べて多くの動画がYouTubeにアップされています。
また「蝶」は、ガムラン音楽をピアノで再現したような作品で、ガムランの涼しげな音色や、細かい音型の繰り返し・絡み合いなどがピアノにマッチした、ユニークな作品と言えるでしょう。


・C.ウン(Chinary Ung)作曲 七つの鏡
https://youtu.be/64Q52olJFaM
ウン(1942-)はカンボジアの作曲家で、アメリカで作曲を学んだ後現在もアメリカで活動しています。
ウンの作風について、祖国の民族音楽の要素と西洋音楽を融合した…といったありきたりな評価も見られますが、先述した二人の作曲家と比べると前衛的な要素が強く、ナショナリスティックな部分は露骨には感じられないというのが筆者の印象です。
「七つの鏡」は、「空の中の窓」「点在する小道」「…吠え声、心のライオン」「…笑い声が地球を駆け巡る」「…魚と月の間の空間」「刺青する時空」「飛ぶ鏡」という奇妙なタイトルの7曲から成り、トレモロやなどが駆使された演奏効果の高い作品です。


・N.プランチャルーン(Narong Prangcharoen)作曲 3つの心
https://youtu.be/mbe4u7p8HmA
プランチャルーン(1973-)はタイの作曲家で、タイとアメリカで作曲を学び両国でいくつもの賞を獲得しています。
プランチャルーンの作品は「チャクラ」など、東洋のものを題材にしている場合も多く、神秘的な要素もありながらエネルギッシュで聴く者の心を掴むものがあります。
「3つの心」は、「激しく」「不在の」「躊躇って」の3曲から成り、華やかで聴き映えのする1曲目は特に演奏頻度が高いです。
またピアノ曲以外にも、オーケストラのための「現象」(https://youtu.be/3PdFaUkQP0g?si=owYhrzHhRoi4N073)、ソプラノサックスと吹奏楽のための「マントラ」(https://youtu.be/_cIkJ-q6vN4?si=Y8lLA06dyIA-k7HD)などもおすすめです。


来月の記事もお楽しみに。

参考文献
・Lucrecia r. Kasilag from “Filipinas heritage library” https://www.filipinaslibrary.org.ph/himig/featured-artist-lucrecia-r-kasilag/ 2023年8月26日閲覧。
・Trisutji Kamal from "A Seat at the Piano"  https://www.aseatatthepiano.com/composers/Trisutji-Kamal 2023年8月26日閲覧。
・ Chinary Ung official website
http://chinaryung.com/contact.html 2023年8月26日閲覧。
・「コンポージアム2004 2004年度武満徹作曲賞本選演奏会」https://www.operacity.jp/concert/compo/2004/040530.php 2023年8月23日閲覧。
・Dr. Narong Prangcharoen from “Mahidol Music” https://www.music.mahidol.ac.th/people/dr-narong-prangcharoen-3/ 2023年8月30日閲覧。

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