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斬られて候18

福富が切り殺された子分に一瞥をくれ、青紫色した唇を震わせ言う。

「むーう、この狼藉侍めが、貴様が今切り殺した男にも家庭があるのだぞ。明日には娘の七五三に出向くのだと笑っていたわ。許せん、覚悟せい」

福富は悪代官だというのに、情のある言葉を吐いた。
そんな台詞あったかと、越野は頭をひねったが、やはりそんな台詞はなかった。

骨の太そうな手で刀を抜き、垂れた目蓋から上目使いに侍を睨む。

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