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フィンランドの小学校びっくりカルチャーショック Vol. 2

こんにちは,あおぞらです🌱

このシリーズではフィンランドの公立小学校でのインターンや複数の学校見学を通して,感じた日本の教育との価値観の違いを紹介していきたいと思います。

第2弾は学校給食について。

フィンランドの義務教育課程では,家庭環境に関係なく全員が,毎日給食を無料で食べることができます。これは学校が福祉の機能も果たしているとの考えからで,日本の学校給食の理念とも通ずることがあると思います。

学校の給食はビュッフェ形式で,生徒が各自で好きな量をとって食べることができます。生野菜のサラダと主菜,ご飯の代わりのポテト,パン,が一般的なフィンランドの給食のメニューです。

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日によってポテトの代わりにパスタが出たり,ドイツの日,フランスの日,などというように他の国の料理が出されることもありました。僕が子供のときも,このような地域や外国の料理のひがあったように思います。

フィンランドでは,日本と同じように給食と一緒に牛乳も飲みます。また,また,学校給食はヴィーガンやグルテンフリー,その他の食の嗜好にも配慮しています。個人の選択が尊重されているフィンランドらしい給食のあり方ですね。

しかし,ここで疑問が。



よくよく生徒の食事を見てみると,ほんのちょっっっとの野菜と,たっっっくさんのパンをとっている生徒が散見されます。先生が野菜をもっと食べるように指導している様子も見られません。

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学校の給食の一つの目的は栄養バランスの整った食事をみんなに提供すること,であるはずなのに(先生も栄養バランスの整った学校給食はフィンランドのいいところだと言っていたのに),これでは生徒の栄養バランスが心配です。

ここで,先生に質問してみると,驚きの回答が。



私「先生,栄養バランスがとても偏った食事をしている生徒がたくさんいましたが,もっと野菜を食べるように指導しないんですか?日本では,みんなが栄養バランスの整った食事を取れるようにみんなに同じ量の給食を配膳します。」

先生「みんな同じ量を食べるの??信じられない!!(原文: That’s horrible! と言われてしまいました...)生徒は一人一人違うんだよ。たくさん食べる子もいるし,少ししか必要ない子もいる。だから一人一人が自分に必要な量を自分で選んで食べるの。」

私「でも,栄養バランスは。。。」

先生「確かに,栄養バランスが偏った食事をしている子はいる。でも,栄養バランスに関する教育は事前にしているの。みんなに平等に伝えているのだから,それを理解して,自分でどんな決断をするかどうかはその子の自由だよ。

私「ああ,,確かにそういう考え方もありますね。。。」

*この回答は数人の先生に聞いたもので,フィンランド教育全体を代表する意見ではありません。


日本の学校給食は素晴らしい!と思っていたので,That's horribleと言われた時は少しショックでした...

でも,この話を聞いた時に,「平等」に関する価値観が日本とフィンランドでは根本的に違うことに気づきました。

(日本は〜,フィンランドは〜みたいな過度な一般化はあまり好きではありませんが...)

日本では,個人の違いに関わらず,表面的な結果の平等が比較的重要視される傾向にあるように思われます。給食は同じ量,授業はみんな同じ教室で,などなど。これは一人一人みんな違うという価値観があまり根付いていないからかもしれません。

しかし,フィンランドでは平等な機会を全ての子供に提供することを大切にした上で,個人の自由と責任がとても大切にされています。栄養バランスの良い給食を食べる機会はみんなに等しく与えられていますが,それを選び取るかどうかは個人の判断次第です。先生は機会(と情報)を与える以上の介入はしません。


このような「平等と公正」に関するフィンランドと日本の価値観の違いは学校教育の至る所で散見することができます。


一見,筋が通っているように見えますが,では日本の給食もこのような形式に変更するべきでしょうか?

盲目的にフィンランドの教育を真似しようとするのではなく,一度立ち止まってぜひ考えてもらいたいです。


実際に,フィンランドの小学5年生のあるクラスを見学したときに,栄養に関する調べ学習を行なっていました。その授業では,自分の1日または1週間の食事を記録し,国の栄養バランスに関する資料を照らし合わせながら,理想の食事を考えるというものでした。さまざまな食の嗜好を持った生徒がどのように必要な栄養を摂取したら良いかを共に考えている様子はとても有意義な学習のように見えました。その結果,どれくらいの生徒が野菜を食べることを意識するようになるのかはわかりませんが。。。

この生徒が自分で自分の食べる量を選べる,というシステムは幼稚園の給食でも見られます。幼稚園生の頃から自己決定が尊重されているんですね。

幼稚園生に「栄養バランスのために野菜は食べたほうがいい」といくら説明したところで,どれほどの園児が理性的に嫌いな野菜を食べる,という行動が取れるでしょうか?大人になってもファストフードや甘いお菓子は食べすぎてしましますよね... 正しい論理的思考力と理性が発達するまでは日本のように,ある程度同じものをみんなに与える,というほうが栄養バランスを考えたときにはいいような気もします。しかし,食事は学校の中だけで取るものでもありません。家庭での食事も含めて日々の栄養バランスは決まります。そのため”栄養バランスの整った食事”よりも”栄養バランスについての知識”を与えた方がいいのかもしれません(日本で栄養に関する授業がないと言っているわけではありません)。

しかし,学校で,個人の意見が言えるようになる,自分が尊重されている感覚を育むという目的が大切にされていた場合,給食もその実戦の一部になり得ます。その場合は,栄養バランスよりも,指導の一貫性を考えて多少栄養バランスが悪くなってしまったとしても,個人の決定を尊重し,栄養に関する教育は他の部分で補うのがいいのかもしれません。

この辺りは学校や先生の哲学によると思います。フィンランドではどんな生徒に育って欲しいのか(学習到達度ではなく,ソフトなスキルの面),という生徒像が国の学習指導要領で,明確に決められておりどの学校もそのための教育実践を考えて作っている印象を受けました。

そして,この話は学校がケアするべき範囲がどこまで及ぶか,という話にも通じると思います。”学校がやるべきこと”がどんどん増えていく中,現場の先生方は文字通り身を削って働いてくださっています(現場の先生方は本当に尊敬です...)。

しかし,その実践は何が目的なのか,ということを今一度考えて取捨選択をすることは働き方改革の面から考えても,とても大切だと思います(それをゆっくり考えるゆとりが学校現場にないのは本末転倒感もありますが。。。)。


今回は学校給食にまつわるフィンランドと日本の教育観の違いについて,でした。いかがだったでしょうか。どちらも理にかなっている部分もあるし,そうではなさそうな部分もありますね。またそれは自分の文化や主義によっても違うのかもしれません。ぜひフィンランドの先生の気持ちになって考えてみてください。


フィンランド留学生活の様子は主にTwitterで投稿しているので,もし良ければ覗いてみてください。

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