見出し画像

今だからこそ話せる、デビュー作『絶対通報システム』のこと

2023年の3月25日『絶対通報システム~いじめ復讐ゲームのはじまり~』という作品で商業デビューをしました。

この作品は小説サイトの野いちごで開催されていた「第2回野いちごジュニア文庫大賞」でホラー部門優秀賞を受賞した作品です。
ジュニア向けのコンテストに応募した作品でありながら、ケータイ小説文庫(ジュニアよりは少し年齢層が上がるレーベル)での出版となった少し変わった作品です。
ちょうど1年前は言えなかった話も今だからこそ話せると思い、今日はこの記事を書くことにします。はっきり言って、私はかなり運に恵まれていると思いますし、聞いていてあまり気持ちのよくない話も出てくるかもしれません。なので、ここから先の閲覧は自己責任でお願いいたします。


一番自信のない作品でデビューをした

正直、受賞するとはまったく思っていませんでした。
ましてや書籍化までたどり着けるとは微塵も考えていませんでした。
ある程度蜂賀を知っている方ならご存じだと思いますが、蜂賀は3年間で130を超える公募をしている公募中毒者です。出すときはそのコンテストのことを調べ、小説の賞であればそのレーベルの本を読み、受賞作品のあらすじなどを順に確認していく……そういう熱心なプレイヤーです。ある程度焦点を合わすことができるし、その公募に合わせてのチューニングも少しはできます。執筆歴は浅いですが、創作を楽しみながら努力できるポテンシャルがあります。

しかし、それは今だからこそ言えることなのです。この受賞作品に関しては自信がありませんでした。公に書くと気分を害す人も多いと思うので言ってなかったのですが……この『絶対通報システム』は私が長編小説を書いた2つ目の作品なんです。1作目はeスポーツを題材にした恋愛ものを書いていて、それが第6回野いちご大賞で「特に良かった2作品」として講評をいただいてたわけです。ショートショートばかり書いていた私でしたし、不慣れな感覚のまま『絶対通報システム』を書いていました。

そして案の定、物語は途中で破綻していました。

プロットで決めていた最後近くまで執筆をしたのに、その時点で応募の規定文字数(70,000~85,000字)に全然辿り着いていない。ここまで来て引き返すこともできず、その先はプロット無しでひたすら継ぎ足しました。

そして書きながら思ったのです。「なんてチグハグで面白くない作品なんだろう」と。

最初にプロットで決めていた部分は丁寧に書けているけど、焦ってその場のノリで書いたところは矛盾もあるし、展開としても弱かったです。それに気づきながらも引き下がったらもったいないのでは……という気持ちでただ書き続けていました。出来の悪い即興LIVEです。

そんな気持ちを抱えたままギリギリの7万字に辿り着いて、無理やり完結させました。ラストも尻切れ蜻蛉のようでした。序盤だけが面白く、後半になればなるほどつまらなかったです。
最後の最後で「出して落ちるなら出さない方がマシか」という気持ちまで出てきて、応募もやめようかと思いました。どんな作品も応募すれば0.1%でも可能性は生まれる。そう豪語している私がその可能性を信じられませんでした。

だけど優柔不断で結局やめる決断ができず、自分の手元に占いのカードがあったのでそれで決めることにしました。

そしたら「絶対に出せ!」という結果が出ました。
(このときの占いのカードには本当に感謝してます……)
(あと、どんな作品も応募すれば0.1%でも可能性が生まれることの証明になった)

とにかく応募したものの自信がなく、Twitterでも作品を公開したことはもちろん、野いちごジュニア文庫大賞に応募したことも誰にも話していませんでした。

早く忘れよう……これも経験だよ。と、早い段階から反省をして次の長編の作成に取り掛かっていました。それなのに、まさかの受賞。晴天の霹靂でした。

審査員には、バレている

後日、コンテストの結果発表があり、もちろん私の作品の講評も掲載されました。講評の一部を引用します。

ヒロインがシステムに飲み込まれていく過程が自然で、ホラー作品として面白かったです。復讐の展開はスカッと感もあり、人間ドラマが素晴らしかったのですが、やや大人向けの印象を受けました。子供にもわかりやすいゾクゾク感があるとさらに良いでしょう。また、前半の物語の展開がとても素晴らしい一方で、ラストの展開がすっきりしない印象でした。ラストまでしっかりと描いてあげることで、さらに読後感のいい作品になるかと思います。

第2回野いちごジュニア文庫大賞

はい、自覚していた部分がすべて書かれています。審査が適当ではないことがよくわかりますね。(当たり前だ)
そのマイナス部分を補えたのは物語の序盤、丁寧に崩れていく人間関係を描けていた部分と「通報システム」というアイディア。そこを評価してもらえたのだと考えています。

ただ、今までのコンテストを見ると優秀賞で書籍化が叶わなかった作品も少なくはなく、私の作品も書籍化には至らないだろう、とあまり期待していませんでした。その考えもまたはずれ、書籍化の連絡が来ました。

そうして、今までで一番自信のない応募作品でデビューすることになったのです。

もちろんこのままで商業作品にできるはずはありません。
書籍化の打ち合わせで自分の気持ちを正直に話しましたし、編集さんの意見も聞きながら大幅に物語を改稿しました。それはもう大幅に大幅に大幅にです。
なので、書籍化が発表された時点でweb版『絶対通報システム』は序盤以外非公開にしたほどです。同じ作品と思われたくないので。野いちごの受賞作品は書籍化後も原作がweb公開されていることがほとんどです。だけど、さすがにあまりにもクオリティが違う作品を同じタイトルで公開するのは嫌だったので……。

そして、一番自信がなかった作品とひたすら向き合った結果、無事に刊行することができました。

受賞を確信できるような自分の全てを注ぎ込んだ作品。
自信に満ち溢れた会心の一作。

そのどちらでもない作品でデビューが決まって
正直めちゃくちゃ辛くなったこともありました。
だけど、せっかくもらったチャンスです。
この作品への気持ちがそのような気持ちで応募した人たちと同じレベル、いやそれ以上になるまで頑張り続けようと思いました。じゃないと、同じコンテストに応募してた人に顔向けできないし、一生そのことがついてまわると思いました。

今では自分は『絶対通報システム』を刊行できて本当に良かったと思っています。それに、この作品が好きです。デビューして1年近く経って読み返すと、やっぱり拙く感じる部分も多いけれど……それでもそのときの自分が最大限の努力をしたこと、色々な人に支えてもらったことを覚えているからです。嫌な性格の人間の書き方もよくできてると思います。笑

なので、もし私と同じように自信がない作品ができてしまって応募しようか迷っている……という方がいたら「大丈夫!とりあえず出してみてもいいんじゃない!?」と言いたいです。もちろん丁寧に作品をやり直すのも良いですが、やっぱり出すことで可能性が生まれるので。

自信がない作品も、向き合い続ければ愛しくなってくることがあると思います。そして自分が納得できたら、その作品をすごく好きになれます。
終わりよければすべてよし、です。

さいごに

この気持ちを話すのは初めてなので、投稿するのは緊張します。
もしかしたら消すかもしれませんが、せっかくここまで書いたのでもったいないので公開します。(またこれか)

そんな私のデビュー作です、もしよろしければ手にとってみてください。
拙いながらも、いい味が出ていますよ。

この記事を読んでいただき、ありがとうございました。
蜂賀三月でした。

#私の作品紹介

この記事が参加している募集

私の作品紹介

いただいたサポートは運営メディア「Web Novel Labo」の運営費用として使用させていただきます。noteでの活動含め、クリエイターのためになる行動を継続していきたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いいたします。