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初投稿46【視点の違い】

先週の夜勤。ご家族の夜間付き添いの件についての続き。

その患者さんはそれから2日後の夜に息を引き取った。ご家族に見守られて。

僕の夜勤の日にご家族が付き添い始めて3日目のことだった。

僕の夜勤の翌日は、
容態が安定していたのもあり、夕方で一度ご家族には帰宅していただいたとの事だった。

そのまた翌日の夜勤帯にご家族に見守られて息を引き取った。

その翌日に僕は日勤で出勤した。
夜勤明け(患者さんが息を引き取った日の夜勤)の先輩に「お疲れ様でした」と挨拶したが、とても怒っていた。

閉鎖病棟の精神科で、しかも男性患者しかいない病棟で家族を招き入れて看取るというのは、
あり得ない。という事だった。

と言うのも、そもそもこの病院に夜間にご家族が患者さんに付き添える環境が整っていない事。休憩場所や売店もないし専用のお手洗いもない。

認知症の方や精神症状の不安定な他の患者さんが、病室に勝手に入ってくる事もあるリスクも伴う事など。

それを聞いて、最初は、
冷たいなぁと感じたけれども、確かにそうだ。

その前日の夜勤者も、とても怒ってたそうだ。
院長が了承したとは言え、この病院では前例のない事だった。
でも、マニュアルやルールがきちんと明らかにされていなかったので、困惑したようだ。

ここはナースコールがない上に、心電図モニターもない。
亡くなりそうな患者さんを見守っているご家族も不安なので、患者さんの一つ一つの変化について逐一、「今、◯◯な状態なんですが、大丈夫でしょうか?」と夜勤中に呼び止められる事も度々あった。

僕たちからしたら、経験則的に、それは大して問題のない事であったとしても、
ご家族にとっては大切な家族で、リアルタイムで人が亡くなってゆくのを見たことがない事がほとんど。

通常の働き方とは異なる気配りやご家族の安全確保もしつつ、患者さんの観察もしなければならないとなると、他の患者さんへの注意も削がれる可能性がある。
という判断だったのだろう。
その日は、容態も安定していたので夕方に帰宅をお願いしたとのことだった。

結果的に、ご家族の希望に沿った形で、患者さんはご家族に見守れた中で息を引き取り、
ご家族はきちんと最期を看取ることができた。

その後、別件で看護部長と師長と面談があり、
この件について伺った。

やはり、この病院では前例のない事だった。
それまでは、見取りができる病院やホスピスへ事前に転院したりしていたとのこと。

でも、今回は、
急変時は、もともと当院でできる限りの治療を行い救急搬送は希望しない、
という、ご家族との同意確認書類に記載があった。

だがそれは、昨年時点のもので、今回はご家族がやはり搬送もしたいかも...と気持ちが揺れ動いていた。
そこらへんのやりとりの中で、今回の流れとなった。

なので、今後は入院時に、
今回のような状況も鑑みて、十分な説明と確認を得る必要があるという話になった。

僕としては、患者さんの状況の変化に伴って逐一、ご家族に連絡や今後の対応について確認をとるべきだったと思う。

それが一手も二手も遅かったからだ。
急変時の対応に関する同意確認も、去年のもので更新されていなかった。

患者の高齢化や感染症の蔓延、認知症の増加も含めて、一、二年で急激に患者さんのADLや病状も変わっている。

患者さんの最期だけでなく、社会復帰やその人にあった環境を選択するために、
適切なタイミングでご家族や他の施設への転院や転居などのアプローチをかけるべきだと思う。

そのタイミングや明確なうちの病院のルール、方針などが曖昧のまま、対応のスピードが遅かったり連携が不十分であったりしたからこそ、
このような事になっていると思う。

そして、言葉では対処しなければというものの、実際に動き出すかというと、組織としては腰が重たいままだ。

ここの病院の課題がまた一つ見つかった。

僕の職場もある意味、慢性的で重篤な症状にかかっている。

看取りを終えたご家族には大変感謝された。
それはそれで良かったのかもしれない。

他の夜勤に入った先輩方の意見も冷静になってみれば、確かにそんな考えや判断も必要だと思う。

僕たちが戸惑わずに安心して働けて、
患者さんや、そのご家族も安心できる環境づくりをさっさと作り上げなければならない。

そう思っていても、直接やれないのがもどかしい。

と考える一方で。

個人的には、

最期くらいウダウダ言わずに会わせてやれよ。

そう思う。

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