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斬られて候3

是枝の仰向けで倒れた体前面の着物に、血糊が本物の血液よりも鮮やかな赤に染まっている。倒れた胸は上下しない。
長年斬られ役をしていると、呼吸をしながら胸が上下しない方法を心得ていた。

「お疲れ様でした」
 今年で五十半ばを迎える越野が、薄目を開け極力唇を動かさぬようにして、是枝を労った。

越野は四十目前にしたあたりから、腕が上がりにくくなり、上段に構えるのに苦労している。

徐々に腕が上がらなくなっていくと漠然と考えていたが、腕を上げる際に窮屈さと鋭利な痛みが始まるとあっという間に腕は上がらなくなってしまった。

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