開いた時


大好きな姉がいる。

基本的に私達は仲が良すぎて、常に話している。

話す内容はありとあらゆる事、天気が悪くて頭が痛いとか、今日はうどんが食べたいとか、昨日見た夢とか、リアルな事から抽象的すぎることまで何もかも全部話す。


物理的に距離が離れていても、遠くに感じる事はない、私の心の直ぐ側に姉専用イスが置いてあっていつもそこに座って居てくれている感じがする。


でも、何年に1度だろう「あ、今開いてる。」と感じるときがある、しかも喧嘩中とかでも、物理的に遠くにいる時でもなく、すぐ目の前に居てそれを感じるのだ。


そういう時の彼女は限りなく彼女の本質に近くなっていて、決して本人以外には近寄れない開かれた場所に立っているのだと思う。


彼女の空気がやけに透明で、言葉には表せない彼女らしさに包まれていて、「あぁ、姉の中で何かが始まっていてそっちを向いているんだわ」と思うのだ。


私が本当に小さかった時は姉によくそれを強く感じていたと思う。姉を見上げては、透明の空気に包まれた彼女を自分とは全く違う目的を持って人生を歩んでる人間だと幼い目をくりくりさせて感動していた。


そういう時の彼女との距離は地球上での距離の感覚ではなく何か少し別の次元に行っているかのような距離の感じ方がする。


「あぁ、開かれている。」

そう思う度に、彼女は限りなく彼女で、いくら話していようが決して知ることは出来ない部分のある全く身体も魂も違う人なんだと認識して、その遠さ、彼女以外の何者でもなさ、に「良いなぁ」と思うのです。



でもそのうちに彼女はまた、開かれた場所で見てきたものや経験を、私の心の直ぐ側のイスに座って、面白おかしくおしゃべりするので、日常に戻るとあの姉の彼女らしさを私は忘れてしまうのです。













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