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文化を「10年単位」で考え続ける。

昨年、東京アートポイント計画の10年の歩みをまとめた書籍『これからの文化を「10年単位」で語るために ― 東京アートポイント計画 2009-2018 ―』を出版しました。「文化事業の中間支援とは?」「プログラムオフィサーの職域とは?」。もとからレールがあったわけではなく、開拓してきたことだからこそ時間をかけて振り返りをし、棚卸しをし、見つめ直す作業でした。

東京アートポイント計画からはじまった都内各地のプロジェクトも「10年単位」で語る時期がきています。10年前の立ち上げ期から知る関係者もそうそういないので当時の資料やメール、写真などを電子データの大海原に捜索に出かけては諸々の再発見と「大変だったな・・・」の複雑な気持ちを得てじんわりしています。

10年前の今日

ふと思い立って10年前の今日、つまり2010年6月5日のことを調べてみると・・・。

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船に乗って隅田川から変わりゆく東京の風景を眺めていました。

「川俣正・東京インプログレスー隅田川からの眺め」(2010-2013)の初回の大規模リサーチの日。アーティスト、プロジェクトメンバーや学生スタッフなど総勢20名ほどで1日かけて隅田川沿いを歩き、クルーズし、東京の「いま」を体感する時間。アーティスト川俣正はのちに全長12mの「汐入タワー」となる30cmほどの模型を持って、東京を眺める物見台となるにふさわしい風景に当て込んでいく、という1日。

アートプロジェクトはリサーチを欠いてははじまりません。

・なぜやるのか、を体に入れる。
・実際のところどうなのか、を確認する。
・プロジェクトを動かすヒントになる情報をみつける。
・場に慣れる。

アーティストでも地域の人でも行政の人でも、信頼関係を築くには「実感のこもった言葉」で対話する必要があります。体感として「知ってる」ということ。10年前の隅田川リサーチの写真に再会したことでプログラムオフィサーの職域として「リサーチ」の重要性にあらためて気づかされました。

そして2020年の6月。「東京」に関わる仕事をしていて東京を歩いていない100日が過ぎていきます。身体的インプットの欠落に危機を感じつつも、東京はインプログレス。変化する様をどう得たものか。

インターネット上の情報に頼りすぎず、ときにはまちを歩き、店主との何気ない会話や、うつろいゆく景色の端々にまちの雰囲気を感じることも大事だ。いつもとは違う道を歩いてみると、そこに小さな気づきがあるかもしれない。日常に関わるアートプロジェクトのヒントは日常にある。日々、目を光らせて、プロジェクトの種をみつけよう。

東京アートポイント計画が、 アートプロジェクトを運営する「事務局」と話すときのことば。の本 <増補版>』(2017)のことば、「インプット」の結び文と現状の距離をはかりつつ、2020年の目の光らせ方を考えています。